「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第33回

言葉遣いを気にしてみる

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「事業性評価融資の時代」における資金調達支援とは何か?融資してくれる金融機関としては、しっかりとした事業計画を作成しているかどうかや、社長の人間性、会社の様子を見た上で、パフォーマンスとしての決算数字などを確認して、中小企業の事業性を判断したいと考えているでしょう。とすると、そのご支援をするとは、社長の思いや言葉の結晶としての事業計画書の作成や、その実行の場面でのサポートになります。事業計画書の作成や実行のメインは社長で、支援者は同じ作業を同じ苦労を分かち合いながら共同作業することになります。この場合の支援者とは、仕事を肩代わりして楽にしてあげるというよりも、伴走者がいるので楽にできるようにしてあげるという感じです。


望ましくない表現

一方で、私について紹介してくれる方が、私のことを「金融機関からお金を引っ張ってくる人」と紹介してくれる場合があります。その表現は、(特に親しい人以外には申したことはありませんが、)とてもイヤな表現だと感じています。中小企業経営者の皆さんの、誤解を招いてしまうからです。お金を「力づくで」もしくは「策略をして」引っ張ってくるという感覚は、百害あって一利なしだと思います。

それともう一つ、「金融機関と対決する時に味方になってくれる」という表現も、スキではない表現です。こういうと「もともと金融機関職員なので、金融機関寄りの考え方なんだろう」とお考えになるかもしれません。しかし、それは違います。私は「中小企業と金融機関の間に、事業性評価融資という橋を架けるお手伝いをするコンサルタント」になりたいのです。


望ましくない理由

言葉というのは、不思議なもので、それを使い続けると意識まで影響を受けてしまいます。「お金を引っ張る」という表現を使い馴染んでいると、「金融機関が喜んで貸してくれるよう、我が社を改善していこう。そのためにコンサルタントの支援を受けよう」という意識にはなりにくいと感じています。そうではなく「お金を借りられるよう、コンサルタントに適当な計画書を作ってもらおう」という意識になりがちです。

また言葉とは、力のあるもので、それを使い続けると言動まで影響を受けてしまいます。「金融機関と対決する」という表現を使い馴染んでいると、実際に金融機関職員とミーティングしている時に、相手の気持ちを受け止めてみようという姿勢にはなりにくいと感じています。ちょっとした書類を頼まれた時にも「面倒臭いなあ」と感じ、それが態度に、時には言葉に出てしまうのです。金融機関担当者が書類を求めるのは「この書類を作ってくれると、上司に説明ができ、融資に漕ぎ着けることができる可能性がある。試してみたい」と考えているからです。もしくは上司などから「この書類がないと、判断ができない。最終判断をして欲しいなら、もらってきてくれ」と頼まれたからです。こういう状況で、いたずらに挑戦的な態度で接してしまうと、自らそのチャンスを潰してしまうことになりかねません。


メリットを分け合うパートナー

では「銀行=味方」なのかというと、そう考えるのも得策ではないと思います。筋の通らない期待を、抱いてしまうからです。そうではなく「我が社も金融機関も、お互いに自分の利益を第1に追求するものの、手を結ぶことによってメリットを分け合うことができるパートナー」だと考えるのが、一番健全なのではないかと思います。お互いのWin-Winの関係を築くことで、我が社は成長や万が一の場合に自社を守る資金を確保することができ、金融機関も貸付について利息が得られるというメリットが得られるのです。

ほとんどの企業は、自分の都合だけ考えて、事業上付き合う相手のことはあまり考えません。自分の考えどおりに言動してくれないと、不快に思ったりする場合もあります。経営者も「人の子」ですから、そう考えてしまうことは仕方ないことかと思います。

しかし、その方向性でだけ、物事を考えていると、うまくいく事業もうまくいかなくなるでしょう。金融機関のみならず、仕入れ先にしても、販売先にしても、そして顧客にしろ、自分の都合を優先して考え、その中で「あなたの会社と付き合うのが、自分にとってもメリットがある」と考えたので、あなたの会社と付き合っているのです。全ての取引におい「お互い様。お互いに、支え合っている」状況が成立しているのです。


言葉遣いを変えて、資金調達しやすい企業になる

であるならば、「金融機関からお金を引っ張ってくる」とか、「金融機関と対決する」という表現は、使わない方が良いでしょう。「お互い様。お互いに、支え合っている」という意識を身に付けることが、お金を借りやすい企業になる出発点になると思われます。

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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