「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第270回

「再生支援の総合的対策」への対処法

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



3月8日に経済産業省・金融庁・財務省は連名で「再生支援の総合的対策を策定しました」を発表しました。

https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240308005/20240308005.html

第1の柱はコロナセーフティネット保証4号やコロナ借換保証、日本公庫等のコロナ特別貸付、コロナ資本性劣後ローンなどのコロナ資金繰り支援の本年6月末まで延長で、前回はこれらの活用を考えました。今回は「再生支援の総合的対策(以下「総合的対策」と言います)」の第2の柱について考えてみます。



優遇措置の終了後に来る「平時」

第2の柱は「7月以降の経営改善・再生支援に重点を置いた支援」で、対応して7月以降はコロナセーフティネット保証4号やコロナ借換保証は廃止予定です(信用保証を付して行われる民間金融機関融資が終了する)。 また、日本公庫等のコロナ特別貸付は金利引下げ幅縮減など、特別貸付と言えどもコロナ期の特別な支援水準ではなくコロナ禍以前の水準に戻すとされています。


その意味として第1に、借入金額(上限)や借入期間(最長期間)、金利などの優遇策がなくなります。例えばコロナ借換保証は保証期間10年、上限1億円、保証料0.2%と優遇されていましたが、その特別措置が終了します。


第2に(事業性評価支援士協会による推察ですが) 評価・審査における特別措置がなくなると考えられます。2020年から2022年春までのコロナ禍では営業自粛要請などの影響で事業者がショック死しないよう緩和措置が執られました。「申し込めば資金調達できた」と感じた経営者も多かったことでしょう。2022年春に「中小企業活性化パッケージ」が発表された以降は経営行動計画書と金融機関の伴走支援を要件とする「伴走支援型特別保証」や「コロナ借換保証」など、金融支援は経営改善に向けた努力を行う事業者を対象にするものとなりました。


今次の総合的対策で政府系金融機関も民間金融機関も、そして信用保証協会も平時の審査に戻ると考えられます。つまり通常審査で融資可能と判断できない企業に優遇策を探るのではなく「この企業は本当に立ち直れるのか」を問う事業性評価を探る流れになると予想されるのです。



コロナ資金繰り支援の延長期間になすべきこと

「再生支援の総合的対策」について以上のようにまとめると、資金繰りに不安がある中小企業がどのように対応すべきかが理解できます。金融機関に借換を申込んだが断られ、ゼロゼロ融資の返済が始まって資金流出のペースが速まってしまった場合、これまで(コロナ禍以前。但しリーマンショック直後の混乱は収束した時期)なら「仕方ない。もう少し待とう」とのスタンスも可能でした。しばらく待てば資金調達が可能になったのです。借入返済が進むにつれて現在残がピーク時残高を下回ることになり、その空き枠分を借りることができたのです。


しかし今、そうならない可能性が大です。ゼロゼロ融資などで資金調達した後、長らく売上・利益が回復しないので資金が流出した企業の多くが債務超過に陥ってしまったからです。債務超過とは「今時点で会社を整理した場合、全てを売却しても融資残額を完全に返済しきれない」状況のことで、この状況にある企業への融資は非常に困難です(金融検査マニュアル時代は事実上禁止されていました)。しばらく待って空き枠ができても、更に債務超過が膨らんでいたのでは資金調達できません。


「しかし資金がなくなると会社は存続できない。『融資があれば倒産しない、融資がなければ倒産する』の2択なら、金融機関としては融資するしかないだろう。」金融機関は2択ではなく「もし融資したら事業を回復できる企業と、融資をしてもできない企業」を分けて考えます。


「将来のことは分からないではないか?」このため計画を立ててもらい、それをもとに事業性評価を行います。事業回復の道程を示し、成果をあげるべく真摯に実行すると宣言する企業は「融資により事業を回復できる企業かも知れない」と考えて審査をします(結果として融資できる企業もあれば、できない企業もあるでしょう)。


逆に計画を立てない企業に「それでも融資をしたら事業を回復できるだろう」と期待することはありません。このため「再生支援の総合的対策」に計画の策定が強調されています。「会社を絶対に潰さない。立ち直りに向けた計画を立てよう」と決心した企業経営者は、6月末まで延長された期間内に是非、自社を立て直す計画を立てて下さい。自社を守る残ったチャンスを活かしてください。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>





なお、冒頭の写真は 写真AC から ACworks さんご提供によるものです。 ACworks さん、どうもありがとうございました。

 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

同じカテゴリのコラム

おすすめコンテンツ

商品・サービスのビジネスデータベース

bizDB

あなたのビジネスを「円滑にする・強化する・飛躍させる」商品・サービスが見つかるコンテンツ

新聞社が教える

プレスリリースの書き方

記者はどのような視点でプレスリリースに目を通し、新聞に掲載するまでに至るのでしょうか? 新聞社の目線で、プレスリリースの書き方をお教えします。

広報機能を強化しませんか?

広報(Public Relations)とは?

広報は、企業と社会の良好な関係を築くための継続的なコミュニケーション活動です。広報の役割や位置づけ、広報部門の設置から強化まで、幅広く解説します。