「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第174回

「目の前の仕事を全力で」良いのか?

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



新型コロナウイルス感染症の蔓延が止まりません。政府は首都圏などに発している緊急事態宣言を8月末までの予定から9月中ばまで延長する予定としているようです。コロナ禍で事業に支障をきたしている中小企業の回復はその分、遅れそうです。そのような判断がされた中、菅首相の「政府としては目の前の仕事に全力に取り組む」というコメントに違和感を持ちました。中小企業が同じ言葉を口にすると、資金調達はまず無理と考えられるからです。事業の回復もままなりません。今日はこのことについて考えていきたいと思います。



「目の前の仕事に全力で」が通用しなくなった

今、中小企業の皆さんをご支援する中で最も警戒するのは「目の前の仕事に全力で取り組む」という言葉だと感じています。資金調達の場面でこの言葉を発して良いのは例えば「コロナ禍により特需があって注文が殺到しているが、増えた需要に対応するため設備投資や正社員の増員などをすると後々に負債となりそうなので、現在の人員、資源で対応するしかない、残業して頑張る」という企業でしょう。このような企業は目の前の仕事に全力で取り組んでもらいたいと思います。


一方で、コロナ禍が予想を超えて引き続いた影響で精一杯の対応策を講じているが売上が向上しない、資金の流出も激しく存亡の危機が迫っているという企業から「目の前の仕事に全力で取り組む」と言われると、「この企業は大丈夫だろうか?コロナ禍を生き残っていけるだろうか?キャッシュの流出が止まらない中、資金調達できるだろうか?」と不安になってしまいます。


コロナ禍が始まる2019年末までは、ある会社が創業以来の「目の前の仕事に全力で」をモットーに取り組んでいると「頑張っているな」という印象でした。生産の拡大にしろ接客の向上にしろ、目の前にある課題に真剣に取り組み、その程度を高くすれば売上・利益があがると期待できたからです。しかし昨年冒頭から新型コロナウイルスが日本にも到来、状況が大きく変わりました。昨年の夏に「一過性の疫病ではない。秋頃に終息しても景気が回復するのは年末かもしれない。そこまで待てば旧に復せる」と考えていたのは今は昔、それから1年以上経ち、その期待が裏切られたとはっきりとわかります。今すぐにコロナ禍が終息しても時計の針は2019年冬には戻りません。世の中が変わったからです。あの時あった需要は消えて無くなり、もう戻らない可能性があります。



さまざまな形で起きている世の中の変化

変化は大規模に起きることもあれば、局地的に起きる場合もあります。中小企業の場合、事業環境の影響を受けやすいので、どちらにも油断がなりません。例えば10年以上前まで都市には必ずデザイン業者と印刷業者があり、中小商店や飲食店などの宣伝を一手に引き受けていましたが、今やほとんど見かけません。ITとインターネットの発展で、日本中の隅々で構造変化が起きてしまったからです。一方で駅前飲食店街の変化は一概には言えません。ある駅前はコロナが終息しさえすれば人出が元に戻ると期待できますが、別の駅前は大企業が移転してしまったので人出は戻らないと考えるべきかもしれません。外国人観光客は長い目で見れば戻るでしょうが、2019年頃の勢いを取り戻すのは当分先でしょう。世の中が変わったと受け止めた方が賢明と考えられます。



将来にビジョンを描いて対応する

「変化が起きていることは、分かった。しかし次にどんな世界が来るか分からなければ対応できない。結局、目の前の仕事に全力で当たるしかない。」そうでしょうか。「将来はどうなるか」は分かりませんが、「自分は将来にどうするか」は決められます。ビジョンを描き、それを実現できるように行動するのです。例えばあるレストランは、昨年のゴールデンウィーク中にデリカッセンに様変わりしました。その店主は「今この時点でコロナ禍が終息しても、ビジネス接待でレストランを使うお客は帰ってこないだろう。一方で、家庭で食事する人は確実に増える。そのようなお客様に喜ばれるお店になる!」というビジョンを描き、それを実現したのです。


「今まで高級デリカッセンを利用するお客様は、近所にいなかった。」それには”YES“と答えるしかありません。しかし、それに対応したビジョンとして「だったら止める」と「私が利用するお客様を創造していく」の両方が可能です。もちろん「止めて、目の前の仕事に全力で向かう」を選ぶことも可能ですが、それが「頑張って1年かそれ以上、取り組んできたが効果が現れない策」でないかどうか、確認する必要があるでしょう。将来の道を切り拓くビジョンを描き実現を目指すことから目を背けているなら、重大な局面を繋がりかねません。そうならないよう、将来に目を向けてビジョンを描くことにもトライしてもらいたいと思います。「一緒に考えてくれる 専門家がいてくれたら。」そうお考えなら、是非StrateCutionsにお声掛け下さい。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>



なお、冒頭の写真は写真ACから モネゾウさんご提供によるものです。モネゾウ さん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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