「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第280回

黒字倒産しないために計画に盛り込む要素

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 




このところ連続して黒字倒産について考えてきました。前回は黒字倒産を避け得る計画について深掘りし、実抜計画・合実計画に命を吹き込むパートとしてアクションプランを充実させることについて考えました。今回は、アクションプランに盛り込める要素について考えます。



実抜計画・合実計画にアクションプランを盛り込む

従前は黒字倒産とは、決算書・残高試算表上は黒字なのにキャッシュが不足してしまい、それが原因で手形を決済できなかったり金融機関への返済を連続して滞らせてしまった結果として倒産に至ることを指していました。

しかし今は「資金繰り返済する資金を調達できないため資金繰り破たんする」という形の倒産が増えています。前者を「うっかり」により突然に訪れる倒産、あるいは再生のチャンスを残した倒産とすれば、後者は苦境が長期間続いてしまい「あきらめ」の心境になったことによる倒産、再生を模索しない清算型の倒産です。

一方で、苦境からなかなか脱することはできないが「諦めることは絶対にしない」という企業には事業計画を活用するようお勧めしています。金融円滑化法時代に活用された実抜計画・合実計画がモデルです。

当時、リスケジュールを行なった企業でも実抜計画・合実計画を策定していれば返済条件緩和債権には該当しない(金融支援が受けられる)とされていました。事業計画書をベースにした事業性評価が可能との示唆だと解釈できます。

現在、コロナ禍対策の最終段階として実施されている「経営改善サポート保証(コロナ対応)」でも事業改善計画の策定は必須要件とされており、あきらめ型黒字倒産回避の切り札だと考えられます。

一方で実抜計画・合実計画には消極的な金融機関や中小企業が少なくないようです。「計画という形式面が重視され、改善努力という実質面から目が逸らされた」という声が聞こえてきます。しかしこれは、実抜計画・合実計画固有の問題点ではないでしょう。

アクションプランを充実させて本腰を入れて改善に取り組み成果をあげられた例もあったと考えられます。アクションプランこそが計画に命を吹き込むパートであると考えられます。



アクションプランに盛り込むべき「値上げ」

アクションプランとは何か?「業績向上に向けて現場の誰が、誰に対して、何時迄に、何を行う」を明らかにした行動計画です。これに「現場が適切に行動しているかを誰が、何時、どのように把握して、差異があればどのように対処する」を明らかにするマネジメント計画も併用して実施することで、会社の立ち直りに向けた取組が着実になされると期待できます。

アクションプランとして設定する項目として「新規先拡大」、「単価アップ」、「コスト削減」などが挙げられますが、今、特に挙げたいのが「値上げ(価格転嫁)」です。企業の立ち直りに向けて速効性があり、かつ今の世情にマッチしていると考えられるからです。

「値上げを依頼しても顧客、特に交渉力の強い大手企業が応じない場合が多い」という声が聞こえてきます。確かに今までは、そのような傾向がありました。一方で今は、大手企業からも受け入れられやすくなっていると考えられます。サプライチェーンの世界的混乱やインフレーション、物資等の不足などによる原材料価格や物流コストの上昇に大手企業も直面していることに加え、その先にある消費者もある程度の値上げを受け入れる姿勢が広がっているからです。

特に高い品質や優れたサービスなどの付加価値が維持されるのであれば値上げを受容する傾向も見られています。また政府も、公正取引委員会が「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を発出するなどして、最低賃金の引き上げなどに伴う労務費増大の環境下、中小企業が持続可能な値上げを実現できるよう後押ししています。

「その動きは理解している。しかし日常業務が忙しく踏み込めないのだ」という声があるかもしれません。実は過去に、リーマンショック(2008年)後のエコ景気(2012年)など値上げが容認されていた時期があり、そこで値上げした企業は財務体質を回復できたが、波に乗れなかった企業は苦境から脱することが難しかったという経緯があります。

今のチャンスを逃す手はありません。事業改善計画のアクションプランに価格転嫁を盛り込み着実に実施して、会社を盛り立てていきましょう。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


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なお、冒頭の写真は Copilot デザイナー により作成したものです。


 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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