「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第94回

BCPで自衛する

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 


令和元年もラストスパートに入った感じです。皆さんにとって、今年はどんな年だったでしょうか?筆者は、夏から秋の台風災害がとても印象に残っています。ここ数年、「ゲリラ豪雨」による被害が大きくなっていた中、秋口に入った頃には「今年は、ゲリラ豪雨は少なかったようだ」とホッとしていました。しかしその後に襲った台風被害はそれを上回る、想像を遥かに超える被害をもたらしました。今も、その被害に苦しみ、復興に力を入れておられる方も多いでしょう。皆さまの健康と、一日も早く日常を取り戻されるようお祈りしています。

そのような中、企業・経営者を支える中小企業診断士として何に取り組むべきか?以前にもお伝えした通り、BCPをお勧めしたいと考えています。これまで検討して来なかった企業も、真剣に取り組むべきタイミングではないでしょうか。台風被害への支援策をまとめたシリーズの締め括りとして、今回はBCPについて考えてみます。


BCPとは

BCPとはBusiness Continuity Planの略語で、日本語では「事業継続計画」と称されています。文字通り、企業が自然災害や大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇しても、損害を最小限にとどめながら事業を継続できるよう、あるいは早期復旧を目指せるようよう、平時に行うべき活動や緊急時における事業継続・復旧に向けた方策・手段等を予め計画しておくことを意味しています。

緊急事態が発生した時にすぐに有効な手を打つことがきでないと、企業は、業績に大きな影響を受けることになります。特に中小企業は経営基盤が脆弱なので、存続の危機にまで追いやられることも少なくありません。そこまで行かなくても、一旦は事業を縮小しなければならなくなって大切な従業員を解雇しなければならない(縁が切れてしまう)などの状況に追い込まれる可能性もあります。このような事態を避けるために平常時からBCPを準備しておくのです。BCPは経営者の心の拠り所になるのみならず、従業員や取引先(金融機関を含む)にも大きな安心材料になり、高い評価につながります。


BCPの体系

BCPには唯一無二の決まりはありませんが「これくらいは盛り込んだ方が良いだろう」という提案が、中小企業庁のHPから入手できます。興味ある方は是非、ご覧になってください。


BCPへの取り組み順序

BCPは、以上のように、企業を守るために必要な要素が体系付けられたもので、これをしっかりと網羅した内容にしておくことで、いざという時に慌てずに手抜かりなく対処することができるようになります。

一方で、BCPへの取組の冒頭から体系を強く意識する必要はないのではないかとも考えています。全て網羅するBCP計画を策定するのは、そう簡単ではありませんから、かなりの期間(中小企業では数ヶ月も!)にわたって作業を進めることになります。この時、BCP計画の最初から作成していくと、途中で投げ出してしまう可能性があります。そうならないよう、企業にとって一番大切なポイントから作成するのが得策と思うのです。

ある企業は、日頃の資金繰りについて手順をまとめるところから始めました。入金口座と出金口座が違うので、引落や支払いのタイミングで入金口座から出金口座へお金を移しておかなければならないのです。入金口座も出金口座もそれぞれ複数口座があり、BtoBビジネスの企業なので動かすべき金額はかなりの額に及ぶので、作業は簡単ではありません。一方で、これを間違えると取引先の信用を失いかねないのです。

この作業について当社では、財務を担当する社長が行っていました。では、災害等で社長が動けなくなった時、あるいは社長が事故等に出会った時、この作業を誰が代わって行うのか?この会社では社長の弟が取締役を務めていましたから、当然のこととして、この取締役が行うことになっていました。「では『いざという時はよろしく』で済むように、手順や口座ごとの特性等について伝えてあるのですね」とお聞きすると、それは徹底していなかったそうです。このため、この作業から進めることにしました。「一番気になっていたところからBCP計画作成に着手したことで、いざという時でも安心できると共に、普段の作業を言語化したことで見直すことができ、手順を改善できた」との感想を頂きました。


BCP作成で関係者の気持ちを一つにする

BCPへの取組は、もちろん完成に大きな意義がありますが、それまでは作業に耐えるだけかというと、そうではないと感じています。BCP作成に向けて関係者(中小企業では多くの場合、経営陣だけでなく社員も)が力を合わせることで「厳しい状況でも、この船(会社)で頑張っていこう。船を大切にして航海を続けよう」という気持ちが芽生えてきます。実際、その効果を目指して、BCP策定の取り組みを始めるようお勧めしています。



<本コラムの印刷版を用意しています>
本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。




なお、冒頭の写真は写真ACから紺色らいおんさんのご提供によるものです。紺色らいおんさん、どうもありがとうございました。
 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

同じカテゴリのコラム

おすすめコンテンツ

商品・サービスのビジネスデータベース

bizDB

あなたのビジネスを「円滑にする・強化する・飛躍させる」商品・サービスが見つかるコンテンツ

新聞社が教える

プレスリリースの書き方

記者はどのような視点でプレスリリースに目を通し、新聞に掲載するまでに至るのでしょうか? 新聞社の目線で、プレスリリースの書き方をお教えします。

広報機能を強化しませんか?

広報(Public Relations)とは?

広報は、企業と社会の良好な関係を築くための継続的なコミュニケーション活動です。広報の役割や位置づけ、広報部門の設置から強化まで、幅広く解説します。