「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第292回

地方で生き残りを模索する企業から学ぶ

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



先日に日本海側にある都市を訪問、人口が急速に減少しつつある中、新型コロナウイルス感染症の影響からも抜け出し切れていない地域において持続化を図り、更なる発展を目指す企業を訪問するチャンスをもらいました。今回は、それら企業からの学びをご紹介します。


大都市では見えてきませんが、地方に赴くと厳しい現実を痛感します。筆者は広島市を定期的に訪問していますが、県庁所在地で中国地方の中核都市である広島市でも十分な需要がないせいか、バブル期前後に建設された商業施設等が廃止・縮小される姿を目にします。

今回訪問した地域では、以前にあった大企業工場の撤退により若い人たちが域外に移転するなどしてして、全国平均をはるかに超える人口減少に見舞われていました。少子高齢化も「厳しい」と表現せざるを得ない状況です。事業所向けだけでなく個人向けも、つまり全事業者が厳しい状況に立たされている姿を見せつけられた感がありました。その中で今回見学させてもらった企業は、生き残りに向けて懸命に努力していることが印象的でした。



持てるものを最大限に活用する

生き残りに向けてポイントは「持てるものの意味を究極まで問い、活用する」ことです。

ある水産加工会社は、従前どおりの原料を用いながらも加工方法を変えることでユニークな製品カテゴリを確立しました。従来の製品では熾烈な価格競争にさらされていましたが、新たなカテゴリでは利益率を数倍に高めることに成功しました。

あるスーパーは、仕入を全面的に現場に任せました。売り場として一定以上の利益が出るよう工夫しつつ、ほとんど利益が出なくても「自分が欲しい」商品を並べることで、遠くからのお客を呼べる売り場となりました。

ある人材育成会社はこれまで、顧客企業からの求めやトレンドに応じてきたことで数種のビジネスを展開、「広げ過ぎたので整理するか」と考えていたところ「これらビジネスを一貫提供できる我が社には他にない強みがある。私たちを必要とする顧客がいる」と気付いて新サービスを開発、発展の原動力としました。



これまでのルール・慣習から自由になる

厳しい環境下で成果を出すポイントは「柔軟な発想」です。

スーパーマーケット業界では冷蔵・冷凍食品が売れ筋なので顧客が手に取りやすいオープンショーケースが主流ですが、売り場を占有する一方で電力料金高騰の影響を強く受けてしまいます。このためあるスーパーマーケットでは扉のある冷蔵・冷凍庫に変更して電力料金を抑える一方で、売り場を地域の農家に開放して産直市場にすることで顧客を呼び込むことに成功しました。

ある自動車販売業者は、利益率の高い修理について当社では軽微な作業に限るとし、高度な技術が必要な作業はディーラーに委託することにしました。機材購入や作業員の技術力育成に必要な資金を削減する一方で、顧客との関係性深化にエネルギーを注ぐことで、顧客から強い支持を得てリピート販売を可能にしたのです。

ある印刷業者は、書籍印刷に対応する間に培った編集能力を応用、地元でのつながりを生かして出版業に進出しました。歴史や風土、生き方等に係る本の出版で地域おこしと自社別柱事業確立という両得を実現した形です。



他者の協力を得て成果実現に加速度をつける

粘り強い企業の原動力となったのは「協力者を集める」ことです。

例えば先の水産加工会社は新製品パッケージを実績あるデザイナーに委託しました。

人材育成会社は、遠く離れた別の地域で類似ビジネスを既に始めている同業者があり、既に大手企業との取引が成立していることを知り、そことタイアップすることで都心大企業の案件を扱えるようになりました。


「答えは企業の中にある」との金言がありますが、自社にも事業環境にも光るものが見当たらないと、その言葉を疑ってしまいがちです。

しかし今回訪問させて頂いた各企業は自社を見つめ直して光るものを発見、加えて地域にある資源も組み合わせて「自分の生きる場所(ニッチ)」を見つけ出しました。

各経営者は口を揃えて「私たちは、何か新しいものをと目指してきた」と発言、この気概を原動力に模倣しにくいユニークな地歩を手に入れたと感じています。

全ての企業が真似をできる、自社を繁栄させられるアプローチだと感じました。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>





【筆者へのご相談等はこちらから】

https://stratecutions.jp/index.php/contacts/



なお、冒頭の写真はCopilot デザイナーにより作成したものです。

 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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