「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第242回

利き腕は事業改善

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



前回、2023年は「事業改善と資金繰りの両利き経営を目指す」ことをお勧めしました。「今年こそは早々に景気が上向いて欲しい」との願いが叶いそうにない中、景気が上向くまで待つ姿勢ではなく「将来は自ら切り拓く」との姿勢でもって経営に取り組んでいく場合には、事業改善と資金繰りの両面に配慮することが必要なのです。今回は、これらのうち「事業改善」を利き手にしていくことについて考えていきたいと思います。



資金調達のチャンスを活かす

1月10日から始まった「コロナ借換保証(民間ゼロゼロ融資等の返済負担軽減のための保証制度)」について、中小企業サイドでも金融機関サイドでも関心が高まっています。インターネットからは、多くの専門家から中小企業向けのセミナー等の案内が寄せられています。また、金融機関の中にはゼロゼロ融資を利用した顧客に対してコロナ借換保証を利用した据置期間の延長等の必要はないか、打診しているものがあるようです。


「地域(サプライチェーン)における責務を果たすためにも、コロナ禍や戦禍など一時的な悪環境に負けることなく存続を目指したい。そのためには危機を乗り越える資金繰りの確保が必要」と考える企業に是非、活用してもらい、企業の存続を実現してもらいたいと考えています。



本来なら難しい「金融支援」を引き出す

このように申すと「事業改善は、資金繰り措置の要件として求められたので行うもの」とお考えの経営者もおられるかもしれません。コロナ借換保証制度が創設されず、利用できるチャンスが訪れなかったら「経営行動計画書などを策定して事業改善に努めようとの気持ちにはならなかった」という経営者は少なくないでしょう。


しかし、ものごとの順序は逆だと思います。事業改善に努める企業に、資金調達の門戸が開かれます。それはなぜか?コロナ借換保証を利用できるとは、新型コロナウイルス感染症により大きく売上が減少したのでゼロゼロ融資を活用して資金調達したにもかかわらず、現在も前年あるいはコロナ禍以前と比べて売上が5%あるいは10%減少している企業です。赤字、それも2期以上連続赤字という企業も少なくないでしょう。借入して売上・利益が戻っていないとは、自己資本の減少が発生しており、債務超過に陥っている企業もあると考えられます。


そのような企業について金融機関は普通、融資による支援を行うことに多大なる困難を感じます。統計的にみて、そのような企業は破綻する可能性が高いからです。預金者から預かった、与信機能や決済機能を滞りなく果たさなければならない重い責務を負った、そして現在は低金利なので自らの収益も薄く、多額の準備金を積むことが難しい時代にある金融機関としては、貸倒のリスクを負うことに大きな抵抗を感じます。信用保証協会の信用保証により80%もしくは100%の補てんがあったとしても、その思いを払しょくするのは困難です。立場は違えど、信用保証を行う信用保証協会にしても、貸倒のリスクが高い案件に保証をしたいとは思いません。


財務指標等から判断すると「貸倒リスクが高い」と言わざるを得ない企業について、どう考えれば信用保証協会が信用保証を応諾することができ、金融機関が伴走支援を行いながら融資を行うことができるか?それが「企業は自ら事業計画を立てて経営改善に努力している」ことです。それも「借入のために計画を立てた」というより「それ以前から計画を立てていた(実行中である)」という方が望ましいと感じます。


もし借入に際して計画を立てることにしたにしても「要件を形式上、満たすために立てる」企業よりも「これを機に、事業改善に打ち込む決意を固めるために立てる」企業を応援したくなるに決まっています。そのような企業になるのです。



自社にマッチした計画を策定する

資金調達のために事業計画が必要だとなると「これが融資を得た計画だ。真似すればよい」などの記事等を見かけますが、それは特に現在、お勧めできません。必要なのは「あなたの会社にマッチした、あなたの会社を立て直せる計画」です。自社と事業環境を真剣に分析して、成果を出せる計画の策定を目指して下さい。「気持ちはやまやまだが、一人では難しい。誰か相談できないか」と思われるなら、地域の「よろず支援拠点」などにご相談ください。StrateCutionsでもご相談に乗っています。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>





なお、冒頭の写真は 写真AC から acworks さんご提供によるものです。acworks さん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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