「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第93回

日本公庫融資を通じた災害復旧支援

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 


天皇陛下が即位を国民に広く知らせるパレード(祝賀御列の儀)が11月10日に開催されました。もともと10月22日に「即位の礼」の開催と併せて行われる予定でしたが、一連の災害から被害にあった人々に慮って延期されたものです。当日は晴天にも恵まれ、改めて即位をお祝いすることができました。陛下のお気持ちを受けて、災害からの復旧にも力を入れていきたいですね。
先週、台風19号被害を中心に政府による被災企業への支援策として信用保証にスポットライトを当ててご説明しました。今回は日本政策金融公庫の災害復旧貸付についてご説明します。


令和元年台風第19号に伴う災害に関して被災中小企業・小規模事業者対策を行います

<災害救助法適用地域一覧>
岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県及び静岡県(被災地域)。なお、災害救助法の適用地域は市町村単位で指定されているので、ご自身の事業所の指定については以下でチェックして下さい。



災害復旧貸付の実施

台風19号による被害が甚大であることを受けて政府は、日本政策金融公庫による災害復旧貸付を決定しました。「災害救助法」に基づく特別貸付制度です。

災害復旧貸付は、公庫内の国民生活事業によって行われるものと、中小企業事業によって行われるものがあります。各々について、ご説明します。

国民生活事業による災害復旧貸付

日本公庫国民生活事業では、当該事業が行う融資制度の各々に3,000万円が上乗せされる形で災害復旧貸付が行われます(各融資制度について限度額まで利用していたとしても、枠が上乗せされるので追加で融資が受けられます)。台風19号による災害により直接に被害を受けた事業者の他、自らは直接の被害を受けていなくても、直接被害を受けた事業者との取引に起因する売上の減少や売掛金債権の固定化等の間接的な被害を受けたと認められた事業者が、この制度を利用することができます。

借り入れできる資金は、災害によって生じた損害を復旧するために必要な設備資金及び運転資金です。借入期間は10年以内で、そのうち元本の返済が必要ない据置期間を必要とする場合は2年以内となっています。

金利は一般貸付の上乗せの場合には基準利率、特別貸付等の上乗せの場合には当該融資制度に定められた利率です(災害貸付の場合1.36%)。なお、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県及び静岡県の「台風19号に関する激甚災害指定」を受けた区域内に事業所を有し、かつ事業所や主要な事業用資産等について全壊、半壊等の被害を受けた旨の「罹災証明書」等の発行を受けた方には、1,000万円まで、当初3年間は「貸付期間に応じた基準利率 - 0.9%」が適用されます(4年目以降基準利率)。

国民生活事業による災害復旧貸付を希望する中小企業の皆さんは、日本政策金融公庫店舗窓口にご相談ください。なお、直接被害や間接被害の状況については公庫の窓口でお聞きすることになっていますので、直接被害や間接被害に係る状況説明資料等をお持ちになって相談されることをお勧めします。

中小企業事業による災害復旧貸付

日本公庫中小企業事業では、災害復旧貸付として1億5,000万円を別枠として融資を受けることができます(これまで限度額まで利用していたとしても、この限度額について融資が受けられます)。融資の対象としては、台風19号による災害により直接に被害を受けた事業者です(間接被害を対象とする制度は設けられていません)。借り入れた資金は、災害によって生じた損害を復旧するために必要な設備資金及び運転資金です。

借入期間は15年以内で、そのうち元本の返済が必要ない据置期間を必要とする場合は2年以内となっています。金利は基準利率(1.11%)となっています。

日本政策金融公庫の災害復旧貸付の特徴は、制度の利用等が、行政が発行する「認定書」などによって形式的に決まるのではなく、窓口で相談することになっていることです(金利の軽減措置は「罹災証明書」等による)。形式的に決まらないとは、早めに相談して資料等を用いて事情を説明することで、迅速な対応が受けられる可能性があることを意味しています。災害復旧貸付の利用を考えている方は、ぜひ早めに窓口にご相談ください。



<本コラムの印刷版を用意しています>
本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。




なお、冒頭の写真は写真ACからmakoto.hさんのご提供によるものです。makoto.hさん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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