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第7回

事業計画書で経営改善の意思を示す

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
前回、金融庁森長官へのインタビュー記事から、融資を受けたい中小企業が何をすべきかを考えました。銀行へのメッセージは裏読みすると中小企業へのアドバイスとして受け取ることができるからです。銀行への「リスクをとるように」というメッセージは、中小企業には「金融機関にとって受け入れられるリスクであることを伝えるように」というアドバイスとして受け取ることもできそうです。

これはもちろん、前々回までにご説明した「金融と経営支援の一体的な推進 」(中小企業政策審議会企業力強化部会2011年7月)が掲げれられた方向性にも一致しています。銀行に対して金融支援(融資)と経営支援を一体的に提供するようにとのメッセージは、中小企業の側もそれを受ける姿勢を示すようにとのアドバイスと受け取ることができます。


事業計画書で経営改善の意思を示す

では、金融支援を受けようとする(借入しようとする)場合に、必要とあらば経営支援も同時に受ける姿勢であることは、どのように示すことができるのでしょうか?事業計画書などの書面で明らかにすることが想定されているようです。

「しかし、金融機関はきちんと事業計画書を読んでくれるのだろうか?今までの経験からすると、あまり期待できないと思うのだが。」そう仰る社長さんがいても、不思議ではありません。確かに、金融機関の多くにとって中小企業の事業計画書を受け取り、それをもとに融資判断をするということは、今まではあまりなかったと思います。金融機関も「金融と経営支援の一体的な推進 」について発展途上にあるのです。

では、どうすれば良いのか?「相手にとって、分かりやすい事業計画書を書く」というアプローチがあります。「そうは言ったって、今度はこちらの方が、どんな事業計画書を書けば良いのか分からないよ。」そうですね。中小企業にとっても金融機関にとっても「都合の良い」事業計画書というもの、あれば良いのですが、一見するとそれは難しいように思われます。


補助金で求められる事業計画書を参考にする

その中で、最近、参考にしているのは、ものづくり補助金などの補助金事業で求めらている事業計画書です。経済産業省(中小企業庁)が募集する補助金について、最近では「競争型補助金」という呼び方があるようです。対照的なのが「要件型補助金」で、厚生労働省管轄の助成金の多くがこれに該当します。要件型補助金で作成しなければならない書類では「私は○○をしたい。○○は補助の対象のはずなので申請する」と主張することになります。

では、競争型補助金で求められている事業計画書はどうでしょう?ものづくり補助金の事業計画書のうち「(2)事業内容」「5.事業の具体的な内容」部分は、以下の流れで作成するよう促されています。
「その1 革新的な試作品開発・生産プロセスの改善の具体的な取組内容」
「その2 将来の展望(本事業の成果の事業化に向けて想定している内容及び期待される成果)」
この流れからすると、ものづくり補助金の事業計画書は、中小企業が「私は○○という事業を行って、◎◎を実現したいと考えている。これはとても魅力的であると共に、○○は補助の対象だと思われるので、支援を検討して欲しい」という呼びかけとして計画を立てるよう、促す構造になっていると感じられます。


事業計画書を書きながら、改善計画をブラッシュアップする


このようなアプローチで書かれている事業計画書なら、金融機関(金融機関担当者・決裁者)にとっても読みやすく、判断しやすいことでしょう。一方で、中小企業にとってもメリットがあると思われます。事業計画書を作成するプロセスで、自分が行おうとする事業がより魅力的なものになるよう、ブラッシュアップするようモチベートされるからです。自分の取組みを魅力的に見せることももちろんですが、実質的に魅力的なものになるよう、磨き上げていくのです。

それは例えば「赤字幅が縮小するだけでは魅力的ではないな。黒字化できる計画に練り直そう」と考え直すことができるかもしれません。「売上を伸ばすための広告宣伝活動については計画した。しかし『成果は出るのか?』と聞かれたらどう答えよう。確実に成果が出るとは言い切れないし。そうか、販路拡大策も盛り込むことができる。例えば有力なディーラーとタッグを組めたら、売上が伸びるとの期待も高まるだろう」と考えることもできます。どのような説明をしたら、呼びかけをしたら、金融機関が自分のプロジェクトの応援者になってくれるかを考えることにより、事業計画書を魅力的なものにすることができるのです。

このような事業計画書を作成することにより、中小企業は、自らのプランをブラッシュアップすると共に、金融機関に支援者となってもらえるよう、アピールできるのではないかと考えられます。

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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