注目判例・法改正・書評

電子漫画ってタダで大丈夫なの ―「著作権法違反」になる場合―

弁理士の著作権情報室

漫画にお金払ってますか?


「無料で漫画読めるサイト便利だよね」
「家で無料で楽しめるから、雑誌買わなくていいしね」

最近は本屋に行かなくても、スマートホンなどで気楽に漫画を楽しむことができます。無料で漫画を楽しめるサイトを利用して、このような漫画の楽しみ方している人は沢山いますね。
確かに、好きな漫画を無料でどこでも読むことができるなんて夢のようです。
しかし、なぜ本屋では有料で売っている漫画を無料で読むことができるのでしょうか。
不思議ですね。

漫画村運営者逮捕


2019年9月、「漫画村」の運営者が著作権法違反(公衆送信権の侵害など)の疑いで逮捕されました。2019年11月には有罪判決が言い渡されています。
「漫画村」は、2016年に「登録不要」「完全無料」の漫画サイトとして開設され、違法コピーされた書籍をインターネット上で誰でも無料で読むことができるサイトとして人気を集めました。しかし、著作権者の許可なく著作物(全般)をインターネット上にアップロードすることは違法です。

単なる読者だから大丈夫?


 運営者でなく個人のユーザーであれば大丈夫でしょうか。音楽や映像を、違法にアップロードされたことを知りながら個人的に使用する目的でダウンロードすることも違法になります。

「でも、漫画は音楽でも映像でもないから、サイトで漫画を楽しんでいただけの僕たちは何も悪くないよね」
「関係ないない。大丈夫」

残念ながら違います。違法にアップロードされた漫画を読む行為、これからは大丈夫でなくなる場合があります。著作権法が改正になり
「違法にアップロードされた著作物(漫画・書籍・論文・コンピュータプログラムなど)を違法にアップロードされたものだと知りながらダウンロードすること」
は、一定の要件の下で著作権法違反となります。(令和3年1月1日施行予定)
 違法にアップロードされた著作物のダウンロード規制(私的使用であっても違法とする)について、対象を音楽・映像から著作物全般に拡大したものです。

私たちはどうなるの?


では、もし著作権法違反をしてしまったら、私たちはどのような責任をとらなければならないのでしょうか。
まず、著作権の権利者としては著作権侵害をした者に対して、民事上の責任として差止請求や損害賠償請求等を求めることができます。差止請求とは、著作権侵害の停止や予防を求めることです。損害賠償請求は、権利者が受けた損害を賠償するよう求めることです。また、民事上の請求として権利者が謝罪広告の掲載等名誉回復等の措置を求めることもあります。

でも漫画を無料でダウンロードしただけだったら、そんなに高額でもないだろうし、見つかるまで楽しんだ方がお得かもしれない。怒られたら止めればいいかも?

いえいえ、刑事罰に問われることもあります。
「違法にアップロードされた著作物全般で正規版が有償で提供されているもの」を「違法にアップロードされたことを知りながらダウンロード」する行為を「継続的に又は反復して行う場合」には、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金、またはこれを併科されることになります。これは親告罪ですので、権利者の告訴が必要です。
 

日本の漫画文化をみんなで守りましょう


漫画村では約3000億円分の出版物がタダ読みされ、漫画家や出版社の売り上げが約20%減少したとの試算があるそうです。
漫画は世界に誇る日本の文化です。
しかし、漫画家の収入が減り生活ができなくなってしまったら、漫画家は廃業になってしまいます。そうすると日本の漫画文化は衰退していきます。
漫画家が心血を注いで生み出した作品を楽しむときには正当な対価を支払わなければなりません。

令和2年度 日本弁理士会著作権委員会委員

弁理士 松田 光代

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

※ 著作権に関するご相談はお近くの弁理士まで(相談費用は事前にご確認ください)。
また、日本弁理士会各地域会の無料相談窓口でも相談を受け付けます。以下のHPからお申込みください。

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