「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第229回

現場を巻き込み方向合わせをシミュレーションする

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 




コロナ禍をきっかけに業況が思わしくなく、ロシア・ウクライナ戦争の影響も受けて「二進も三進もいかない」と感じている経営者・企業も多いかと思います。そのような事業環境下でも会社を持続させたいと願うなら、事業計画を立てて体系的な取組を進めていくことがお勧めです。「しかし、計画を立てても上手くいったためしがない」と感じている経営者も多いでしょう。「だからもう、計画を立てるのは止めることにした。」そう言われる経営者もおられます。今日は、それが大変勿体無いことだということと、その対処法を考えてみます。



シュミレーションとしての計画

「計画を立てても上手くいったためしがない」という言葉をよく聞きますが、「では、業況が悪くなってきたら何をすべきか?計画以外の方法を考えよう」という議論にならないことにご留意頂きたいと思います。人類の長い長い歴史の中で、そう思った人は沢山いるでしょう。実際に検討し、案を実行した人もいると思います。しかし、長期間にわたる無数の試みの結果、「大きな・困難な取組を手掛けるには予め計画を立てるのが良い」という結論に至ったのではないかと思われます。


それはなぜか?筆者の実感からすると「計画を立てても確かに必ず期待した成果が得られるとは限らないが、立てなかったら、計画した場合の成果が得られることは皆無に近い」からだと感じています。但しこれは大きな・困難な取組を成功させる必要条件に過ぎません。「立てた計画を、知恵を発揮しながら成功に至るまで諦めずに実行する」という十分条件が加わります。


計画を立てるのが必要条件だと言うと「計画は立てるだけで成果に繋がるのか?」との疑問がありそうです。答えは「ある」です。皆さんはプラモデルを作ったことがありますか?複雑なプラモデルを作ろうとする時、設計図がないと不安になりませんか?ではなぜ、設計図があると安心するのでしょうか?それは設計図が「そのプラモデルを作成したシミュレーションの集大成で、それをたどることでかなりの確率で成功できるノウハウを図式化・言語化したもの」だからです。同様に大きな・困難な取組での計画は、これから組織の各所で行おうとする活動のシミュレーションとして機能します。



現場を巻き込み方向合わせする

「確かに、計画には『企画部門が新製品を作る』や『製造部門が新製品を製造する』、『営業部門が販売拡大策を練る』などを書き込むが、それがシミュレーションと言えるほどのものなのだろうか?言えるなら、それで我が社が上手くいかなかったのはなぜなのだろうか?」発想を転換して「今までの計画の立て方ではシミュレーションしたことにならなかったのは、なぜだろうか?」と考えてみてください。


多くの事業計画策定をお手伝いする中で、計画がシミュレーションとして機能を果たさない主な原因の一つに「計画策定に従業員を巻き込んでいない」ことが挙げられることに気付きました。会社が企画部門・製造部門・営業部門と役割分担しながら一つの目標に向けて連携する状況は、実は相当複雑なので、「これをするにはあれが必要、それが前提条件となる」と経営者が考える以上の配慮が必要です。「そんな細かいこと、自分には分からない。」だからこそ計画立案には関係者を巻き込むことが大切なのです。必要な連携がなされるように当事者同士で考えてもらい、それを計画に盛り込むのです。


当事者を巻き込むメリットとして第1に「課題解決に必要な行動が現場レベルの知恵を活かしながら選択される」ことが挙げられます。「しかし我が社でそうすると、少し甘い案しか出てこない。」それならば再考を促せば良いでしょう。「仕方ないな、俺がやるよ」と経営者が立ててしまったのでは元の木阿弥です。メリットの第2は「自分が立てた計画だと、実行へのコミットメントが強化される」ことです。そして第3が「目標の達成に向けて、現場間の方向性が一致する」ことです。


これら3つのメリットですが「計画を立てたら自然と実現する」訳ではないことは、多くの計画が力を発揮していないことから理解できます。これらメリットを実現できるように、計画を立てる時に工夫や配慮が必要です。その一つが「従業員を巻き込むこと」なのです。


「計画策定に従業員を巻き込む大切さは分かったが、大きな課題でもある。どう取り組めば良いだろう?誰かと相談したい」と思われるなら、地域の「よろず支援拠点」などにご相談ください。早期経営改善計画の策定・実行支援を行うStrateCutionsでも、ご相談に乗っています。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>




なお、冒頭の写真は 写真AC から craftbeermania さんご提供によるものです。craftbeermania さん、どうもありがとうございました。





 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

同じカテゴリのコラム

おすすめコンテンツ

商品・サービスのビジネスデータベース

bizDB

あなたのビジネスを「円滑にする・強化する・飛躍させる」商品・サービスが見つかるコンテンツ

新聞社が教える

プレスリリースの書き方

記者はどのような視点でプレスリリースに目を通し、新聞に掲載するまでに至るのでしょうか? 新聞社の目線で、プレスリリースの書き方をお教えします。

広報機能を強化しませんか?

広報(Public Relations)とは?

広報は、企業と社会の良好な関係を築くための継続的なコミュニケーション活動です。広報の役割や位置づけ、広報部門の設置から強化まで、幅広く解説します。

当サイトでは、クッキーを使用して体験向上、利用状況の分析、広告配信を行っています。

詳細は 利用規約 と プライバシーポリシー をご覧ください。

続行することで、これらに同意したことになります。