「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第203回

金融支援の活用について

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



3月21日で「まんえん防止法」指定が解除されたことで、コロナ禍の影響を受けた社会が新しいフェイズに入ったと感じられます。コロナ禍が「収束した」と言えるほどの収まりを見せていない中での解除は「ウイズコロナ社会・生活のスタート宣言」とも受け止められるのではないでしょうか?コロナ禍のない状況に戻ることを期待したのでは社会・生活の営みに支障が出てしまうので、コロナと共存しながら社会・生活を回せるようにするのです。これはすなわち、以前とは違う状況への対応を考える必要があること、つまりは「知恵を出す」ことが求められると解釈できます。


この流れは中小企業支援にも現れています。政府が3月4日「中小企業活性化パッケージ(以下、「活性化パッケージ」ということがあります。)」を発表したからです。

https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220304006/20220304006.html

そこでは金融支援は当面の間(コロナ特別貸付は6月末まで。経過後に終了との含みがあると考えられますが、ウクライナ・ロシア情勢や東北地域を中心とした地震等により延長される可能性もあると考えられます)継続された後に終了し、じ後は経営支援に軸足が移ると示唆されています。この状況への対応を、考えてみましょう。



金融支援の最大活用?

このような情報を目にすると「コロナ禍を理由に有利な条件で借りられるのは6月までだと。信用保証を利用したコロナ禍対策金融支援は『伴走支援型特別保証』等となり経営活動計画書が求められるなどで面倒くさい。それが必要ないコロナ特別貸付が存在する間に、借りられるだけ借りておこう」とお考えの経営者がおられるかもしれません。しかし筆者は、その目論見が通用するのは限られた企業ではないかと考えています。


筆者は、この時期にコロナ特別貸付を利用できる主な層として想定されているのは、伴走支援型特別保証で必要となる経営活動計画書を求める必要のない企業だと考えています。つまり、既に事業改善計画書等を策定・実行中で成果を出しつつある企業や、社内留保が厚い一方でコロナ禍によるダメージも軽微なので、今の難局は「資金繰り対策だけ」で乗り越えられるだろう企業です。このような企業ならば「コロナ特別貸付が行われている間に手元資金を積み増しておきたい」という要望に応えて金融支援を受けられる可能性があると考えられます。


一方で、これらに該当しない企業、つまり今の難局を乗り越えるには事業改善等が必要と考えられるが未だ事業改善計画書等を策定・実行していない企業がコロナ特別融資でふんだんに資金をキープしようとしても、応じてもらえない可能性が高いのではないかと考えられます。



抜け道よりも王道を通りましょう

このようにご説明すると「とはいえ何か抜け道はないか?」と尋ねる経営者の方がおられます。確かに今は先が見えない状況なので手元資金を準備できた方が安心ですが、特に既にコロナ特別貸付・コロナ特別保証を既に利用して資金調達できたが長らく続くコロナ禍のため再び資金が不足気味になっている企業については、筆者は「抜け道はないようです。それに、抜け道を探さない方が御社の身のためだと考えられます」とお伝えしています。このタイミングで事業改善等に取り組まず、「手元資金さえあれば大丈夫」との姿勢で借入金を増やすのは、時に企業を危険にさらす可能性が高いと考えているからです。借りた当初は一息つけますが、長い目で見ると利益を生み出せず資金繰りに窮する一方、その時は過大な債務が障害となり資金調達できない可能性があります。


それより事業そのものを盛り立てて売上・利益を増やし資金の流出を抑える方が、長い目で見れば企業にとってメリットがあります。事業改善計画書等を策定して実行していくのです。今までの事業形態等を大きく切り替える「事業再構築」を目指すことができる企業なら、令和4年度も継続される事業再構築補助金を利用しながら取組を進めていける可能性もあります。まずは事業改善・事業再構築の計画策定・実行を先行させましょう。


「その過程で資金が不足した時はどうする?」事業計画書も作成済みで実行して成果もあげつつある中での申し込みなら、その時々で用意されている貸付・保証制度の利用を申し込むと、検討してもらえる可能性が高いと考えられます。あるいは経営活動計画書に整え直して伴走支援型特別保証を申し込む方法も考えられます。「分かった。事業改善を考えたいが、一人では難しい」と思われるなら、地域の「よろず支援拠点」などにご相談ください。StrateCutionsでもご相談に乗っています。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。

<印刷版のダウンロードはこちらから>




なお、冒頭の写真は 写真AC から bBear さんご提供によるものです。bBear さん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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