「ネタバレ」は法律的にも許されない!?
はじめに
ネタバレ、されたことありますか?
筆者は我が子から「これはネタバレなんだけど・・・」と宣言された上でネタバレされることが間々あります。日曜朝の子ども向けアニメは気にならずとも、最近流行りの転生系アニメのネタバレはちょっと残念です。
我が子でも辛いのに、見ず知らずのネット民にネタバレされたら、もっと嫌な気持ちになりますよね。
さて、ネット上に散見されるネタバレ行為について、著作権的に考えてみたいと思います。
ネットにマンガをそのまま掲載する、ネタバレ
ネタバレではなく、モロバレですね(汗)。
原作マンガの無許可コピーは複製権侵害にあたりますし、こういった複製物をインターネット上に掲載することは、公衆送信権の侵害にもなります。大規模な海賊版の漫画ビューアサイトの運営者に高額の判決が出たのも記憶に新しいと思います。
また、令和3年からは、閲覧する側も、それが海賊版と知りながらダウンロードする行為は、私的使用目的の複製とは言えず、侵害となりました。
マンガの原作者に敬意を表して、海賊版に触れることなくマンガを楽しんで欲しいと思います。
数コマ+文字による、ネタバレ
さて、原作マンガの数コマをインターネット上にアップしながら、解説を加えていくパターンは如何でしょうか?
軽微なものであれば「引用」と言えるかもしれません。しかし、引用と言えるためには、発信する内容が「主」であり、原作が「従」の関係となることなど、色々な要件をクリアする必要があります(「引用」について詳細はコチラ)。
この点について、原作マンガの数コマを用いて、原作マンガに表現されたストーリーを文字に起こしたことが争われた事案があります(令和2年(ワ)第26867号 発信者情報開示請求事件)。
この事件では、「本件漫画のほぼ全ての台詞をそのまま抜き出すとともに,絵で描かれている情景や登場人物の名前を文字に起こしており,本件記事は,本件漫画と実質的に同一のものといえ,又,本件漫画のコマ部分をデッドコピーしたものであり,本件記事のアップロードによって原告の著作権(複製権,公衆送信権)が侵害された」として、引用にはあたらず、複製権、公衆送信権の侵害にあたると判断しています。
文字のみによる、ネタバレ
1コマも掲載せず、文字のみでマンガのストーリーを表現する場合はどうでしょうか?
もちろん、感想を述べる程度であれば、まず問題はありません。
他にも、例えば「バスケがしたいです…」とか「じゃあなみんなー!! 死んだらまた会おうなー!!」といった、ストーリーのネタバレとはいえ、セリフのみをコピーすることについても、セリフには著作物性が無い場合が多く特に問題は無いでしょう。また、「城之内 死す」と言った、各話のタイトルにあらわれたネタバレをコピーしても、タイトルにも著作物性が無いことから、問題ないでしょう。
しかし、セリフやストーリーを端的に述べるだけでなく、原作マンガに表現されたストーリーに依拠して文字に起こし、原作マンガに触れずとも、原作マンガに表現されたストーリーを直接感得できるような場合には、先に示した裁判例と同じく、もはや引用とは言えず、翻案権や公衆送信権の侵害になると考えられます。
口頭による、ネタバレ
原作マンガに表現された著作物の内容をそっくりそのまま口頭で伝える場合には、口述権の問題があります。しかし、少数の友達とか仲間内の会話においては、マンガのストーリーをそのまま会話で伝えた場合であっても、私的使用目的の複製といえます。冒頭で述べた、我が子からのネタバレも法律上はセーフですね。
しかし、これをポッドキャストとか音声SNSで伝える場合には、私的使用目的の複製とはいえず、口述権のみならず、複製権、翻案権、公衆送信権などの侵害となる可能性が高いです。
ネタバレと著作権
まとめになりますが、個人的には著作権侵害とかネタバレの問題については、著作者や著作物に対してリスペクトがあるかどうか!?と思っています。
大好きなマンガを広めるにあたり、ネタバレにならない程度に上手く楽しく布教できれば、原作マンガの売り上げも伸びて、連載が長く続く方向に働くでしょう。一方、原作マンガを買わなくても分かるくらいに内容を広めてしまうと、著作権侵害となる可能性も高く、原作マンガの売れ行きにも影響して、連載が終わってしまうかもしれません。
また、個人間で行うネタバレであっても、ストーリーの重要な部分を伝えることは、法律上は問題なくても友達関係に問題を生じる可能性があるので、勢い余ってネタバレすることなく、マンガやアニメを楽しみたいですね。
令和6年度 日本弁理士会著作権委員会委員
弁理士 山本 雅之
※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。
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