「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第92回

信用保証を通じた災害復旧支援

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 


今秋は、異常な気がします。令和元年9月から10月にわたって4つの台風が日本に上陸・接近して甚大な被害を及ぼしたかと思うと、10 月 31 日には沖縄首里城本殿 を含む6棟が全焼しました。被災された人々・企業だけでなく、日本全体が暗い気持ちに引き込まれてしまう、そんな危惧がもたげてきそうです。こんな時には復旧・復興に意識を集中して、力を注いでいくしかありません。いち早い復興を遂げ輝かしい日々を取り戻しましょう!


先週、台風19号被害を中心に政府による被災企業への支援策をまとめました。今週は、その中でも信用保証協会の保証にスポットライトを当ててご説明します。



<令和元年台風第19号に伴う災害に関して被災中小企業・小規模事業者対策を行います>

https://www.meti.go.jp/press/2019/10/20191015010/20191015010.html

<災害救助法適用地域一覧>

岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県及び静岡県(被災地域)。なお、災害救助法の適用地域は市町村単位で指定されているので、ご自身の事業所の指定については以下でチェックして下さい。

https://www.meti.go.jp/press/2019/10/20191015010/20191015010-11.pdf



セーフティネット保証4号の適用

台風19号による被害が明らかになった後、政府はまず、セーフティネット保証4号の適用という支援策を打ち出しました。この保証は、被災した中小企業の経営安定資金について、信用保証協会が一般保証とは別枠の限度額で融資額の100%を保証するものです。地域の指定は近日中に官報にて告示する予定で、信用保証協会においてセーフティネット保証4号の事前相談を開始しています。

https://www.meti.go.jp/press/2019/10/20191015010/20191015010-3.pdf


別枠とは、信用保証の全国統一ルールとして一般的な保証枠として無担保保証について8000万円、普通保証について2億円が設けられているところ、被災企業については別に特別保証枠として無担保保証について8000万円、普通保証について2億円が設けられたという意味です。このため一般枠を使い切った企業でも、要件に合致していればこの保証を利用することができます。


またこの保証は、責任共有部分がない100%保証とされています。一般的な保証は、融資を行う金融機関にもリスクをとってもらい慎重な審査と親身な期中管理を促す趣旨で、責任共有として20%が定められています(1000万円の融資なら信用保証がカバーするのは8割の800万円。残りの200万円は金融機関の負担)。しかし責任共有を理由として被災企業への支援が滞ってはならないので、セーフティネット4号を適用する特別保証は100%の保証とされたのです。このため金融機関にとって融資がしやすい制度です。


この保証を利用するには適用要件を満たす必要があります。その要件とは「台風19号による災害等の発生に起因して事業に影響を受けた後、原則として最近1か月間の売上高又は販売数量(建設業にあっては、完成工事高又は受注残高。以下「売上高等」という。)が前年同月に比して20%以上減少しており、かつ、その後2か月間を含む3か月間の売上高等が前年同期に比して20%以上減少することが見込まれること」です。

適用要件に該当し利用を希望する皆さんは、本店等(個人事業主の方は主たる事業所)所在地の市町村(または特別区)の商工担当課等の窓口に認定申請書2通を提出(その事実を証明する書面等があれば添付)し、認定を受け、希望の金融機関または所在地の信用保証協会に認定書を持参のうえ融資を申し込んでください



災害復旧保証

台風19号は「激甚災害」に指定される予定です。

http://www.bousai.go.jp/pdf/191021_mikomi.pdf


「激甚災害」に指定されると、事業の再建に必要な資金について信用保証する「災害関係保証」が利用できると予想されます。災害関係保証は、一般の保証とセーフティネット保証とはさらに別枠(通常の保証限度額とセーフティネット保証枠を使い切っていても利用できる)で、100%保証の制度です。災害関係保証の利用には「罹災証明書」が必要になります。まだ手続きをとっていない方は、是非、すぐに罹災証明書の入手をお勧めします。

https://www.meti.go.jp/press/2019/09/20190925004/20190925004-2.pdf


激甚災害指定による「災害関係保証」利用に必要となる「罹災証明書」の入手では、被害状況を的確に表す写真がポイントとなるようです。常葉大学の社会災害研究センターから「建物被害調査のトリセツ-かたづける前に記録を残そう-」が提供されているので活用してください。

http://sdrc.sz.tokoha-u.ac.jp/torisetsu/




<本コラムの印刷版を用意しています>

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>





なお、冒頭の写真は写真ACからmakoto.hさんのご提供によるものです。makoto.hさん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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