「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第234回

将来を見越す

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



最近にニュース解説などを見ると「トーンが一段と変わってきたな」と思うことがあります。コロナ禍が始まり休業要請等で事業に大きなダメージを受けた2020年はほとんどの人が「復旧」を望んでいたと思います。しかし2021年に入った頃から「大手企業の中には勤務形態をテレワークに切り替えて、都心の社屋を売却したという。この街の人出も随分と減ってしまう。対策を考えなければ」という考えも出てきました。顧客に起きた変化に対応して自己変革するという考え方です。2022年の最終コーナーに差し掛かった今、より大きな変化が生じる兆しがあります。今回は、このことについて考えてみます。



変化から大変動に至る兆し

「自社商品が売れない。以前ほどの需要がない」という現象をどのように受け取るか?「やばい、従来と同じく売れるように、攻勢をかけなければならない」という考え方も、もちろんあります。一方で「その理由は何か?と探求し、その変化に対応していく」というアプローチもあります。世の中が変わっていない状況では四の五の言わず前者のアプローチで営業努力した方が成果があがりますが、変わっていると疑われる場合には後者のアプローチも考えに入れる必要があります。今、ニュースなどを見ると「世の中が変わってきた」と感じます。コロナ禍、ロシア・ウクライナ戦争、中国の覇権主義などのほか、イギリスでは国民に手厚い支援を公約した政権が「実現性が薄い、財政を破綻させる」などの批判を受け50日足らずで失脚したとの現象も生じました。日本も円安から脱却できない状況から安泰ではいられないと危惧する論調も、最近目立ってきたと感じられます。


私たちはこのような状況下、どのように対応すべきでしょうか?「バブル崩壊やリーマンショックなど、今までも大きな景気後退はあった。そうなると、なるようにしかならない。今回も事態を静観するしかない。」そうでしょうか?確かにバブル崩壊やリーマンショックの「最中」に、個々の企業が取れる策は少ないと思いますが、今はそのようなタイミングではありません。つまり予防的対応を諦めるべき時ではない、ということです。では今、何ができるか?独立した(どこからも指示を受けない)貿易船の船長のつもりで、考えてみて下さい。大海原を航行する最中に最大級の嵐が襲ってくるという報道を耳にした時です。どうしますか?


その時、嵐をどこで迎えるかを考えるでしょう。大海原で迎えるか、外洋に面した港(例:銚子港)か、湾内の港(例:東京港)かによって万一のダメージに大きな違いが出ると考えられるからです。もし選択が可能なら、嵐が過ぎ去った後に今の積み荷を売却でき、次の仕入れや燃料・水などの補給も容易な港を探すと思います。


この例から、何が学べるでしょうか?日本経済がもしかしたら大きな不況に遭遇するかもしれない時、「好景気時のような成果は得られないので、ほどほどの取組でやり過ごす」と考えるのが良いか、「不況で大打撃を受けることがないよう、今できることを全力で行う」と考えるのが良いか?外洋貿易船船長の例から、後者が適切だと分かります。では、それは自社においては何をすることなのか?これを真剣に考えなければなりません。



今、準備するにあたっての原則

具体的に何を行うのが適切かは企業毎に異なります。取扱品選択を考える時に使える原則の例を掲げてみます。

① 不況からの立ち直りの早い分野を優先する(例:生活関連なら、ぜいたく品よりも生活必需品。産業関連なら、利益が出たら行う活動のための品よりも、定期的に行うべき活動のための品)

② 立ち直りコストの安い分野を優先する(例:製造が必要な受注生産品よりも、在庫品)

③ 回収期間が長いものよりも、短いもの(例:開発が必要な特注品よりも、すぐに生産できる汎用品)

④ 将来に必ず現れると考えられるトレンドに整合するもの(例:SDGs・カーボンニュートラル関連)


これら原則に基づいて我が社の方向性が見えてきたら、利用方法は2つあります。第1は、今すぐに将来を見越した方向性で行動すること。例えば、顧客にとって「利益が出たら行う活動のための品」よりも「定期的に行うべき活動のための品」を優先して営業します。第2は、嵐が過ぎ去った後に急速に立ち直れるよう準備します。重点商品のシンプルで分かりやすいチラシを作成したり、Youtube動画をアップできるかも知れません。


かなりの確率でやって来る緊急事態への対応方針を定めているかいないか、経営者だけでなく幹部職員・現場担当者までがそれを納得し、今すぐ行うべきことは行動に移しているかいないかが、企業の明暗を分けると考えられます。「是非、考えたいがアドバイスが欲しい」と思われるなら、StrateCutionsにご相談ください。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


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なお、冒頭の写真は 写真AC から すんだらみやこ さんご提供によるものです。すんだらみやこ さん、どうもありがとうございました。



 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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