「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第122回

雨の日に傘を借りた後は事業改善で応える

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 


7月も中旬になり、コロナ禍対策としての資金調達が「一巡した」企業が増えてきたという印象です。筆者が直接にアドバイス等させて頂いた中での最後の案件も、決裁はおりて契約を待つばかりとなりました。コロナ蔓延の影響を受けた中小企業に向けて政府系金融機関による特別貸付や信用保証協会による特別保証、加えて民間金融機関を窓口とする無利子無担保貸付が設けられるなど政府からの手厚い金融支援が用意されました。


これを受けて民間金融機関も独自の支援策を推進したところがあり、この状況をある経済誌は「銀行が雨の日に初めて傘を貸した!」と表現したほどです(週刊東洋経済7月11日号)。コロナ禍はまだ引き続いており第2波の可能性も指摘されているので油断できませんが、資金面では一息つける企業もあるのではないかと思います。


一方で筆者としては「雨の日に傘を借りた後」について、しっかりと考えて対応する必要があると感じています。3月決算を迎えた顧問先企業の決算を携えて、特別保証を活用した支援のお礼参りをしているうちに、金融機関担当者との会話から見えてきた展望があるからです。今回は、その点についてお話しします。



金融機関が気にしていること

決算報告を兼ねたお礼参りで金融機関が気にしていたのは、当然のことながら前期決算です。その企業はここ数年、事業改善に努力しており、前半は粗利率を向上させて黒字見込みでしたが、今年に入ってから売上が激減したので最終決算は赤字となってしまいました。多くの企業が同様の決算を迎えたためか、担当者はそれをひどく気にしている様子はありませんでしたが、これから来る今期決算を強く懸念しているようでした。今期の着地見込みについて聞かれた時、「事業改善は更に力を入れて努力していくが、この状況がいつまで続くか分からないので見込みは立てにくい」と伝えると、その時は「そうですね」と答えるのですが、時を変え質問の仕方を変えて何度も尋ねてきたのです。


担当者が何度も今期決算の着地見込みを聞いたのは、次回に資金が必要になったときに当該企業の状況が金融機関として支援できるレベルかどうかを気にしたものと思われます。何度かの応答の後に、その担当者は「今期の着地が赤字になる可能性があるのなら、事業計画の作成に着手してもらうのが良いだろう」と伝えてきました。



金融機関が懸念していること

その言葉を耳にした時、筆者には違和感がありました。以前に当社から「事業計画書を提出しましょうか?」と伺った時に断られた経験があったからです。その理由を聞くと「当社が事業改善の取組みを行なっていることは何度も聞かせてもらったし、その成果を残高試算表で確認することもできた。それ以上に計画書を提出してもらう必要はない」という答えでした。


その金融機関担当者は、今回はなぜ事業計画の作成を提案してきたのでしょうか?事業改善に取り組んでいることは何度も話として聞いたとしても、残高試算表等から検証できなかった場合には、金融機関として継続支援が難しくなるのではないかと見込んだと考えられます。当社が事業改善に取り組んでも成果に繋がらないのはコロナ禍の影響という事業環境が原因だと分かっていても、「次」には支援ができない可能性があるのです。このため現在の取組みや今後の見込みについて計画書として「見える化」して提出して欲しいというのが本音のようです。それも融資申込時に「泥縄」で作成したのでなく、例えば「コロナ禍が半年経っても収束しないので、今後に向けて舵を取り直す」決意が見える形が望ましいとの思いもあったようでした。



「雨の日に借りられた」メリットを活かすために

前回コラムでご説明したように、資金調達したことはバランスシート(貸借対照表)に反映されます。借入後に万が一、赤字状況が続くと借入金の返済以上にキャッシュが流出し、資本の部がマイナスになる「債務超過」に陥ってしまい、金融機関としては支援について非常に慎重にならざるを得なくなるのです。その時にコロナ禍が収束しており政府による特別制度も取り扱いが終わっていたとしたら、資金調達が困難になるかもしれません。


この状況に無自覚で陥ってしまったとしたら。想像するだに恐ろしいことです。「一つの金融機関がダメでも、他の金融機関なら大丈夫だろう。」その可能性が皆無とは言いませんが、冒険はしないに越したことはありません。「では、どうすれば良いのだ?」筆者が出会った金融機関担当者のアドバイスを受け入れて事業改善に着手し、事業計画を立てるのが一番だと思います。「新しい日常」対応すべくいち早く道筋を描くことで「次」も支援してもらえる企業になれる可能性が高めることができます。




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本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


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なお、冒頭の写真は写真ACから雰囲気イケメンさんご提供によるものです。雰囲気イケメンさん、どうもありがとうございました。




 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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