「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第141回

事業性評価相談センター創設を要望します

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



とうとう2020年の師走に入りました。コロナ禍はほぼ1年間、世間を騒がし続け、自粛が始まった3月から今に至るまで、経済活動に大きな影を落としています。特に、体力を消耗し尽くしながらも年末需要に期待していた飲食業などのサービス業に従事する皆さんにとっては、試練の年末となりました。

中小企業団体によるアンケート等によると、これまでに行った資金調達のおかげで多くの企業は何とか年末を乗り越えていけるとのこと。一方で、少なからぬ企業が資金調達の必要がありながらも、春夏と違って今回は融資に応じてもらえず、困惑しているようです。このような企業・経営者は相談する先もなく、大変困っていると聞きます。このような企業の相談相手となり、資金調達の道を拓ける相談ができる存在として、事業性評価相談センターの創設を要望します。




「事業性評価」に眼を向けさせる

「年末の資金調達が難しくなってきた」との声が強くなってきたことを、以前にもお伝えしました。コロナ特別貸付やコロナ特別保証によって春・夏に資金調達し、ここに来て2回目を申し込んだ企業は、「以前ほど色よい返事がもらえない」と驚いているようです。が、驚くに当たりません。このような企業は長く続いた不況のためキャッシュが流出してバランスシートが弱ってしまったので、金融機関からの支援が受けにくくなっているのです。金融検査マニュアルは廃止されたものの、事実上まだ「モニタリング・信用格付」ロジックで融資を判断している民間金融機関はもちろん、コロナ特別貸付を行う日本政策金融公庫をはじめとした政府系金融機関も、コロナ特別保証を行っている信用保証協会も、バランスシートが弱った企業に金融支援を行うのは難しいのです。


その中で政府が、コロナ特別資本性劣後ローンを準備していることも、以前にお伝えしました。これは、期日まで分割返済しなくて良い、中小企業の資金繰りを大きく改善する資金支援です。また、この制度にはもう一つ、「事業性評価により審査する融資」という特徴もあります。今の時期、事業性を評価しなければ金融機関としても支援が困難なので、今の時期にはピッタリの融資制度と言えるでしょう。


実際、知り合いの公庫関係者に話を聞くと、コロナ特別資本性劣後ローンは、今の時期における資金調達の切り札なので積極的に利用してもらいたいと願っているのに、思ったほど利用が伸びていないそうです。中小企業にあまり知られていないことが理由なのでしょうか?それならコロナ特別貸付において事業性評価を依頼するという方法もあると思われます。しっかりと相談すれば、日本公庫や商工中金に応じてもらえるでしょう。これらの金融機関は普段から事業性評価に慣れているからです。


同様の話は、民間金融機関からも聞くことがあります。全ての金融機関が「事業性評価を申し込んでくれたら応じる」と答えた訳ではありませんが、少なからぬ民間金融機関が「資金繰り表をはじめとして、今後の事業の見込みを説明してくれたら検討を始められる。それらがなければ、『検討できる』というのも難しい状況なのだ」と言っていました。こじ開けられそうなドアは、まだ残っているらしい、といった状況でしょうか。但し、そのことも多くの中小企業には知られていないのです。




事業性評価相談センターの創設を

窮地に陥っている中小企業に、まだ門戸を開ける道が残っているのに、それが知られていない現状を改善してもらいたいと思います。中小企業にとってアクセスしやすい、そしてワンストップで結論を出したり、それは難しいにしても関係者のネットワークを形成できる存在を相談窓口とするのが適切だと考えられます。


「金融機関に頼る一方で、中小企業も情報開示したり、経費節減・売上拡大策を検討するなど事業性評価を受ける準備をして欲しい」とフランクに言えることも、ポイントでしょう。これらを総合すると信用保証協会がベストな存在ではないかと考えられます。信用保証協会は、平成30年4月の制度見直しで金融機関と連携する存在であり、同じ政策機関ということで日本公庫・商工中金とも相談できるでしょう。そして、自らが事業性評価できる情報を提供するように、中小企業に依頼する適任者でもあるのです。


コロナ禍がここまで猛威を振るうとは、誰も考えられませんでした。これに対処するには、今までになかった方法を実現するしかありません。今、生き残りを真剣に考える中小企業は適切な相談相手を求めています。信用保証協会に「事業性評価相談センター」を設けるよう、切に要望する次第です。







<本コラムの印刷版を用意しています>

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


なお、冒頭の写真は写真ACから まぽ (S-cait)さんご提供によるものです。まぽ (S-cait)さん、どうもありがとうございました。






 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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