「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第211回

事業改善をどのように目指すか

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



コロナ禍が2年以上も続いた末にウイズコロナに突入したことで、少なからぬ中小企業が業績を回復できない状況にあります。政府は新製品開発や業種・業態転換等のイノベーションを行おうとする企業を支援するために事業再構築補助金を創設して支援していますが、イノベーションが現実的ではない企業もあります。今回は、このような企業がどのようにして事業改善を模索するか、考えてみます。



イノベーションできない企業

世界中で同時発生したコロナ禍は、多くの企業の事業環境を大きく変えました。日本だけでなく南北アメリカ・ヨーロッパ・アジア・オセアニアそしてアフリカと、事実上全ての地域で人の移動・交流が制限され、それゆえに経済活動が制約され、生産や流通等が停滞・停止したのです。半導体不足などその影響が今だに大きく、今後も何時改善されるのかが定かではない現象もあります。このような現象の影響を強く受けている企業の対処策としては、影響の少ない市場への移動があります。例えば以前は外国人が多く訪れた地域にあるインバウンドをターゲットとした飲食店は地域住民をターゲットにする惣菜小売店に転業しました。イノベーションが、コロナ禍の影響を逃れる切り札となったのです。


一方で、事業を行うために多額の投資が必要な事業を行う企業は、そう簡単にイノベーションを起こすことはできません。例えば一台数千万円する印刷機械を何台も備える印刷業者は、コロナ禍のために地域の商店が発行するチラシが減ったからといって、転業などのイノベーションを起こすことは簡単ではないでしょう。このような企業は、既存事業でコストを削減・効率化しつつ売上を伸ばす「事業改善」に注力することになります。



コスト削減・効率化

売上・利益が減った企業がまず取り組むべきはコスト削減と効率化です。日本、それも特に中小企業はITの活用が遅れており、これによってコストが割高になり、生産効率が低迷していると言われています。例えば注文をFAXで受けてエクセルやワードで処理していると、FAX内容をエクセルに転記し、納品書や請求書等をワードにコピペして作成することになり手間と労力がかかります。


例えば受注プロセス前半部分について、自社のホームページに設けたフォームに入力してもらえば自社要員によるデータを打込作業が省略できます。プロセス後半部分について、フォームを集計した表形式データ(csv)を帳票作成システムに読み込ませると、あまり手間をかけずに納品書や請求書等を作成することができるでしょう。


また社内コミュニケーションもITで簡便・円滑に行なえます。つい数年前までは受注から生産、配送に至るまでのプロセスで情報共有するには高価なシステムの導入が必要でしたが、今では中小企業でも手が届くクラウドシステムで実現することができます。小規模・零細企業なら、比較的安価な業務システムで対応できるほどです。



市場を増やし、顧客のすそ野を広げる

今度は売上を増やす方法について考えましょう。売上は3変数でなる数式「単価×一人当たり購買個数(購買回数・一回当たり購買個数)×顧客数」で表現できます。コロナ禍前までは顧客数を増やすのが最も難しく、既存顧客の購買個数を増やしたり単価を高める方が容易とされていました。皆さんも単価を上げ、一人当たりの購買個数を増やすべく工夫を凝らしてきたことでしょう。


一方でITやインターネットの発達により顧客を増やすことが、つい数年前までより格段に容易になりました。それまではモノを販売する場合、リアルな店舗にはよほどの知名度がない限り近隣の顧客しか訪れてくれませんでしたが、今では簡単な手続きを踏めば(IT嫌いの方には大変かもしれませんが、リアルな店舗の開店に比べると格段に簡単に)インターネット販売サイトを立ち上げられます。対価の受け渡しもネット上で簡単に行えると共に、リーゾナブルな価格で破損等を心配することなく配送できます(料金を払えば冷蔵・冷凍でも配送できます)。これにより多くの事業者は事実上全国の、あるいは海外にいる者さえ顧客に取り込めるようになったのです。


「そう言われると、ローカル・ビジネスだと思っていた同業の他社が全国・外国に手を広げているらしい。そこはITやクラウドを使ってコスト削減にも成功したようだ。自分にでもできるだろうか?誰かと相談したい」と思われるなら是非、地域の「よろず支援拠点」あるいは取引金融機関などにご相談ください。StrateCutionsでもご相談に乗っています。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。

<印刷版のダウンロードはこちらから>




なお、冒頭の写真は 写真AC から こぬぬこ さんご提供によるものです。こぬぬこ さん、どうもありがとうございました。






 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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