「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第294回

企業が大切にしたい「共感」

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



2月は、人口が減少しつつある中、コロナ禍や世界的政情不安等の影響からも抜け出せない地域で持続化や発展を目指す企業の取組を考えました。今月は、大都市圏ではどんな取組ができるのかをベースに、中小企業が探っていくことになる方向性について考えます。



重要性が増す経営感覚と、競争環境での軸「共感」

需要が収縮する地域にある企業からすると「大都市圏にある企業は羨ましい、需要は山ほどあるのだから」との感想を持たれるかもしれません。その感想は当たっていますがメリットばかりではありません。供給も山ほど、敢えて言えば莫大にあり、競争が激しくなっています。大都市圏は物価も高く、特に人件費が高まっています。(人手不足は、地域も大都市圏も共通の悩みでしょうか。)


地域にしろ大都市圏にしろ、このような状況・課題があるので「経営感覚」を研ぎ澄ます必要があります。企業とは(一面ではありますが)事業活動を行って支払いを上回る収入を得、社員をはじめとした関係者に分配した上で、企業にお金を残して持続そして発展を実現していく存在です。

経営感覚とは「それを上手く実行する上でのセンサー機能の感度を上げること」と、「得られた情報をもとに的確な判断をして、現場の行動やマネジメントとしての取組、長期的な計画などにフィードバックすること」と言えるでしょう。よく耳にする「PDCAサイクルを的確に回す」ことにより、それを行っていきます。この経営の基本的行動を、地域の企業にしろ大都市圏の企業にしろ、しっかりと実践する必要があります。


では、このPDCAサイクルを回すに当たって、何についてセンサー感度を上げ、フィードバックして改善していけば良いのでしょうか?「顧客のからの認知」との声がありそうで、もちろんそれも必要ですが、競合ひしめく市場にあっては顧客認知だけでは十分とは言えません。

認知された多数の同業他社の中で自社を選んでもらうには、もう1ランク上の条件「共感を持ってもらうこと」がポイントになると考えられます。「この会社の考えや行動は、私の意見に合致している」と認めてもらうことで、やっと購買行動に繋がるのです。



どうやって共感を抱いてもらうか?

「共感がポイントなのは理解するが、何をすることか?顧客の要望を汲み応えることか?」それは敢えて表現すれば「顧客の考えに企業が共感する」状況でしょう。一方でここでお伝えしたいのは「企業の考え・行動に顧客が共感すること」です。方向性が逆と言えます。

とはいえ、企業が独善的に目指す理想像に顧客が共感を持つとも思えません。すると「顧客あるいは社会にとってメリットになること」と、「それを現実化することで、企業にとって差別化になり、支持してもらう根拠になること」が両立するポイントを見付け、それを現実化していくことが、原則的な方向性となるでしょう。

以上のようにまとめると「複雑なコンセプト」と受け止められそうですが、意外とシンプルです。企業は「生活の利便性」、「健康や美の保持・向上」、「社会・地球環境への思いやり」などで共感を得ています。身近なところでは「お財布に優しい低価格」もあるでしょう。企業が掲げるこのような方向性に顧客が共感すると、他ではなく自社を選んでもらう理由となるのです。



実は超難しい「自社ビジネスとの両立」

前段の指摘について「なんだ、当たり前ではないか」と思われるかもしれません。実際その通りですが、この当たり前を「自社ビジネスと両立させながら」実現するのは困難で、ほとんどの企業が成功していないと言えるほどです。いや、大半の企業があきらめている状況です。

「難しい挑戦は避ける」ことも一つの戦略ですが、そちらを選ぶと「共感という『きっかけ』がない状況で、自社を選んでもらわなければならない」という、こちらも至難の課題がのしかかります。中にはSEO対策などで成功する企業もありますが、大半は失敗しています。


「共感を選ぶか、他の道を選ぶのか?」筆者としては「生活の利便性」、「健康や美の保持・向上」、「社会・地球環境への思いやり」、「お財布に優しい低価格」など、製品・サービスあるいは企業そのもののレベルアップを伴うので「共感を得るアプローチ」をお勧めしています。

これからのビジネスは共感を得るために知恵を出す取組、敢えて言えば競争と言えるのかもしれません。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


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なお、冒頭の写真はCopilot デザイナーにより作成したものです。

 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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