「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第26回

IT導入補助金経営計画書を活用する

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
6月30日でもって、IT導入補助金の申請が締め切られました。本コラムの読者の皆さんの中にも、申し込みされた方が多いのではないでしょうか?

過当競争化する補助金申請については「もう少しなんとかならないだろうか」と感想を持たないわけではありませんが、そこで作成されるよう求められる申請書(経営計画書)については、「とても良く考えられたものだな」と感じています。補助金の申請書(計画書)は、審査する役所が「この計画には補助を出そう」と判断するための書類ではありますが、作成した中小企業にとっても、メリットがあるからです。「計画書に記載したことにしっかりと取り組むことで、経営をしっかりと改善していく」ことができるからです。


IT導入補助金の経営計画書

IT導入補助金で求められる計画書は、「ITを導入していかに生産性を高めるか」にフォーカスしています。IT導入補助金の申請書(経営計画書)は、「事業概要」から「事業改善についてのこれまでの取組み」、「事業の市場における強み・弱み」、「事業課題」、「将来計画」、そして「IT導入により実現したい効果」までを検討した上で、「労働生産性の向上」と、それに関連した「その他の独自の参考指標」を明らかにするよう、促すものでした。

この流れに沿って考えることで、我が社の現在や過去の実績を踏まえた上で、「もう少しパフォーマンスを向上させたい」の実現を阻んでいる弱みや、活かしきれていない強みを明らかにすることができました。次に、それら項目の中で早急に取り組みたい課題を決め、その解決方法としてITをどのように活用していくかを検討した上で、将来の成果を予想したのです。


事業性評価融資での情報提供

我が社の事業性を評価してもらうことで資金調達したいと考える企業は、金融機関に対して、情報提供しなければなりません。「我が社には、どんな可能性があるか」を説明するのです。それはつまり、我が社がいかにうまく事業を展開することができるか、いかにパフォーマンスをあげて収益につなげることができるかなどに関する説明です。

こういう視点でIT導入補助金の申請書(経営計画書)を見ると、その内容は、事業性評価による資金調達で金融機関に伝えたい情報のほとんどを網羅していることに気が付きます。これを活用しない手はありません。


メリットを強化する方法

ここでもう一つ、貴社の事業にも、事業性評価融資を受ける上でもメリットを強化できる方法について、お勧めしたいと思います。

ITは、生産性向上の切り札になりますが、ITを導入したら自然と生産性が高まるというものではありません。ITを導入して定型業務の作業量が減ったとしても、それを何か生産的な仕事に振り向けなければ生産性は高まらないでしょう。営業マンで顧客情報を共有すれば売上が高まるだろうと情報共有システムを導入しても、活用しなければ何のメリットもありません。在庫管理システムのように、活用するためには自ら準備作業を行わなければならないものもあります。

これまでいろいろな企業をご支援してきた経験からすると、計画を策定して業況改善に努力したいと考える企業はまだまだ少ないので、「経営計画」を提示すれば金融機関は「おっ、この企業は違うな」と思ってくれる可能性があります。アクションプランまで作成する企業はさらに少ないので、「おっ、この企業は本気かな」と考えてくれるかもしれません。


IT導入補助金が採択されて「これで1/3の負担でITシステムが導入できた、ラッキー」と考えるだけに留まるのは、実は大変、もったいないことではないかと思います。活用してこそ、企業の体質改善に繋がるのです。それを行う上で、IT活用に係るアクションプランはとても役に立ちます。アクションプランは、もうひとつ、貴社の事業性を評価してもらう上でも、とても力強い題材となります。IT導入補助金を申請された企業の皆さんには、是非、これに取り組んでいただければと思っています。

 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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