「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第129回

(人混みを避けて)街に出よう

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



コロナ禍対策として、ある経済誌に「銀行が雨の日に初めて傘を貸した!」と表現されたほど、今までなかった資金調達支援が行われました。但し「よかった!」で済ますと後に困った事態に陥る可能性があります。雨の日に傘を借りられた後には、事業改善に取り組むことが重要になるのです。

その話をすると「コロナ禍が今後にどんな展開になるか分からない今、改善計画を立てるのは難しい。そもそも改善のアイディアも浮かばない。どうすれば良いのか?」という質問をもらいました。今日は、この点について考えてみようと思います。




コンサルタントの2つのパターン

まず、事業改善策を提案する専門家には2つのパターンがあることをご紹介しましょう。一つは、企業が必要とする改善策を一から検討する専門家と、自分が提供できるソリューションを策として提案する専門家です。「自分が提供できるソリューションを策として提案するだなんて我田引水的だな。そんな専門家はいるのか?」実は、ほとんどの専門家はこちらのパターンです。

この現象は、医学で考えると納得できると思います。医者は「内科、外科、皮膚科・・・」と専門分野に分かれており、患者は「皮膚に炎症が生じたので皮膚科だろう」と判断して病院を訪れます。そこで軟膏をもらって1年かけてやっと治した後、外科の先生に聞いたら「その炎症は、私に言ってくれたらメスで切除して1ヶ月で治ったのに、跡も残らずに」と言われる、などということが往々にして生じます。それと同様に「もっと儲かる会社になりたい」と考えた時に、税理士に相談したら経費節減を、営業コンサルに相談したら営業マン教育を勧められるという流れになります。

一方で、事業改善を勧める筆者は、企業が必要とする改善策を一から検討します。「一から」と表現したのには、実は様々な意味が込められています。しっかり企業分析して企業の現状とその原因を見極めて提案に繋げていくという意味だけでなく、企業の強み・弱みや事業環境の機会・脅威を踏まえた取組みを選択するという意味もあります。資金調達が絡む場面では効果の即効性も重要です。資金調達すべき時には目に見えた効果が現れるような方法を選択する、という場合もあります。




まず根本原因を探ってみる

「因果関係や強み・弱み、効果の現れ方など考えるべきことが多いのでは、適切な改善手法を見つけるのは難しいな。」そう考えるからでしょう、最初から特定分野の専門家の扉を叩く経営者がほとんどです。一方で、根本的な原因分析から始めた方が豊かな成果が得られる場合もあります。例えば赤字企業の課題解決として、経費削減と売上増大のどちらが適切でしょうか?これまで徹底的な経費削減を行う一方で、営業面では一人当たり売上高が業界平均より低いなら、今後は売上増大に取り組むことがポイントでしょう。経費削減を続けたのでは、成果を出すことが難しいのは誰の目から見ても明らかです。




街で事業改善策を探し出す

「売上増大がポイントと分かったからと言って、すぐに頼むべき専門家が見つかるとも限らない。広告の専門家もいれば、営業マン指導の専門家もいる。どちらを選べば良いのだろうか?」ある意味、それが一番難しい選択肢です。会社を熟知する顧問から継続的に指導を受けている場合には、最適なアプローチを考えてくれるでしょう。顧問がいないなら、自分で探すしかありません。

「お手上げだな!」そんなことはありません。実例を探せば良いのです。他者が採っている策と成果を参考にするのです。他者の観察にはインターネットや図書などもありますが、街で目にする方法もあります。「街ならいつも歩いているが。」何気なく歩くだけでは、課題のソリューションを見つけるのは困難です。例えば「同じ駅前ある2つの書店のうち、1つは繁盛し、他方は閑古鳥が鳴いている。違いは何か?」と考えながら観察してみてください。いろいろな要因が見つかると思います。

「繁盛店は品揃えが良い。それは分かっていることだ。」今の時代、繁盛の秘訣が品揃えだけとは考えられません。他の要素もどんどん探してください。地元に関係した本が多い、目を引くポップがある、週替わりテーマで本・雑誌を紹介するコーナーをイベント化している、「〇〇分野ならあの店だ」と言われこだわりがある、などなどの要素を見つけられるでしょう。このような示唆は、インターネットや図書などでは手に入りません。実感してみるのが一番です。事業改善のタネを見つけ、自社に最適なアプローチを選べるようになるため、(人混みを避けて)街に出て観察することをお勧めします。






<本コラムの印刷版を用意しています>

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。




なお、冒頭の写真は写真ACからcheetahさんご提供によるものです。cheetah さん、どうもありがとうございました。




 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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