「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第123回

カンフル剤に頼らない経営を考える

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



当初の予定では2020東京オリンピックは先週に始まり、今頃は世界中から多くの人々を迎えて日本中でオリンピックによる好景気をおう歌していたはずでした。しかしコロナ禍の影響でオリンピックの日程は1年延期となったばかりか、猛威が衰えず開催できない可能性も否定できない状況になっています。今後について、オリンピックのような「カンフル剤」に頼ることなく事業を継続できるよう考えていく必要があると感じられます。今回は、この点について考えてみましょう。


カンフル剤が普通になっている日本経済

経済へのカンフル剤と言えば、政府による公共事業や補助金等の支援策が思い浮かびます。ではこのカンフル剤はどの程度の活用されているのか?ある統計によると、日本の公共事業はサミット6か国(アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア)の合計よりも多いとのこと。日本経済のカンフル剤利用度は、先進国において突出していると言えるでしょう。

https://hodanren.doc-net.or.jp/kenkou/gkhtml/gktop/gk6s/gk6s3p/gk6s3p.html

「しかし、日本は狭い国土を有効利用するために、土地がふんだんにある国々よりも多額の投資が必要になるのではないか?」そういう事情もあるかもしれません。ここで、カンフル剤の原資について考えてみましょう。政府の財政は税金等で賄うのが原則ですが、原資が不足する場合には国債を発行して調達します。国債の中には、そのメリットが将来にも及ぶので今年度の税収だけで賄うよりも将来にも負担してもらうことが妥当と考えられる公共資産(道路や橋など)を整備する公共事業の財源を調達するために発行される建設国債と、建設国債を発行してもなお収入が不足するので発行される赤字国債があります。赤字国債は昭和50年に初めて発行されましたが、長い間、財政的な見地から最小限に留めるべきと考えられてきました。バブル崩壊後の景気低迷を支えるために平成7年頃から発行が加速化し、今では借金で借金を返済する状況に陥っていることもあり、平成10年の発行残高が100 兆円程度だったところ、令和2年度末には650兆円程度にまで膨れ上がると想定されています。

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/a02.htm


オリンピックが大規模なカンフル剤になるはずだったが

オリンピック東京大会が決定されたのは2013年の9月、人気アナウンサーによるスピーチ「おもてなし」が当時人気を博しました。一方で、日本が招致に熱心だったのはカンフル剤効果を期待してとみて間違いないでしょう。東京都の試算では、オリンピックによる経済波及効果はトータル32兆円で、その内訳は東京オリンピック開催に向けた設備整備、大会運営、参加者・観戦者の支出など直接的効果が全国で5兆円、スポーツ実施者・観戦者の増加、観光需要の拡大、中小企業の振興などのレガシー効果として全国で27兆円が見込まれていました。

https://www.2020games.metro.tokyo.lg.jp/9e1525ac4c454d171c82338c5a9b4c8a_1.pdf

その期待とは裏腹に、コロナ禍のため東京オリンピックは一年延期されたことで約6,400億円、中止なら約4兆5100億円の損失が発生すると考えられています。

http://www.kansai-u.ac.jp/global/guide/pressrelease/2019/No82.pdf


カンフル剤に頼らない経営を考える

「オリンピックに、それほどの経済効果が期待されていたのか。延期で6,400億円の損失が見込まれるだと?では更なるカンフル剤が必要だな。政府には頑張ってもらわないと。」お気持ちは分かりますが、オリンピックに代わるカンフル剤を企画して実行に移すには多大な時間がかかるでしょう。我が社自身を「カンフル剤に頼らない事業」に変えていくアプローチの方が、はるかに即効性があります。会社を救う原動力になるのです。

「さりとて、カンフル剤に頼らない事業体に変わるなんてこと、そう簡単にはできないぞ。」確かにそうです。しかし今、旅行業や宿泊業、演劇業などコロナ禍から多大な影響を受けている業態を含む多くの企業経営者が、このアプローチで今後の経営を考えています。コロナ禍に立ち向かう積極的な姿勢や今後の戦略などについて、さまざまなメディアで情報発信されていますから、これらを読み、改革のアイディアと「自分の手で運命を切り拓くぞ!」というエネルギーも分けてもらうのは如何でしょうか?StrateCutionsでは、経営戦略を考える企業のご支援も行っています。「自社にもできること、何かないだろうか?」是非、それを一緒に考えてみましょう。



<本コラムの印刷版を用意しています>

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。

<印刷版のダウンロードはこちらから>



なお、冒頭の写真は写真ACからかっちゃんさんご提供によるものです。かっちゃんさん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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