「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第34回

事業性評価融資を依頼する

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
大ヒットした書籍「捨てられる銀行」をお読みになり、金融庁からも地域金融機関に対して「前向きな中小企業を支えることこそ金融機関の役割」というメッセージが発せられているという話をお聞きになった中小企業の経営者から「では、どのようにして事業性評価融資を金融機関に依頼すればよいのだろうか?」という質問を、多く頂きます。


事業性評価融資を依頼したい背景

この質問は、特に「格付け」という枠組みでは資金調達できなかった中小企業にとっては、とても切実なものだと思われます。長引く不況や地方経済の低迷などから満足な収益を得ることができず、赤字決算を続けてきてしまったという企業などです。

このような企業が、起死回生の思いで顧客に受け入れられそうな新製品を思いついたとか、蓄積してきた技術を評価されて大きなプロジェクトを任されたというところまで漕ぎつけたとしても、格付けで評価される限りは資金調達は難しいのです。

資金調達ができればチャンスを捉えられそうな状況にある。新製品や新プロジェクトを軌道に乗せる資金を、なんとか調達できないだろうか。このように考えている企業は、新たに「事業性評価融資」という仕組みができたなら、是非にも活用したいと考えていることでしょう。


事業性評価融資を行う金融機関を探す?

このような状況で、どの金融機関は事業性評価融資に取り組む姿勢にあるのか、どの金融機関は取り組む姿勢にないのか、それを察知するのは、非常に大きな問題です。筆者としても、できるだけ情報収集しています。しかし、皆様に公表できるほどの情報は集めきれていません。支店ごとに、温度差があったりもします。皆さんが借入を申し込む金融機関の支店が事業性評価融資に前向きか、そうでないかを情報として集めてお知らせするのは不可能な状況です。


自ら試してみる

では、できることは全くないのか?それに関しては “No” だとはっきり言えます。情報収集するのは難しいかもしれませんが、試してみることは可能です。金融機関が貴社の事業性を評価できるような事業計画書を作成し、「我が社の状況について、これだけの情報を提供します。これで我が社の事業性を評価して、融資してくれませんか」と頼んでみるのです。

そのような事業計画書を提出して、受け取りを拒否する金融機関は、いないと思います(少なくとも筆者が経験する限りは、受け取りを拒否する金融機関はありませんでした)。但し、事業計画書をきちんと読み、それでもって事業性を評価して融資の可否を判断してくれるかどうかは、金融機関や支店によって、多少の温度差があります。

この状況下、複数の金融機関・支店に事業性評価融資を依頼した時に、全ての金融機関・支店で断られるということは、少なくとも筆者の経験では、ありませんでした。事業計画書でもって事業性を評価して融資判断してくれる金融機関・支店が存在するのです(但しこれは首都圏に限った状況で、プラス筆者が資金調達のプロとして、事業性評価でもって融資判断してもらうことが可能と思われる案件を選んでいるという状況を踏まえる必要があります)。事業性評価融資について、あまり前向きではないと感じていた金融機関の中にも、応諾してくれた金融機関さえ存在します。


提案すれば事業性評価融資を検討してくれる理由

このような現象が生じる理由については、筆者は、以下のように推察しています。金融機関、それも地域金融機関にとって、事業性評価融資に前向きに取り組むのは、金融庁のアピールもあって、至上命題です。一方で金融機関は、それに自主的に対応するためには、いろいろな準備をしなければなりません。金融機関内でのルール作りも必要です。それができる前に、事業性評価融資に積極的に取り組むとは言いにくい状況なのです。

しかし、きちんと検討された事業計画書を既に作り上げた上で事業性評価融資を求める案件が実際に出てくると、しっかりと対応せざるを得ないと判断する金融機関もあるでしょう。出てきたものを断るわけにはいかない(そういう苦情が金融庁に寄せられると困る)と考える金融機関もあると思います。これから内部ルールを作るに当たって、良い題材だと考えてくれる金融機関も、あるかもしれません。という次第で、中小企業の側からしっかりとした事業計画書と共に事業性評価融資を依頼すると、それに対応してくれる金融機関が少なくないわけです。

一方で、一部の金融機関は、社内体制を整える前に申し込みをもらっても誠意ある対応ができないと考え、断ってくると思います。それはそれで、仕方ありません。万が一、後者のような金融機関がいたとしても、それを非難しても仕方ないと思います。そうではなく、前者のように対応してくれる金融機関に遭遇するまで、申し込みを継続する探す方が、得策ではないでしょうか。

以上の次第で、「自分が事業性評価融資を依頼するに当たって、受け入れてくれる金融機関はどこにあるのだろうか」という疑問をお持ちの方には、「それは調査しても分からないので、自分で試してみましょう。事業性評価融資に必要となると思われる事業計画書を自ら作成し、それで金融機関にアタックするのです」とお勧めしています。それをして、損になることはありません。応じてくれる金融機関は、きっと見つかると思います(筆者は、そのような印象を持っています)。是非とも、試してみてください。

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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