「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第281回

黒字倒産回避のため使える制度(年末まで)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



現在、黒字倒産の危機が迫っている会社があると言われています。コロナ禍を借入で乗り切って今は回復しつつある企業の中には、債務超過となってしまったために資金繰りのための資金を確保できなくなっているのです。そのような企業が頼れる制度が今、残っています(年末までの予定)。今回は当該制度について考えます。



コロナ対策金融支援のこれまでの動向

新型コロナウイルス感染症は2020年春から爆発的に蔓延、その防止策として政府が行動制限や営業自粛要請などを行ったため、多くの企業が事業継続が危ぶまれるほどの影響を受けました。これら中小企業をショック死から守るため政府はコロナ特別貸付及びゼロゼロ融資を含むコロナ特別保証を創設、過去にない金融支援によって倒産は前年水準を下回るほど抑え込まれました。

政府はコロナ対策融資は原則2022年までとし、例えば信用保証であれば「コロナ借換保証」を創設して借換を進めました。お金を注入して延命を図るのではなく、新規借入は抑えて事業改善・事業再生に取り組んで活性化を図るよう企業を促す意図があったと考えられます。当該保証には企業による「経営行動計画書」の策定と金融機関による「伴走支援」が要件だったからです。

その借換保証も廃止され現在に残されているコロナ対策金融支援制度は、日本政策金融公庫などによる「新型コロナ対策資本性劣後ローン」及び信用保証協会による「経営改善サポート保証(コロナ対応)」となっています。

https://www.meti.go.jp/press/2024/06/20240607002/20240607002-1.pdf

「どういう意味だ?」これまでコロナ特別貸付やゼロゼロ融資を含むコロナ特別保証を利用した事業者は、今後は借換や新規融資を受ける場合には、上の2制度以外は平時対応の(自然災害等を受けた事業者支援等に係る場合を除く)制度を利用し、その条件で受けられるという意味です。平時の基準を満たす企業は何ら問題はありません。借換や新規融資等を受けることができます。一方で満たさない企業は上の2制度を使う以外は、新規調達も借換も難しくなるでしょう。黒字倒産してしまう可能性が高まってしまうのです。



現在に残る2制度の要件

「そんな状況なら、資本性劣後ローンや経営改善サポート保証の要件が厳し過ぎると困るな。」2制度では要件の方向性が、以前とは変わってきています。コロナ特別貸付やコロナ特別保証においては売上が前年同期比で5%あるいは20%減少していることが要件でした。

一方で資本性劣後ローンや経営改善サポート保証には売上減少要件は付されていません。その代わり、新型コロナ対策資本性劣後ローンでは中小企業活性化協議会等の支援を受けて事業再生を行う、あるいは事業計画書を策定し民間金融機関等による支援を受けながら事業再生を行うことが要件です。経営改善サポート保証(コロナ)では、経営サポート会議や中小企業活性化協議会等の支援により作成した再生計画等に基づき事業の再生を行う、あるいは「認定経営革新等支援機関が経営改善計画策定支援事業によって策定を支援した事業再生計画」について全債権者の合意を得た上で事業の再生を行い、金融機関による伴走支援を受けることが要件となっています。



企業の立ち直りに向けた取組を支援する2制度

これら要件の変化をどう見るか?コロナ直後の制度は行動制限や営業自粛要請などによるショック死の回避が目的で、このため「困っている」ことが要件だったが、現在に残っている2制度は立ち直りに向けた事業再生の取組を支援することが目的で、このため「頑張っていく」ことを形に表すことが要件とされたと考えられます。その頑張りも独りよがりではなく、金融機関が「この計画でもって頑張るというなら実現可能だろう」と納得できるものです。経営改善サポート保証(コロナ対応)ではそれに加えて伴走支援までも要件に加えられました。

新型コロナウイルス感染症の大激震を耐え抜き黒字まで漕ぎつけたのはとても素晴らしいです。一方でその傷跡が債務超過などとして残ってしまっているのであれば、今度はその解消も目指しましょう。平時になると解消に成功した企業が資金調達できる金融環境となります。今回ご紹介した2制度は「解消に向けて頑張る」との宣言で資金調達できる制度、本年末までとされているので、このチャンスを是非活かして頂きたいと考えています。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


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なお、冒頭の写真は Copilot デザイナー により作成したものです。

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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