「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第274回

伴走支援型特別保証の伴走支援とは何か

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



2022年春に創設された「伴走支援型特別保証」には、中小企業による経営行動計画書と金融機関による伴走支援が要件とされました。では金融機関はどのような「伴走支援」を行うことになるのか?入手し得る資料をもとに内容と対応について考えてみます。



伴走支援型特別保証における伴走支援の概要

一般的に伴走支援と言った時には「事業再構築伴走支援」、「コンサルタントが行う伴走支援」および「伴走支援型特別保証等で要件となっている伴走支援」という3つの類型があると事業性評価支援士協会では考えています。このうち第3の伴走支援では何を行うことになるのか。独立行政法人中小企業基盤整備機構が発行している「伴走支援における着眼点」が参考になるでしょう。

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/download/04/03_banso.pdf

中小企業基盤整備機構は略して『中小機構』と呼ばれており、中小企業に関する各種政策の実行を担う機関です。経営者や専門家などを対象にした教育・研修事業にも力を入れています。本資料は『早期経営改善計画策定支援事業』の補助対象として『計画策定支援費用』にプラスして『伴走支援費用』及び『伴走支援費用(決算期)』が追加されたことに伴い、伴走支援での着眼点を提示したものです。伴走支援型特別保証における伴走支援も同様の構図で実施することになると考えられます。


この資料によると伴走支援には『進捗確認』と『取組状況の確認』、『対応策の検討と、事業者へのアドバイス』そして『報告支援』があると示されています。


進捗確認とは、実績と予め策定した計画書、特に数値計画部分と比較して、差異状況を確認することです。


取組状況の確認とは、計画書の特にアクションプラン部分の取組状況を確認することです。


もし数値計画と実績に差異がある場合、又は、アクションプランが予定通り実施されていない場合等には、原因を分析し、必要に応じて対応策を検討し、事業者に改善に向けたアドバイスを実施するとされています。


以上の取りまとめとして信用保証協会に書面で伴走支援実施報告することになると考えられます。



分析やアドバイスをどのように行うか

金融機関として気になるのはまず2点目『取組状況の確認』ではないかと思われます。計画で挙げた各改善策(アクションプラン)の取組状況を確認するとはどのような意味か?アリストテレスの四原因説(ものごとを目的:理由、質量:構成要素、作用:変化の原因、形相:様子で考える)が利用できるかもしれません。


例えば作業効率向上等を目指した作業場整頓活動について「探し物をする無駄時間の廃絶のため(目的)、毎週30分整頓タイムを設け(質量)、完全に決められた場所にモノを収納した(作用)。社員も協力的に参加、探し物の時間が半減したとの報告があった(形相)」などと確認するのです。


金融機関として次に気になるのは3点目『対応策の検討と、事業者へのアドバイス』だと考えられます。事業を行うプロである経営者や社員が上手くできなかったことについて、その道に習熟等していない金融機関担当者がアドバイス等できるかという疑問です。この場面では3方向のアプローチが可能ではないかと考えられます。


第1は、細分化した作業等についてのアドバイスです。新製品開発に携わった金融機関担当者はごく少数なので、プロセス全体をアドバイスできる人は限られるでしょう。しかし最初の「リサーチ」段階なら、営業における自分の取組を参考に話せるかもしれません。


第2は参考例を伝えることで、書籍などで紹介される取組例等を伝えられるかも知れません(他顧客例の場合、秘密を洩らさないよう注意が必要です)。


第3は対応策の検討・取組姿勢等に関するアドバイスを伝えることです。課題解決策がどうしても出ない場合「我が社が管理できない要因を原因に挙げているからかもしれない。管理できる要因を探したら見つかるかもしれない」とアドバイスできるかもしれません。


伴走支援の醍醐味は、傍に支援者がいることで本人が隠れた能力等を発揮できるようになることです。このため伴走支援には、専門的回答の提供だけに留まらず、多彩な方法があります。金融機関担当者が以上のように伴走支援することで、企業経営者は今まで経験したことのない安心感を持てるようになる可能性があります。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>



なお、冒頭の写真は 写真AC から ponta1414 さんご提供によるものです。 ponta1414 さん、どうもありがとうございました。

 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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