「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第266回

事業環境変化対応の相談相手を増やす

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



2024年の第1回となる前回、波乱で始まった今年を乗り切るために、今まで以上に事業改善に取り組むことが勧められるとお話しました。コロナ禍は中小企業どころか日本中の企業に大きな影響を及ぼしました。昨年から新型コロナウイルス感染症が第5類に分類されたことで行動制限だけでなく自粛ムードも解消した感がありますが、それでも低調さから抜け出られない企業が少なくありません。では、どうするか?「待つ」でもなく「助けを期待する」でもない、「自分の力で浮上する」ことを目指すのです。今回はこのことを深堀していきます。



金融支援から経営支援への切り替わりの波に乗る

筆者がこのようにご提案するのは、国の中小企業支援策が大きく変化したからです。コロナ禍が始まってすぐの2020年に政府は政府系金融機関が中小企業に融資するコロナ特別貸出や、民間金融機関が行う融資をバックアップするコロナ特別保証を設けました。倒産件数が平時よりも低水準に抑え込まれるほど、手厚い支援だったのです。


しかしこれら制度は総じて2022年に制度終了となる一方で中小企業活性化パッケージが発表になりました(9月には改訂版となる中小企業活性化パッケージNEXT(以下「活性化パッケージ」と言います)も発表されました)。活性化パッケージでは金融支援と経営支援の2つの柱が掲げられていたところ、最近の動向からは経営支援(中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジの総合的支援)に軸足が移りつつあると感じられます。


これは中小企業にとって何を意味するか?「いつかまた手厚い金融支援があるだろう」とか「金融機関は『我が社の倒産に追いやった』と言われるのは嫌だろう」と考え、「そのうち始まるはずの手厚い金融支援を待っておけば良い」という姿勢でいるのは危険だと考えられます。もちろん、今後にコロナ禍に匹敵するような経済変動(悪化)があれば手厚い支援策が行われるだろうことは否定しません。しかしもしそれを利用して資金調達できたとしても、我が社が生き残る可能性はドンドンと小さくなっていくと考えられます。自社が生き残る可能性を高めるには、自ら事業改善するのが最も確実な道です。



事業環境変化による影響と相談相手の重要性

「事業改善しろというが、それはもう取り組んだ。しかし以前に成果の出た策を強化しても今は出ない。だから金融支援策を待つしかないのだ。」多くの企業がその思いをお持ちでしょう。高度成長時代が過ぎ去りバブルが崩壊した1990年代前半以降「失われた30年」と呼ばれるほど景気が低調な時期が続きました。金融危機やITバブル崩壊、リーマン・ショックなどのメガトン級の景気悪化に見舞われたこともあります。現在に事業を行っている企業の多くは、これら不景気を乗り越えてきた企業です。1度ならず2度、3度と不景気に襲われても、取組を強化して乗り越えてきました。しかし現在、その方法では乗り越えられなくなってしまっているのです。


こうなった理由の主な理由として、事業環境が大きく変化したことが挙げられるでしょう。近隣にあった大企業がコロナ禍に対応して遠隔勤務を取り入れたので顧客がめっきり減ってしまった飲食店もあれば、主要顧客だった大企業がSDGs対応のため仕入商品を大きくシフトしてしまい取引が激減した企業もあります。メイン取引先が生産量を抑えてしまい損益分岐点を下回る売上しかあげられなくなった下請企業もあります。このような企業は、今までの策で起死回生を図ることは難しいと言わざるを得ません。いくら強化しても、です。


このような状況で、中小企業はどうすれば道を切り拓いていけるのか?変化が必要ですが、どのように変化してゆけば良いのか、自分一人では良いアイデアが浮かばないことが多いでしょう。そんな時も、誰かと相談すると良いアイデアが浮かぶ可能性があります。相手がたまたま知っていたトリビアがヒントになる場合もあるでしょう。第三者と話すことで視点を切り替え、今まで見てきたことから新たな気付きを得られるかも知れません。


では誰が、中小企業が頼りにできる相談相手になるのか?このコラムはこれまで顧問税理士などの専門家に相談相手になってもらいたいとの想いで発行してきました。本年はそれにプラスして地域金融機関の顧客担当者にも、このような支援者になってもらいたいと考えています。その方法等に関する記事も発行しますので、乞うご期待。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>




なお、冒頭の写真は 写真AC から まぽ さんご提供によるものです。まぽ さん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

同じカテゴリのコラム

おすすめコンテンツ

商品・サービスのビジネスデータベース

bizDB

あなたのビジネスを「円滑にする・強化する・飛躍させる」商品・サービスが見つかるコンテンツ

新聞社が教える

プレスリリースの書き方

記者はどのような視点でプレスリリースに目を通し、新聞に掲載するまでに至るのでしょうか? 新聞社の目線で、プレスリリースの書き方をお教えします。

広報機能を強化しませんか?

広報(Public Relations)とは?

広報は、企業と社会の良好な関係を築くための継続的なコミュニケーション活動です。広報の役割や位置づけ、広報部門の設置から強化まで、幅広く解説します。