「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第250回

タフさを実現する「雰囲気」を作る

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



「コロナ感染症が第5類に分類されるようになって事業環境が元通りに戻った。我が社も以前の態勢・業務執行に立ち戻ったので安泰だ」という企業は、意外と少ないと感じられます。危機的状況等や、それをきっかけに変化した事業環境に加え、嗜好や行動パターン、あるいは層そのものも変わってしまったという顧客側の問題、メンバーも変わったし人手不足でもあるという企業側の問題などが相まり、社内のあらゆる場所で急速・大幅な変化が求められています。朝令暮改が頻発する企業も少なくないでしょう。


「朝令暮改」は今までネガティブなイメージがあり、避けるべきとの感覚があったように感じられますが、こと今の状況では朝令暮改を上手く乗り越えられる企業が生き残り、活性化できると考えられます。今回もこの問題を深堀して考えていきます。



変化のストレスをポジティブに変える鍵

避けられない朝令暮改を上手く乗り切っていく上で「しなやかさとタフさ」がキーワードになるとお話しました。現場でしなやかさを発揮するには、「会社を潰さず、社員を路頭に迷わせない。逆に会社を発展させ、社員が豊かで幸せな生活を送れるようにする」とのタフな信念(経営理念など)がポイントになります。しなやかさの発揮は現場にとって、「慣れないことに取り組むストレス」と「現状維持バイアスに反することに取り組むストレス」という2重のストレスをもたらしますが、経営理念などから「変化することが究極の目標や幸福の実現に繋がると期待できる」と確信できるので人々の視点や評価基準が変化し、変化への意識がネガティブなものからポジティブなものに変化する可能性があるのです。



経営理念やビジョン等があれば良いのか?

では、会社と社員のwin-winを目指す経営理念があれば、あるいはそれが実現されるビジョン等が生き生きと描かれていれば、変化に対応できる組織になれるのでしょうか?この点については皆さんも「紙上に記されているだけでは何の力もない」ことに気付いておられると思います。経営理念やビジョン等が現場で根付いていることが必要ですが、どのような状況になれば「経営理念やビジョン等が現場に根付いている。力を発揮している」と言えるのか、考えられることは少ないと感じています。



「雰囲気」の大切さ

これまで多くの企業を拝見している中、一つ気付いたことがあります。会社の業績は「雰囲気」で察知できるということです。皆さんも「業績の良い会社は挨拶の声が大きい」とか「店員の行動がキビキビしている」、「店内が清潔である」などの特徴があることに気が付いておられるでしょう。一方で、挨拶の声が大きくても行動にもたつきがある、店内には清潔とは言えない箇所がいくつもある、ということに気付くと、その会社の業績がパッとしないと聞くと「さもありなん」と感じます。声や行動、隅の埃など個々の現象を評価・集計していくというより、「雰囲気」をトータルで感じとっていくのです。


もう少し深掘りして考えてみましょう。ある店舗について常連になるか・ならないかを決める判断として「雰囲気」は大切だと思います。他の店舗でも買える品物を特定の店舗で買うのは、その店舗の品揃えや内装等以外にも、そこにいる人々の様子や自分への接し方、また整備や清掃状況等から醸し出される「雰囲気」で選びます。


雰囲気から「私が大事にされている」ことを感じるのも勿論ですが、「店員やマネジャー、経営者などが、この店舗を大切にしている。好きだと思っている」ことを感じることも、大きいでしょう。「関係者が店舗を大切に思っているからこそ、自分も大切にされていると感じる。店舗が大切にされていなかったら、自分を大切にしているとの店員の振る舞い等も薄っぺらいものに感じる」という感情が、見えないところで働いていると思われます。


以上のように考えると、朝令暮改にも強い会社にするためには経営理念やビジョン等が必須条件ですが、それが雰囲気にまで落とし込まれていないと機能しないことが分かるでしょう。「会社を潰さず、社員を路頭に迷わせない。逆に会社を発展させ、社員が豊かで幸せな生活を送れるようにする」が経営者の単なるお念仏ではなく、従業員全体が「経営者は本気でそう考えている。それで私たちは守られている。私たちもその環境の完成・持続のために尽力しなければ」という感情が共有されていることにより醸し出される雰囲気です。


「雰囲気とは、曖昧だな」という声があるかとも思いますが、居心地や安心感・やる気や負けない気持ち等の人の感情を左右するのが「雰囲気」です。経営理念やビションを雰囲気にまで落とし込むことについて是非、考えていきたいものです。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


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なお、冒頭の写真は 写真AC から acworks さんご提供によるものです。 acworks さん、どうもありがとうございました。





 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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