「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第9回

金融機関の特性に対応した行動を取る(日頃の行動編)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
ここまで、橋本卓典さんの『捨てられる銀行』でも語られている中小企業金融支援の変化についてご説明してきました。中小企業を支援する金融機関でなければ生き残れないということです。これは、中小企業の側にも変化を求めることになります。支援を受け入れる姿勢があり、それに対応する能力があることを示すことです。その第1歩として、適切な事業計画書を作成するようお勧めしているところです。

しかし、だからと言って、今までの判断基準が全くもって消え去るという訳ではありません。多分、逆です。今までの判断基準は概ね残りながらも、「経営改善に積極的な企業を支援する」という判断基準が加わるという感じでしょうか。金融機関は「お金を貸すことが商売」なので、それにマッチした特性をもっているからです。金融機関から資金調達しようとするなら、この側面についての配慮が不可欠です。これから数回、この点について検討してみます。


信頼を重視する

第1点は「信頼を重視する」という特性です。お金を貸すという行為は、究極には、相手に対する信頼感がベースになっているからです。

中小企業のみなさんも、ご自分の体験などから、信頼感には色々な要素が絡んでいることを、感じておられるでしょう。名の通った大企業であると、ひとまず信頼感を抱くでしょう。所有不動産が多いとすれば、信頼感が増すかもしれません。一方で、そういう企業でも支払いが滞りがちな企業もあります。こういう状況だと、いくら名の通った大企業でも信頼感は揺らぎますね。信頼感は、日頃の行動をベースに培われていくものと言えます。

同じような目で、金融機関は企業のことを見ています。中小企業の場合は特に、日頃の行動から信頼感が持てるかどうかが全てだとさえ、言えます。


延滞・不払いがない

このため、既に融資したお金の返済が無断で滞っていると、金融機関は追加で融資することはできません。これは他の金融機関による借入やクレジットカード、キャッシングなどでも同様です。金融機関は、借入やクレジットカード、キャッシングなどについて返済が延滞した先の情報を共有しているからです。

これから事業を起こそうという起業者だと、金融機関からの借入はないかもしれません。この場合、公共料金や税金の支払いなどがチェックされる場合があります。「お金の支払いについて期日管理ができる先である」という信頼感は、金融機関にとって最重要のポイントなのです。


資金使途を守る

信頼感は、もちろん、料金支払い以外にも及びます。既に融資したお金の資金使途が守られていないと、「この人は約束を守らないタイプの人かもしれない」という思いを植え付けてしまう可能性があります。例えば運搬用車両を購入する代金として借りたお金を運転資金に流用し、それについて相談どころか報告さえもしていないようなら、追加の融資は難しいと判断するかもしれません。

「運搬用車両を購入するつもりだったが、取引先からの入金が滞っている中でこちらの支払期限が到来し、支払わなければならない状況だってある。そういう事情も、斟酌してくれて良いではないか。」確かに、そのようなことも発生すると思います。この場合は、予め金融機関に相談し、了解を得てから行うようにしましょう。どうしても間に合わなかった場合なら、報告して相談することが不可欠です(なお、相談すれば必ず了解が出るとは限りません。特に資金使途を限定した制度を使った融資の場合です)。まったく相談も報告もせず、次回融資の面談で以前の資金が申し出た資金使途に使われていなかったことが判明すると、金融機関は警戒心を抱かざるを得なくなります。


粉飾しない

また、金融機関からの信頼感を大きく落としめてしまうのが粉飾です。「確かに、利益が出ていないのに出ているように見せかけて融資を引き出されることを、金融機関は警戒しているだろう。でも、利益を圧縮するのは構わないだろう。」それは違います。粉飾は、会社の現状、それもお金という客観的な指標を使った会社の表現に嘘があるということです。現在、嘘があるということは、これからも嘘がある可能性があるということです。金融機関にとって、お金の点で信頼感がおけるということは、融資するにあたってなくてはならない要素です。

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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