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第68回

コンサルティングをうまく活用する

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 

 「コンサルティング」というと「大企業のものだ。中小企業には関係ない」とお考えの中小企業経営者の方が多いようです。「わが社のことは社長の私が一番知っているだから。」それはその通りですが、自社をもっと的確に判断するため、他人の力を借りるのが有効な時もあります。「自分では健康だと思っていても、定期検診は受けておいた方が良い」という話を聞かれたことがあるでしょう。企業にも、同様のことが言えます。自社のことを一番よく知っている経営者が、さらに的確に知ることができるように、専門家の視点を導入するのです。



財務数字の意味するところを教えてもらう

 先ほど定期検診の例でも挙げたように「数字」の意味を教えてもらうことは、より的確に会社のことを知る助けとなります。決算書分析をしてもらうのです。決算書とは「企業における一定期間の全活動と期末に現れた結果を『お金』という基準で計測・数値化したもの」です。それだけでもかなりの情報源ですが、様々な公式による指標を活用することで、状況がもっと的確に見えてきます。


 例えばある小売企業は「自社の強みは仕入れだと思っていたが、それは間違いだった」ことが財務分析から分かりました。特定の卸売店との信頼関係で格安で仕入れていると思ったら、他店はインターネットで同様の価格で仕入れていたのです。とすると、仕入れではなく新規顧客開拓やリピート率アップ、顧客単価向上に時間・労力を差し向けた方が成果に繋がるでしょう。



優先順位を考える上でのヒント

 代表的な指標を使って決算書分析をすると、企業の強みや弱みがいろいろと見えてきます。それらをもとに「強みを伸ばせば良いのか、弱みを克服すれば良いのか」、「どの強みを第1に伸ばしていけば良いか」、「どの弱みを第1に克服していけば良いか」を決めていくことは、企業経営者にとって最大の役目と言えます。立ち向かわなければならない問題は山ほどありますが、その全部に同時に対応できる資源はないからです。  一方で、優先順位をつけるのは簡単ではありません。何を基準に考えれば良いのか、分からないからです。


 「利益に直結する要素を第1にすれば良いではないか」利益があがるまでにキャッシュが枯渇すると、困りますね。「では、キャッシュフローを第1に考えれば良いではないか」それでは根本原因に手がつかず終いになるかもしれません。


 ではどうすれば良いのか?ここで、専門家が役に立つかもしれません。経営者のみなさんとお話しする中でよく感じられるのは「全てが見え過ぎるから、決断できない」ということです。先ほどの事例では、「キャッシュフローがうまく回るように、仕事をきっちりとこなせるよう現場を体質改善していく」ことが最良の方法だと分かっていても「これを言うと現場の働き手に反対されるかもしれない」と考えて封印している経営者が少なくありません。会社の中が、よく見え過ぎるゆえの現象といえるでしょう。このような場合、筆者は、あえて是々非々の提案を行います。「働き手に気兼ねするのと、一時は辛いかもしれないが、最後は皆が笑顔になれるのと、どちらが良いですか」と言われることで、適切な判断を下せるようになります。



他事例の紹介・比較

 「自社の特徴を知るにしろ、優先順位を決めるにしろ、結局は人の判断ではないか。ならば自分で『エイヤッ』と決めても大差ないのではないか。」仰る通りです。専門家と言っても、千里眼ではなく預言者でもありません。絶対に間違いを犯さない保証はないのです。では、専門家の存在意義は何か?「他を知っている」ことだと思われます。


 例えば、借入過多と考えられる企業が「しばらくは投資を控えて借入の圧縮に努める」のか、「今、巡ってきたチャンスを捉えるために投資をする。借入金の圧縮はその後に取り組む」のかは、重要な経営判断です。一方で正解はありません。ここで、他の同様な事例と比べることでヒントが得られます。「投資を控えている間に競合が積極投資し、顧客が離れていった企業の例」や「チャンスに飛びついて投資したが、結局は事業がうまくいかなくなった企業の例」を専門家から紹介してもらい、自社と比較することで、状況に適った判断ができる可能性が高まります。



話し合いの中から宝物を掘り出す

 統計を見ると、経営者の悩みとして「相談相手がいない」が上位に挙げられています。経営上の重要な判断を下すのは経営者の役割ですが、それをいつも一人で行うのは、とても心細いことでしょう。そういう場面での話し相手、情報源として、専門家がお役に立つ場合があります。


 成功している社長さんの多くは、話し相手や情報源となる専門家と付き合っています。顧問税理士・中小企業診断士だけでなく、公的機関や金融機関が提供する専門家を活用されている方もおられます。そういう社長さんは、専門家との話し合いの中から「これだ!」と思うポイントを見つけ、試行錯誤しながら良い結果を手にしておられます。


 本や雑誌、インターネットではなく「専門家」を活用するメリットは「会話」にあるのかもしれません。経営者と専門家という全く違う立場にいる人物が心を通わせながら話し合いをすることで、思いもしなかったシナジーが生まれます。それこそが、専門家を利用する醍醐味でしょう。チャンスがあれば、是非、活用してみてください。




<本コラムの印刷版を用意しています>

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。また、コラム(本欄)ではコンパクトにまとめたStrateCutionsからのご提案についても、各項目をしっかりとご説明しています。印刷版を利用して、是非、繁盛企業になるための方法を倒産企業からしっかりと学んでみてください。


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プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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