「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第239回

今年の振り返り(事業改善への取組)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



今年を振り返るキーワードの一つに「事業改善(事業再構築も含む)」が挙げられます。なぜか?一昨年・昨年はコロナ禍が引き続き、多くの業種・業態で「それどころではない」状況だったのですが、今年は情勢が変わってきたからです。しかし多くの経営者が「事業改善に取り組まなければ」と考える状況でもありません。この複雑な状況について、今日は考えてみたいと思います。



情勢がコロコロと変わった2022年

今年は「経営者の気持ちがバーコードのように度々、ガラリと変わった」と感じた年でした。最初はコロナ禍も3年目で意気消沈状態だったところ、夏頃には毒性が和らいだのか重症者・死者が減少、このため政府は格付を2類相当から5類相当に引き下げ「ウイズコロナ」が常態化して人流や経済活動が活発化、それで息を吹き返した企業があり「ここで波に乗るぞ!」という気分になった経営者も少なくなかったと感じています。この傾向は世界的で、多くの外国人が日本を訪れてインバウンドも活発化しました。しかし秋頃からは、2月末に始まったロシア・ウクライナ戦争がもともとあったコロナ禍を原因とする物資の不足や諸物価の高騰に拍車をかけ、中小企業のみならず大企業の経営環境も厳しいものにしました。2020年からしばらくの間は未曽有の政策措置で低く抑えられていた倒産が、ここに来て増えてきました。


このような状況下、少なからぬ中小企業経営者が「これではやっていられない。2020年度から2021年度にかけて実施された中小企業の延命を目的とした強力な支援をまた復活させて欲しい。今はそれを待つしかない」という気持ちになっているのを咎める気にはなれません。一部の光明が見えてきた業種・業態・個別企業を除くと、多くの業種・業態・企業がこの3年間と同程度あるいは非常に近い困難さに遭遇しているからです。ある社長は「経済活動に回復の兆しがあったので社員一丸となって営業活動に尽力、コロナ前を超える売上を達成したのに、燃料や原料、経費の高騰で利益はコロナ禍の時とほとんど変わらない。力尽きた感じだ」と言っていました。そのお気持ち、非常に良く分かります。



事業改善のタイミングは変わらない

先ほど「力尽きた」との気持ちになってしまう経営者の皆さんに共感すると申しました。しかし「延命目的の支援に期待しましょう」とは、筆者は申しません。逆に「是非、事業改善に尽力しましょう。自助により今の状況を打開していきましょう」とご提案します。それはなぜか?事業改善に取り組むか否かが、今後企業が生き残れるかどうかの分岐点になると考えられるからです。


これを深い穴に落ちた人の例で考えてみましょう。落ちたショックでひどいケガをしており、一方で地盤は弱く重機などでスイと引き上げられない状況です。穴から脱出するには、地上から垂らした綱を頼りに、多少の助力はあれども基本的には自力でよじ登らなければなりません。


この状況では最初、水や食料、衣服、毛布等を上から投げ込み、ケガと気力の回復を目指します(そうしなければ死んでしまいます)。但し、ケガが治って気力も回復したら綱を垂らし、自力でよじ登るよう勧めます。そうしなければ筋力が衰え、絶対に出られなくなるからです。このタイミングで雨季に入ってしまったら、どうするか?やはり、自力で登るよう勧めるのが親切です。水や食料、衣服、毛布などを投げ込んでいたのでは、その人は一生、穴から抜け出ることはできなくなります。


2022年の特に後半以降は、企業にとって、丁度自力で穴をよじ登るべきタイミングだと考えられます。本当はコロナ禍が過ぎ去り、ロシア・ウクライナ戦争もなく、苦しい2年間の反動で勢いをつけて回復の波に乗りたいところです。しかし残念ながらその波は(ほとんどの企業にとって)到来していません。この状況で「生き永らえることを目標にした支援」に頼っていたのでは、企業の回復力は失われてしまいます。営業力もマネジメント力も忘れ去ってしまい、債務超過で金融支援も受けられない、という状況に陥ってしまうからです。


「自助努力する大切さは分かったが、どう取り組めば良いのか分からない。誰か相談に乗ってくれないだろうか」と思われるなら、地域の「よろず支援拠点」あるいは取引金融機関などにご相談ください。StrateCutionsでもご相談に乗っていますのでご遠慮なくご連絡ください。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>




なお、冒頭の写真は 写真AC から wai13991 さんご提供によるものです。wai13991 さん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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