「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第283回

資本性ローン活用に向けた計画作り

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



コロナ禍や世界的な情勢不安などの影響を色濃く受けながら長いトンネルを抜けようとしている企業は、今、もう一つの壁に直面している可能性があります。抱えてしまった債務超過のために金融支援が受けにくい中での資金調達です。その対応のため現在、日本公庫による「新型コロナ対策資本性劣後ローン(コロナ資本性ローン)」が年末まで準備されています。今回は当該制度を使える計画を考えます。


資本性ローンが利用できる企業とは

コロナ資本性ローンは黒字倒産回避の切り札になり得ます。当該貸付は他の事業債権・貸付債権が満足されなければ返済を受けることができない、回収順位が出資と同順位なので「借入であるが、民間金融機関は資本とみなせる」という特性を持っているからです。このため資本性ローンが活用できると、それによる資金に加えて民間金融機関融資による資金確保が可能になるのです。

https://www.meti.go.jp/press/2024/06/20240607002/20240607002-1.pdf


コロナ資本性ローンを利用できる企業は、中小企業活性化協議会等の支援を受けて事業再生を行う企業あるいは事業計画書を策定して民間金融機関等による支援を受けながら事業再生を行う企業です。その活用には計画書の中身がポイントです。資本性ローンは融資の名がついていながら出資の意味合いが強いのです。赤字を続けて債務超過に陥ってしまった中で「売上・利益を微増させる計画しか立てられない」という企業に出資する人は稀でしょう。

それは日本公庫も同じ想いで、債務超過をカバーする資金と民間金融機関からの資金を受けて素早く事業を立て直し、5年1ヵ月、7年、10年、15年、20年という貸付期間中に債務超過を解消して健全企業に立ち戻ろうという強い気概を持っている企業に出資したいと思います。資本性ローンにはまた、貸付期間経過時には一括返済の条件が付されており、自力あるいは民間金融機関の支援を受けて返済することが前提とされています(公庫での借換は想定されていません)。それほどの回復を遂げられる見込みがある企業がコロナ資本性ローンによる支援を受けられるのです。



挑戦的な目標が「現実的」となる計画

「チャンスがあると見せかけて、実質的には困難な要求を突きつけるとはフェアではないな。」確かに、コロナ禍や世界的な情勢不安の影響等を受けて連続赤字・債務超過となった企業にとって貸付期間中の債務超過解消と、期限での一括返済(自己資金あるいは民間金融機関による支援も可能)という要請は、非常に挑戦的な目標提示と考えられます。では、ハードルを下げれば良いのか?それも適切ではないかも知れません。スローペースでの改善では、その会社の立ち直りそのものが実現しない可能性が高まるからです。

「しかし、顕著な改善が見込めないと支援できないと言いつつ、それを実現する計画書を策定すると『現状との乖離が大き過ぎる。実現性が薄い』と言われてしまう。八方塞がりだ。」もし、自信を持って「確かに数字だけを見たら飛躍的だが、当社としては実現可能と考えている」と言えるなら、表現方法を工夫しましょう。


飛躍的改善でありながら「実現性が高い」と認めてもらえる計画とする第1の方法として「納得できる小さな改善を幾つも積み重ねる」という方法があります。例えばここ数年5%程度の改善だった企業が20%改善できるとの計画を提示すると「実現性は大丈夫か?」と疑問視される可能性があります。しかし「既存顧客に既存製品で5%」、「既存顧客に新製品で5%」、「新規顧客に既存製品で5%」、「新規顧客に新製品で5%」と細かく積上げれば納得を引き出せる可能性があります。

納得を引き出す第2の方法は「実現プロセスを丁寧に説明する」ことです。先例での新製品提供や新規顧客開拓は、実現は口で言うほど簡単ではありません。しかし「パートナーと組んで新製品を試作中である」とか「新規顧客開拓は取引先から候補リストを5社分もらった。別途依頼している先もあり最終的には30社のリストが手に入る。そこにアプローチしていく」とプロセスを説明することで、実現性を納得してもらえる可能性が高まります。


「これなら大丈夫だ。実現して見せる」と考える目標・プロセスを設定、それを実現できる理由を丁寧に表現することで、納得が引き出せる計画を策定しましょう。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


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なお、冒頭の写真は Copilot デザイナー により作成したものです。


 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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