「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第228回

企業立て直しの定性的目標(人の成長)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 




立て直しが必要となった企業が事業計画を立てて取り組んでも意図した成果が得られない場合があるのはなぜか?数多くの事例を見る中で目立っていたのが「数値目標は立派な値が掲げられているが、それを実現するための戦略・アクションプランが充実しているとは言えない」現象です。また、戦略やアクションプランは掲載されていても結果が伴わない場合を子細に観察すると、「私(経営者)は計画を立てる人、従業員は成果をあげる人」という乱暴な2分法に則っていることが多いと感じています。これを避けるために前回、従業員満足という観点で考えてみました。今日は更に深堀していきます。



従業員満足

前回、従業員に成果をあげてもらうためには「苦労や嫌なことを強いるが、別のことでフォローする」のではなく、「計画に取り組み成果をあげることそのものが楽しい、有意義と感じる」という構図を作り上げることがポイントになるとお話ししました。取組のプロセスそのものを魅力的・満足なものにするのです。


「そう都合の良い状況になるのか?経営改善の場面では従業員が今まで取り組んだことのない試みを行わなければならない場合がある。試行錯誤してもなかなか良い結果が得られなかったり、何を考え、何をすれば良いのかすら分からないこともあろう。そのような状況でプロセスを楽しめというのは、無理があるのではないか?」その疑問、もっともだと思います。しかし、初めての試みなので試行錯誤してもすぐには良い結果が得られない、何を考え行動すればよいのかすら分からない、という状況でこそ、プロセスを楽しむことが大切になります。


それは何故か?人が働く原動力を考えると理解できるでしょう。単純・軽微な仕事を行う時は他からの強制があれば「仕方がない、仕事するか」という気持ちになれるでしょう。監視・注意すれば手抜きも防げます。しかし、複雑・困難な仕事をする時には他からの強制は行動の動機にはなりません。無理強いしても人は動けないのです。そもそも監視では、考えているのかぼっとしているのか、区別がつきません。それでも無理強いすると、そのうち陰で手を抜いたり、まじめな人物がウツになってしまう等の弊害が生じてしまうでしょう。



人を伸ばす(自分の働き・他人との協働で成長する)

「それは納得できるが、さりとて何ができるのか?」従業員に成長を喜んでもらうアプローチがあります。自分の働きにおいて、あるいは他人との協働において成長していることを感じてもらい、それを喜びとするのです。


みなさんが「困難な仕事から成果を出した」時のことを思い出してください。困難な仕事なので、最初は成果を出すことはできなかったでしょう。その仕事で成果を出す能力(知識・ノウハウ等)を持ち合わせていないからです。「この仕事は、今までの仕事で使っていた知識だけでは対処できないのではないか?勉強が必要そうだ」と考えて勉強する、そして「この仕事は、今までのノウハウでは効果が出ないのではないか?新しいノウハウが必要そうだ」と考えて他人と相談し、学び、時には協働することで成果を出せるようになります。チャレンジングな取組に成功するには、その前に個人としての働きや他人との協働などの側面で成長する段階を経由していたことを、思い出されるのではないでしょうか。


以前は、この側面にあまり関心が払われてきませんでした。人の心理より、仕事を進めなければならないとの義務感が重視されていたからかもしれません。しかし今は人の心理が重視され、成長こそがチャレンジを成功させる原動力だと認識されています。そのような状況下、会社の立ち直りを目指す経営者は、従業員が「今私は、チャレンジングな仕事に立ち向かって成長している。上司(経営者)が評価してくれているし、近いうちに成果として現れてくるはずだ」という感覚を持ちながら、それをモチベーションアップの原動力にして、仕事に邁進してくれる構図を作り上げる必要があります。従業員に「私は仕事上で個人的に・あるいは仲間と協業する上で成長している」という実感を持たせられない企業は、チャレンジングな計画を成功させることはできません。


「確かに我が社従業員のモチベーションアップが大切だが、どう実現すれば良いのだろうか?皆目見当がつかない、誰かに相談したい。」そうお悩みなら是非、地域の「よろず支援拠点」等にご相談ください。StrateCutionsでも、会社・従業員の強みにフォーカスしながら成果に繋げていくご支援を行っています。会社の実情を踏まえながら、従業員とWin-Winの構図になるマネジメントの構築方法を考えていきましょう。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>




なお、冒頭の写真は 写真AC から photoB さんご提供によるものです。photoB さん、どうもありがとうございました。





 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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