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日常生活の著作権

スクリーンショット(スクショ)って自由にしてよいの?

弁理士の著作権情報室

著作権者の許可をもらうのが原則


コンピュータ画面上に表示された他人の著作物の全部または一部を画像にして保存するスクリーンショットいわゆるスクショをする場合には、その著作物の著作権者の許可をもらうのが原則です。これは「複製権」という著作権との関係で問題になるからです。

スクリーンショット(スクショ)って自由にしてよいの?

でも私的使用の目的でのスクショ(複製)の場合は著作権者の許可がいらないのでは?


確かに令和2年までは、個人的に又は家庭内など限られた範囲内での使用という私的使用の目的での他人の著作物のスクショの場合は、著作権者の許可はいりませんでした。
このようないわゆるプライベート・ユースの範囲のスクショについては、著作権を制限しても著作権者の経済的な利益は害しないと思われることから、このような制限規定が設けられていたのです。

「令和2年通常国会著作権法改正」での私的使用の目的でのスクショの取り扱いは?



今回の「令和2年通常国会 著作権法改正」で、例え私的使用の目的であっても、一定のスクショの場合は、この著作権の制限規定の対象から外されて禁止されることになりました。

著作権法上適法にアップロードされた著作物についてスクショするのは?


著作権法上適法にアップロードされた著作物については、私的使用の目的でのスクショであれば、今回の法改正においても今までと同じように著作権の制限規定の対象であり、原則違法とはなりません。
但し、従来もそうでしたが、他人の著作物の一部を切り取ってスクショするような場合は、スクショの仕方によっては、著作者の人格権を守るために設けられている、自分の著作物を勝手に変更・切除等されないという権利である同一性保持権の侵害になる可能性はあります。

著作権法上違法にアップロードされた著作物についてスクショする場合は?


例え私的使用の目的の場合であったとしても、以下の3つの要件を満たすスクショについては、令和3年からは原則違法となります。
・違法にアップロードされた著作物(国外も含めて)を
・違法にアップロードされたことを知りながら、
・その著作物を受信してスクショする場合
従って、今回の改正では,違法にアップロードされたことが確実であると知りながら行うスクショのみが違法となるのであり,①アップロードが適法か違法か分からない場合や,②例えば適法な引用だと誤解した場合等,アップロードが適法に行われたものだと誤解した場合には,これらのスクショは違法とはなりません。国民の正当な情報収集等が萎縮しないようにするためです。

違法にアップロードされた著作物についてそれを知ってのスクショでも違法とならない場合とは?


・スクショが軽微なものの場合
違法にアップロードされた著作物をアップロードが違法だと知りながらスクショする場合でも、その著作物の全体のうちスクショされる部分の占める割合、自動公衆送信される際の当該部分の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものの場合には違法になりません。
従って、画質が低く、それ自体では鑑賞に堪えないような粗い画像のサムネイル画像をスクショするような場合は、軽微なものとして違法にならない可能性が高いです。

・特別な事情がある場合
また、違法にアップロードされた著作物の種類及び用途並びにスクショの態様に照らし著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合も違法とはなりません。
例えば、無料の大学紀要に掲載された論文(著作物)の相当部分が、他の研究者のウェブサイトに批判とともに無断転載(引用の要件を満たしていない違法アップロード)されている場合に、それらを全体としてスクショして保存する場合などです。この場合、正しい知識を得るためには、その批判文と批判対象の論文をセットでスクショして保存する必要があるという特別な事情があるからです。

民事上の責任について


私的使用の目的であっても、違法スクショに対しては、民事上の責任として差止請求や損害賠償請求等がされる可能性があります。

刑事罰について


そして、さらに、私的使用の目的であっても、正規版が有償で公衆に提供・提示されている著作物を、それが違法にアップロードされた著作物(国外も含めて)であることを知りながら、継続・反復的に受信してスクショする場合は、刑事罰として2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金又はこれらの両方を問われる可能性もあります。

<参考資料>令和2年通常国会 著作権法改正について(文化庁)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/r02_hokaisei/
<参考資料>著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に 関する法律の一部を
改正する法律 御説明資料(文化庁)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/r02_hokaisei/pdf/92359601_02.pdf
<参考資料>侵害コンテンツのダウンロード違法化に関するQ&A(基本的な考え方)(文化庁)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/r02_hokaisei/pdf/92359601_06.pdf

令和2年度 日本弁理士会著作権委員会委員

弁理士 上田 精一

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

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