「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第195回

新たな試みとはどんな試みか

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



オミクロン株が爆発的に蔓延しています。これほどまでに感染が広がるとピークアウトしそうなものですが、新型のオミクロン株が登場して、更なる蔓延が広がるとの予測も出ています。企業人として楽観視は危険でしょう。コロナ禍が引き続いて「ウイズコロナ」が常態となることも織り込んでおいた方が良さそうです。


ウイズコロナが常態となると、多くの企業にとって、これまでの事業を全く同じように進めるのは適当ではない可能性があります。いくつかの業種・業態では顧客・需要が大きく消失してしまいました。それほどではなくても、訪問営業が憚られる状況となって今までのような事業活動が難しくなる等の可能性があります。人との接触を避ける雰囲気から対面取引・お金のやり取りが敬遠され、ネットを通じた取引・決済が進むことで、ビジネスモデルが変化している可能性もあります。これら様々な要因から、自社のビジネスを見直す必要性が生じています。今回は、これをどのように検討するかを考えます。



「新たな試み」を幅広に捉える

コロナ禍により事業環境が大きく変化したので「新たな試みが必要だ」というと、昨年から始まった新しい補助金制度を念頭に「事業再構築だ」と考える企業・経営者も多いと思います。確かに、コロナ禍により顧客・需要が大きく消失、今後もしばらくは(企業が手元のキャッシュ等で対応できる期間を超えて)続くと考えられる場合には、従来事業の継続では自社の存続は危ういので転業などダイナミックな変革を視野に入れるのが賢明と考えられます。事業再構築補助金には転業だけでなく新分野展開なども対象なので、当該補助金を推進力に新しい取組を検討・スタートできるかもしれません。


一方で経営基盤や取引先との関係等から大きな変革は難しい、あるいは顧客・需要は減少していないが訪問営業・対面取引等が困難になったこと等の対応が必要なところ、事業再構築補助金は利用できないケースもあると考えられます。補助金で定義する事業再構築以外の取組が求められる場合があるのです。これらを合わせて今まで「新たな取組」と言っていました。事業再構築補助金の利用に留まらず、幅広に、企業の必要性に応じて「新たな試み」を考えようとの意図があってのことです。



実効性を中心に置く

これまで、いろいろな企業・経営者の皆さんをご支援してきた中で、「新たな試み」というと、新規性のこと、それも際立った新規性のことを中心に考えるケースが少なくないと感じています。


ある製造業社長は「自社製品を作ろう」と考え、「作るなら当社オリジナルのものを」、「今までなら大企業しかできないと思われたものを」と考えて新製品を企画、これを実現するために従来年商の1/4を超える額の新鋭設備を導入しました。新鋭機の操作に慣れるまで数ヶ月かかり、当社にとっては手痛い百万円尾の補修費が必要となる操作ミスを起こしたこともあります。一方で、ここでいう「新たな取組」は、このようなチャレンジである必要はありません。新規性、それも「今まで世の中になかった」という際立った新規性に重点がある訳ではないのです。


ここでいう「新たな取組」とは、これまでいろいろと経営努力を続けてきたが、結局、業績は改善しなかった。今、更なる取組が必要だ、という時に「今まで上手くいかなかった取組を再び、以前より強化して行う」のではなく、「今まで行ってこなかった取組に業績改善のきっかけがあるかもと検討・トライしてみること」を指しています。「業績が改善する、それも黒字化するとか、累積赤字を解消する、今後はキャッシュを内部留保して財務改善につながる」という実効性を重視する取組です。



ヒントを見つける

「実効性があがる新たな試みなんて、際立った新規性ある試みより難しいのではないか?」ある意味、そうでしょう。だから少なからぬ企業・経営者がその罠にはまるのです。しかし、その試みは普段でもチャレンジ性(困難性ともいえます)が高いのに、コロナ 禍によって体力が消耗している企業が採るべき策とは思えません。難しくても実効性にこだわる必要があります。


「どうやって?」商工団体や役所の情報から、参考になる成功例を見つけられるかもしれません。「中小企業白書」には、新たな試みを成功させたケースが多数掲載されています。その中に自社に参考となる例があるかもしれません。オミクロン株の蔓延が止まらず、当分はウイズコロナで事業を行う必要があると考えられます。ぜひ、実効性があがる「新たな試み」を探してみてください。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。

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なお、冒頭の写真は 写真AC から photokko さん ご提供によるものです。photokko さん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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