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第245回

ウイズコロナ時代に出口戦略を考える

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



先週月曜日(23年3月13日)は一つの区切りだったと感じています。2020年春にコロナ禍が始まって以来、多少の変化があったものの事実上強制されていたマスクの使用が、原則として個人の判断に任されるようになったのです。街でも、マスクを外す人が徐々に増えていると報じられています。


一方で、これはコロナ禍が完全に消え去ったからではありません。新型コロナウイルスの感染力や、感染による重篤化が軽減したと考えられるようになったので「政府や自治体が強制・要請するほどではなくなった」という意味であり、ウイズコロナの時代が本格的にスタートしたと言えそうです。今回は、この意味について考えてみたいと思います。



「元に戻った」と言えるのか

「ウイズコロナ時代」とは、いかなる時代か?「コロナ前の、制約がなかった時代」と理解しておられる経営者もおられるかもしれません。しかし、その理解で大丈夫でしょうか?もしそうなら「ビフォーコロナへの回帰」として表現されるはずでしょう。


わざわざ「ウイズコロナ」と表現するのは、2019年以前には戻っていないことを意味しています。現在は、約3年も続いた休業要請・自粛に疲れ(娯楽等が少なくなって「飽きた」状況)や疲弊(特に産業・企業において業況不振や体質棄損が進んだこと)が顕著になっている中、第8波が落ち着いた後に次の山が訪れていないこと、そもそも第8波において重症化や死亡に至る例が少なかったことなどを理由に「事業活動やイベント等についての休業や自粛等の要請は行わない」と判断されている状況に過ぎません。次に来る変異株で危険度が高まれば、また休業等や自粛が要請される可能性は払しょくされないのです。


もう一つ、この約3年間で世の中が大きく変わったことも挙げられます。あるビジネス街では多くの企業がテレワークを推進したため昼間人口が大幅に減少しました。この影響を受けて駅前の飲食店が顕著に減少してしまい、更にはそれらを相手にしていた食料品店や酒店等も苦境に陥っています。回り回ると、影響を受けていない業種業態はほとんどないと言えるのではないでしょうか。



「自分が変わってしまったこと」に対応する

このように言うと「確かに事業環境が大きく変わってしまった企業もあるだろう。しかし我が企業を取り巻く事業環境は大して変化していない。近隣の風景も変わらなければ、取引先などにも変化がない。だから今指摘されたような本質的な事業環境変化は生じておらず、これからはもっと昔の姿に戻っていくばかりだ。復旧するのだ」とお考えの経営者はいるかもしれません。


しかし、もう一つ考えなければならない要素があります。長く続いたコロナ禍を持ち堪えてきたことにより、自社の体質が大きく変わってしまった可能性があることです。


特にコロナ特別貸付・特別保証を利用して倒産の危機を乗り越えたが、未だに売上が元に戻らず、キャッシュフローが回らなくて借り換えをしなければならない状況にある企業は、決算書で表現される財務体質が悪化している可能性があります。企業としては、自社はあまり変わっていないと感じていたとしても、支援する側にある金融機関からすると「あの会社に、今まで通り支援するのは難しい」と感じる状況になっているかもしれません。


自社の体質はあまりコロナ禍とは関係ないように思えますが、今指摘した「いまだかつてない財務体質の劣化」の原因の一端がコロナ特別貸付・特別保証にあることを考えると「ウイズコロナ時代の課題」に含めて考える必要があると思います。平成10年の金融危機から中小企業を守る金融安定化特別保証や、平成20年の原油・原材料価格高騰に対応した緊急保証により同様の状況が発生しましたが、今回コロナ対応の時ほどではありませんでした。


にもかかわらず前回の緊急保証後は調達資金で賄える期間中に回復できなかったためリスケジュールを依頼、その後は真綿で縛られた状況から抜け出せない企業がありました。今回のコロナ禍では、そのような現象を防ぐため「出口戦略(中小企業活性化パッケージ)」が策定され、自助努力を支援する態勢が整えられています。


「自助努力が必要なことは理解しているが、一人では難しい。誰かと相談したい」と思われるなら、地域の「よろず支援拠点」あるいは取引金融機関などにご相談ください。StrateCutionsでもご相談に乗っています。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


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なお、冒頭の写真は 写真AC から kimadora さんご提供によるものです。 kimadora さん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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