「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第272回

中小企業からリレバンを行う

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



3月以降3回にわたって政府が発表した「再生支援の総合的対策(以下「本対策」と言います)」について考えています。今回は最後の仕上げとして、この環境下で中小企業が日頃、何を心掛ければ良いかを考えてみます。

https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240308005/20240308005.html



信用保証協会及び民間金融機関の役割

本対策では、新型コロナウイルス感染症の蔓延により2020年から始まった「ショック死防止」目的での中小企業金融支援に一応のピリオドが打たれ、6月以降は事業改善・再生支援がメインとなることが再度、明らかにされました。


そのため信用保証協会、中小企業活性化協議会、再生ファンド(中小機構出資)、民間金融機関、政府系金融機関そして関係省庁と総力体制が敷かれるとも示されました。中小企業が支援を必要とするならいずれかが対応することとし「誰も支援しないので放置されている」状況が生じないよう、目指したものと考えられます。


中でも信用保証協会と民間金融機関は、中小企業との接点あるいは支援開始の窓口としての役割が期待されていると感じられます。信用保証協会は①「保証付融資の割合が高い先など支援先を特定、協会が主体的に支援」、②「経営改善支援実施(指標値により効果を検証)」あるいは⑤「『経営者保証の提供を選択できる保証制度』利用推進」により自ら中小企業の事業改善・事業再生を支援する他、③「中小企業活性化協議会への案件持込促進」の役割が期待されると示されました。


民間金融機関には「一歩先を見据えた経営改善・再生支援の強化」として、①「事業者の現状に加えて状況変化の兆候を把握、一歩先を見据えた対応実施(日常的・継続的な関係強化による事業者の予兆管理と認識共有(プッシュ型での情報提供等))」、②「経営改善や事業再生を先送りしないよう『実現可能性の高い抜本的な経営再建計画』等の策定促進」、③「地域における事業者支援態勢の構築・発展に向けた取組み促進」あるいは「経営者保証を不要とするための課題解決促進として金融機関対応例や成果事例等のとりまとめと横展開」などが期待されました。



経営改善支援を金融機関に申し出る

「一歩先を見据えた経営改善・再生支援の強化とはピンと来ない。現状はあまり困難な状況でなくても経営改善・事業再生が必要だと声掛けられるという意味か?切羽詰まったらやるべきことをやるまでなので、事業者としてはその必要をあまり感じていない」との声が聞こえてきそうです。確かに少なからぬ企業がその方針で切羽詰まった時から対応を開始、窮地を脱してきました。


しかし実は、窮地を脱することができたよりはるかに多くの企業が手遅れになっています。早めに取組を始めていれば復調できたはずだった企業の少なからぬ割合が倒産や廃業を余儀なくされたり、それに至らないまでも十分な資金調達ができずにゾンビ化などしているのです。政府の声掛けは、このような事態に陥る企業を少しでも減らしたいとの想いによるものだと考えられます。


早めの取組は中小企業にとっても大きなメリットがあります。切羽詰まった状況で事業改善等に取り組むと負担が大きくなるため現場の働き手たちと軋轢が生じてしまうかもしれません。また資金繰りも多忙になっているので「予定した売上がなかったらどうしよう」とか「売掛金が回収できなかったら困ったことになる」などを心配する必要も出てきます。早めに取り組んでおけば現場の理解を得やすく、資金繰りの心配も軽くなります。


「では、企業としては何をすれば良いのだろうか?」金融機関に積極的にアプローチする方法があります。12月決算企業は出来上がった決算書を持って金融機関に説明したでしょうか。3月決算の企業も、もうすぐそのタイミングです。昨年までは金融機関担当者に請われたら手渡すだけだったかも知れませんが、今年は金融機関の支店に持参して説明するのです。


「持ち帰る手間を減らしてあげるだけで、何か効果があるのだろうか?」大ありだと思われます。金融機関から「決算を説明してもらい、その後に分析したことで『貴社を経営面からご支援したい』との気持ちが強くなった。何かできることはないか?」との提案があるかもしれません。今、中小企業の側から始めるリレバン(リレーションシップバンキング)が重要になっていると考えられます。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>





なお、冒頭の写真は 写真AC から 78design さんご提供によるものです。 78design さん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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