「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第200回

事業再構築が必要な理由

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



コロナ禍が収束を見せない中で、ウクライナとロシアの衝突(もう戦争と言って良い状況です)がエネルギーや穀物、素材等の高騰を引き起こしています。一部の事業者はとっては「この時期に、止めてくれよ」と叫びたい衝動に駆られているのではないでしょうか。それほど現在は不安定な、先を見通せない状況です。


この状況で今後はどんな姿勢で臨んでいくか?少なからぬ企業は事業を根本的に変える「事業再構築」に取り組んでいますが、「今回も『やり過ごす』方針で対応しよう」と考えている企業もいるようです。どちらが良いか一概に結論は出せませんが、少なくとも「今までは『やり過ごす』で大丈夫だったから、今回も大丈夫」というロジックは危険と考えられます。その理由について前回、考えましたが、今回も別の視点で検討しましょう。



コロナ禍の特殊性

「やり過ごす」が通用しなくなった理由の一つは、景気落ち込みの理由が複雑になったからです。昭和や平成初期は比較的単純で「やり過ごせば元に戻る、その次は力強く上昇する」と期待できました。しかしバブル崩壊以降、弱体化した日本経済にリーマンショック等の更なる要因が覆い被さる場面が増えて状況が複雑化しました。


またコロナ禍は疫病という今までにない理由で引き起こされ、それが2年以上も続くことで人々や企業の行動を大きく変えています。例えばテレワークは当初、ほとんどの会社が政府等の要請で仕方なく実施したようですが、「意外と対応可能だ」とか「働き手にも会社にも都合が良い」と気付いて定着させた会社が少なくありません。これら会社・従業員を対象にした企業は市場が縮小・消失してしまったのです。市場はあっても「従前のような訪問営業ができない」と困惑する企業もあるでしょう。このような次第で「じきに以前の状態に戻るので、やり過ごせば良い」とは言えなくなってきたのです。



パラダイムシフトだが合理的な「事業再構築補助金」

このような状況下で政府は、ポスト・ウィズコロナの経済・社会変化に対応しようとする中小企業等を支えるべく「事業再構築補助金」を創設しました。これは新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、又は事業再編という思い切った事業再構築を目指す中小企業等を支援しようとするものです。


この補助金は、今までの政府補助金が前提としていた「本業継続」とは真逆の姿勢で、各所で驚きをもって迎えられたと考えられます。一方で、中小企業の業務改善や財務改善を支援し、時には事業性評価による資金調達も支援していた筆者にとっては、この変化はある意味で自然に感じられました。それは、金融機関が以前まで主に利用していた「スコアリング」の考え方からして、合理的だったからです。


スコアリングとは、「成長性項目(売上高、経常利益増加率など)」、「収益性項目(収益フロー、売上高経常利益率など)」、「安全性項目(流動比率、自己資本比率など)」、「返済能力(キャッシュフロー額、債務償還年数など)」の財務数値・指標値でもって融資の可否を判断する思考ロジックです。


では、実際の会社ではこれら項目はどのような関係にあるのか?例えば景気の失速などで不調に陥った企業は「売上等の成長性項目における低下」をきっかけに「利益率などの収益性項目における低下」が発生、「流動比率など安全性項目の低下」や「キャッシュフロー額など返済能力の劣化」につながっていきます。


では、企業を健全化するには、どうすれば良いのか?返済能力や安全性項目をいきなり改善できません。先ず成長性項目を改善、収益性項目などに波及させていく必要があります。しかし、それは言うは易し実現するは難しの試みです。


「どうにかして売上を維持・拡大しよう」と頑張ってきたのに低下してしまった企業が、どうしたら歯車を逆回転させられるか?今までと同じ取組を強化するのでは効果は望み薄でしょう。今までと違った取組の方が期待できます。それゆえ政府は、今までのパラダイムに大変革を起こして「事業再構築補助金」を設けたのだと考えられます。


事業再構築はもちろん、全ての企業に特効薬となる訳ではありません。しかし「我が社には事業再構築は無理だ」と思うような企業でも、それが切り札になる可能性が高いと思われます。「コロナ禍を2年耐えてきたが、もう限界だ」と思う企業・経営者は、今まで事業再構築は無理だと思っていたとしても、一度検討してみては如何でしょうか?類似業者の成功例があるかもしれません。


「一人で検討するのは心許ないな」と思われるなら、地域の「よろず支援拠点」あるいは取引金融機関などにご相談ください。StrateCutionsでもご相談に乗っています。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。

<印刷版のダウンロードはこちらから>




なお、冒頭の写真は 写真AC から fujiwara さんご提供によるものです。fujiwara さん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

同じカテゴリのコラム

おすすめコンテンツ

商品・サービスのビジネスデータベース

bizDB

あなたのビジネスを「円滑にする・強化する・飛躍させる」商品・サービスが見つかるコンテンツ

新聞社が教える

プレスリリースの書き方

記者はどのような視点でプレスリリースに目を通し、新聞に掲載するまでに至るのでしょうか? 新聞社の目線で、プレスリリースの書き方をお教えします。

広報機能を強化しませんか?

広報(Public Relations)とは?

広報は、企業と社会の良好な関係を築くための継続的なコミュニケーション活動です。広報の役割や位置づけ、広報部門の設置から強化まで、幅広く解説します。