著作者人格権ってどんな権利?著作権とはどう違うの?
著作者人格権はどの様な点が著作権と異なるのでしょうか?
著作権とは、財産権であり、著作者が経済的な利益を得る機会を保障するためのものです。つまり、著作権を売ったり買ったり等することで、金銭に変えることができます。著作者人格権は、財産権ではなく、著作者の人格的な利益を保護するための権利、つまり、名誉や感情等を保護するための権利です。この様な違いから、著作権の内容と、著作者人格権の内容は違います。
著作者人格権侵害となる行為(権利)としては、以下の(1)~(3)があります。
(1)氏名表示権の内容
著作者が自分の著作物に対して、著作者名を表示するかどうか、表示するとしたらどの様な名前を表示するかを決定する権利です。自己の著作物について、例えば、自分ではない人の名前が著作者として記載されていたら、著作者は大変嫌な気持ちになると思います。また、本当は自分が著作者であることを秘めていたかったのに、著作者として記載されてしまうことも、著作者は嫌な気持ちになるのではないでしょうか。本名ではなく、ペンネームや雅号等を記載したかったのに、本名が記載されてしまっても、嫌な気持ちになると思います。この様な著作者を嫌な気持ちにさせる様な行為をすると氏名表示権侵害となります。
(2)公表権の内容
著作者がまだ公表されていない自己の著作物を無断で公表されない権利です。
世に出すつもりもなく創作した著作物が勝手に公表されると、著作者に不快感を与えることがあり、作品(著作物)をどの様なタイミングや方法で公表するかで、作品の評価が変わるため、公表権が定められています。
(3)同一性保持権の内容
著作者が著作物の内容とタイトルを、意に反して(意に沿わないのに)無断で改変されない権利です。著作物の内容やタイトルが無断で改変されると、著作者が伝えたかった思想・感情が歪められてしまい、著作者が不快に感じたり、得られるはずであった社会的評価が得られなくなる場合があるので、同一性保持権が定められています。
著作者の意に反するかどうか(意に沿っているかどうか)で、同一性保持権侵害となる改変かどうかが決まります。このため、改変によってむしろ著作物の内容等が良くなり、社会的評価が向上する場合でも、その改変が著作者の意に沿っていなければ、同一性保持権侵害となります。
写真の編集、トリミングに関する著作者人格権の詳細は、「写真の編集、トリミングで注意すべき著作権の問題点」をご覧ください。
著作者人格権侵害となる3つの行為について記載致しましたが、他に、著作者の名誉又は声望を害する方法で著作物を利用する行為は、著作者人格権侵害とみなされます。例えば、芸術作品である裸婦の絵画を複製して、風俗店の看板に利用する行為は、著作者人格権侵害とみなされます。
著作者人格権侵害の紛争を避けるためには
著作者人格権は、著作者の名誉や感情等を保護するための権利であるため、著作者人格権を他人に譲渡することができず、著作者の死後は、相続の対象ともならず消滅します。著作者人格権は譲渡できないと、実務上困ることが出てきます。従って、実務上では、著作者人格権を行使しない、という契約をします。
著作者人格権の不行使についての詳細は、「著作者人格権の不行使条項について」をご覧ください。
なお、著作者人格権は、著作者の死後は消滅すると記載しましたが、著作者の死後も著作者が生きていたならば著作者人格権侵害となる行為をしてはならず、この様な行為について、遺族等が行為を差し止めるよう請求(差止請求)を行うことができる点も注意が必要です。
令和2年度 日本弁理士会著作権委員会委員
弁理士 竹口 美穂
※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。
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