「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第287回

改善を3重構造にする

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 




今年の冬は資金調達において、今までとは違う景色があると感じています。「今まで通りのスケジュールで、今まで通り申し込めば調達できる」という状況ではなくなったケースがあるのです。その理由を掘り下げると、一つには「企業の財務状況が悪化していること(売上・利益の減少が止まらず赤字が連続、債務超過のケースもある)」、そしてもう一つに「中小企業への支援政策におけるウエイトが、金融支援から経営改善支援に切り替えられたこと」が挙げられます。いずれの理由にせよ、解決策は事業改善への取組です。



今すぐできることを始める

「事業改善に取り組む」というと「計画を立てなければならない。そのための情報収集で税理士の協力も必要だが、いつも忙しくしているので頼み辛い。計画を立てたとしても社員(幹部職員)を納得させるのは大変だ。以前に計画を立てても内部の協力が得られず、机の中に仕舞い込んでしまったという痛い経験もある。それを考えるとあまり前向きなれない」という経営者もいるでしょう。八方塞がりのお気持ち、とても良く分かります。

ここで関係者が3者、出てきました。経営者に加えて、社員と税理士です。彼らも実は八方塞がりに感じている可能性があります。

税理士は「以前に社長は『経営改善に取り組むぞ!』と宣言、数値計画や資金繰り表の作成を手伝ったが、結局は使われなかった。また頼まれたとしても、今度は気持ちよく協力がしにくい」と感じているかもしれません。

幹部職員は「以前に社長が経営改善計画を提案した時に『それよりも前にやることがあるでしょう、それをやったらどうですか』と答えると、社長は反対と受け止めて計画を取り下げてしまった。もし改めて改善計画が提案されたとしても、同じように答えるしかない。とすると、同じような結末に至るのかな」と考えているかもしれません。


この状況をどうしたら打破できるか? 1つに、今できる改善を進めるアプローチがあります。売上・利益の拡大に向けて実践できる提案を社員と話し合い、ドンドンと実行に移していくのです。

実行先行型にすることで、頭で考えると「無理だ!無駄だ!」と否認してしまう悪いシナリオから脱却できる可能性があります。

小さくとも成果を上げることで「努力すれば成果が出るのだ」と感じられるようになり、取組へのモチベーションにもなります。残高試算表等でそれが確認できると金融機関も今後の展開に期待を持つことができるでしょう。



ステップアップした取組を計画にまとめる

日常の取組と共に事業計画作成への取り組みも始めましょう。既に日常の取組を始めているので、税理士も幹部職員も「社長は、今度は本気だ」と考えて協力してくれる可能性が高まります。

事業計画作成では中長期的な観点を取り入れましょう。

日常の取組を始めていると「もっと段取りを整えれば成果があがるのに」あるいは「事業をもう少し広げると成果が飛躍的に高まるのに」という想いを経営者・社員が持つようになるでしょう。それを計画するのです。

特に今は生成AIを始めとしたIT・AIの急速な発展等により企業行動や産業構造、人々の生活が大きく変わりつつある時代です。

これらに対応できる、あるいは先取りする計画を立てることで、より大きな成果を目指すのです。



会社を巻き込む取組を始める

ここでもう一つお勧めするのは働く環境の改善も含めることです。

事業改善に社員が抵抗する理由の1つに「それでは負担が増えるが自分たちに何かメリットがあるのか?」という疑問に答えがないことです。もちろん給料やボーナスへの反映は成果が出てからが順序ですが、コミュニケーションの円滑化や働き方の改善など今すぐできる改善があります。

例えばある会社は同僚等からの心配りに「ありがとうカード」を発行、月末にカード残高に応じて会社が感謝状や贈ったり評価を高める制度改正をすることでモチベーションを高めました。


「会社の立て直しなんて無理だ」と考える経営者がいます。

実際、全ての企業が成功する訳ではありませんが、成功企業を観察するとポイントは「他を遙かに上回る美点」ではなく「地味な取組を確実に実行したこと」です。

まずは地味な取組を始めて定着させられるよう、ここに挙げた3つの取組を試みてみるようお勧めします。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。

<印刷版のダウンロードはこちらから>

https://www.innovations-i.com/shien/id/panf_id/?id=725




【筆者へのご相談等はこちらから】

https://stratecutions.jp/index.php/contacts/




なお、冒頭の写真は Copilot デザイナー により作成したものです。

今回は事業改善の取組を3ステップで行う姿を描きたかったのですが、それは難しいので、3つの計画を描いてもらいました。Copilot デザイナーさんは計画のタイトルにはこだわりがあるようで、この3つはどうしても掲げておきたいようでした。

 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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