「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第78回

期待される税理士の役割

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 

 中小企業診断士事務所StrateCutionsが2月13日に開催した緊急セミナー「~人手不足倒産も人ごとではない社長必見~ 決算期を前に中小企業社長が考えなければならないこと」をもとに、前回は「金融検査マニュアル廃止後の税理士の選び方」というタイトルで振り返りました。今回は、税理士にはどのような活躍が期待されているかを、考えてみます。



資金調達環境が変わる可能性

 「資金調達のしやすさ」に変化があるのはご存知でしょう。景気が良ければ借りやすい、悪ければ借りにくいという違いは、厳然としてあります。一方で、金融機関の事情で差が出てくる可能性については、あまり知られていないように思います。平成10年頃の「貸し渋り」は、景気も影響していましたが(詳しくは省略しますが)金融行政のあり方や金融機関の財務体質なども複合的に絡んで発生したものです。


 この観点からすると、本年は節目になる可能性があります。「いざなぎ越え」と言われた景気は、今年に入って減速傾向にあるという統計が発表されています。金融庁は「金融検査マニュアル」の廃止を実行します。実は昨年度に中小企業庁が「信用保証制度の見直し」を発表していますから、中小企業向け貸出の根幹となる3大政策のうち2つが変更されたと見ることができます(もう一つは、日本政策金融公庫による貸出です)。



「事業性評価」の本格化

 「金融検査マニュアル廃止」は、次に「事業性評価の本格化」に続きます。「事業性評価」とは何でしょうか?金融検査マニュアルは「債務者格付け」、つまり企業の定量要因(財務数値・指標など)を厳格に判断して融資可否を判断するよう求めていましたが、事業性評価では定性要因(経営者の経営力・事業戦略・地域における貢献度など)も重視するよう勧めています。


 もともと事業性評価は債務者格付けの枠組み内でも推奨されていましたが、債務者格付けを残したままだと財務データなど定量情報に頼る習慣が金融機関に残ってしまい、企業の事業改善意欲や取組みの妥当性などが考慮に入れられにくいという弊害が見受けられたので、債務者格付けの枠組みを廃止すべく、それを実践するよう強制する源となっていた金融検査マニュアルが廃止されたものと推察されます。



「事業性評価」のノウハウが少ない金融機関も

 「では金融機関には、中小企業の事業性を評価して積極的に融資してもらいたい。」筆者も同じ思いですが、即応できない金融機関もあるようです。もともと金融機関、特に地方銀行や信用金庫、信用組合などの地場密着の金融機関は企業の定性情報を活用して審査するノウハウを積み上げていましたが、金融検査マニュアルができて約20年経過したことで、そのノウハウが失われたのです。地域密着度の高い比較的小規模な金融機関ほどその傾向が強いのは、とても残念なことです。



税理士の出番!

 以上の事情で、事業性評価でもって中小企業を支援することに困難を感じる金融機関も少なくないと思われます。これは実は、中小企業も困るということです。


 ここで期待されるのが、日頃から中小企業と接する税理士です。税理士は、人間でいえば毎月に血液検査を行なう「かかりつけ医」のような存在で、事業性評価の場面では以下例のような役割が期待されます。

・ 利益率低下等の異常を社長に伝えて対策を促す

・ 売上債権の水ぶくれ等を警告して対策を促す

・ 部門別・商品別分析等で戦略に資する情報を提供

・ 自己資本充実など、健全な経営マインドを教示

・ 期末に決算の着地目標を提示、可能な対策を促す

 (赤字見込みななら設備投資の見直し等を提案)

 かかりつけ医である税理士から以上の情報やアドバイスを得て企業経営者は、事業改善の努力を始めたり、モチベーションを維持できるでしょう。税理士と二人三脚で取り組む姿を見て金融機関は「この企業には将来性(事業性)がある」と考えるかもしれません。


 しかしそれでも、金融機関が「事業性評価は難しい」と感じることがあります。現在の業績では、計画やアクションプランを見るだけでは「将来性(事業性)がある」と納得できない場合などです。こういう時は、まずは実績をあげましょう。「それは難しいな。今迄の取組みでは業績に反映しなかったのだから」。では、税理士の力を借りましょう。経営陣だけで「経営会議」を行うと、日頃の取組みが業績に繋がっていなくても「頑張っている」と安心してしまう可能性があります。ここに税理士に参加してもらい、日々の経営と業績の関係を是々非々でチェックしてもらうのです。こうすることで、より効果的な策を選び強化できるでしょう。事業性が高まったことを実証することができるのです。 





<本コラムの印刷版を用意しています>

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。



印刷版のダウンロードはこちらから

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

同じカテゴリのコラム

おすすめコンテンツ

商品・サービスのビジネスデータベース

bizDB

あなたのビジネスを「円滑にする・強化する・飛躍させる」商品・サービスが見つかるコンテンツ

新聞社が教える

プレスリリースの書き方

記者はどのような視点でプレスリリースに目を通し、新聞に掲載するまでに至るのでしょうか? 新聞社の目線で、プレスリリースの書き方をお教えします。

広報機能を強化しませんか?

広報(Public Relations)とは?

広報は、企業と社会の良好な関係を築くための継続的なコミュニケーション活動です。広報の役割や位置づけ、広報部門の設置から強化まで、幅広く解説します。