注目判例・法改正・書評

ウエブを作成するときに気を付けた方が良いこと~知らなかったではすまされません!アマナイメージズ事件~

弁理士の著作権情報室

著作権者の許可をもらうのが原則


ウエブ(WEB)作成時に、インターネット上で入手した写真やイラストを使ってしまうことありませんか?確かにこの方が見栄えが良くなることも多いし、時間の節約にもなりますよね。
しかし、写真やイラストには基本著作権があります。ですから、他人の写真やイラストを利用しようとする場合、その著作権者から利用の許可を貰うのが原則です。
SNS等で他人の画像・イラストを使うときには気を付けましょう。知らない間に著作権侵害をしているかもしれません。

ウエブを作成するときに気を付けた方が良いこと~知らなかったではすまされません!アマナイメージズ事件~

法律事務所がその事務所のウェブサイトに使用していた写真で著作権侵害


法律事務所がそのホームページに有料販売している原告(株)アマナイメージズらの写真を無断で使用していたことに対して、著作者人格権(氏名表示権)侵害および著作権(複製権、公衆送信権)侵害に基づく損害賠償請求が認められました。(東京地裁平成26年(ワ)第24391号)
氏名表示権とは、自分の著作物を公表するときに「著作者名」を「表示するかしないか」、また、表示するとしたら「実名」(本名)か「変名」(ペンネーム等)かなどを決定できる権利です。複製権とは、写真であれば写真を撮った人が有する、その写真をコピーするなどその写真を形のある物に再製することに関する独占的な権利です。公衆送信権とは、写真であればその写真をインターネット等を通じて公衆に向け「送信」することに関する独占的な権利です。

知らなかったではすまされません


<被告の主張>
侵害とされたホームページの作成は、ホームページの作成に精通している当該法律事
務所のウェブサイト作成担当職員がしたものでした。であるにもかかわらず、被告である
当該法律事務所は、
1.著作者人格権(氏名表示権)侵害に関して、
・「(株)アマナイメージズらは、氏名が表示されない状態で本件写真が使用されるこ
とを認めていたのであるから、氏名表示権の侵害は成立しない。」
と主張しました。

2.侵害行為及び故意・過失に関しては、
・「当該担当者はウェブサイトのデザインを検討するうえで,様々なところから写真を取得しており,かつ,既に一定期間経過していることから,本件各写真のデータをどのように手に入れたか記憶していないが,第三者が原告(株)アマナイメージズから購入し,又は何らかの方法で取得した後,フリー素材としてウェブサイト上に流出させたものをフリー素材であると誤信したものと思われる。」
・さらに、「著作物に識別情報が存在していないにもかかわらず,調査義務があると
すれば,ウェブサイト上に存在する写真を使用・取得する場合には,原告(株)ア
マナイメージズらだけでなく,写真家その他の映像事業等を生業とするすべての
者に対して権利侵害の有無を確認しなければならないという不可能を強いられる
ことになり,フリー素材を使用することが事実上できなくなり,表現の自由〔憲法
21条〕が侵害される。」
とも主張しました。

<裁判所の判断>
1.著作者人格権(氏名表示権)の侵害行為について
「(株)アマナイメージズらは、その著作物が違法に利用されるような場合についてまで,氏名の表示を省略することを承諾していたと認めるに足りる証拠はない。」
   として著作者人格権(氏名表示権)の侵害を認めました。

2.また、著作権(複製権、公衆送信権)の侵害行為についても認めました。

3.故意・過失について
著作者人格権(氏名表示権)侵害及び著作権(複製権、公衆送信権)侵害に基づく損害賠償おいて、損害賠償請求が認められるために、侵害の成立とともに、もう一つの必要な要件である「故意・過失」については、
「ウェブサイト作成担当職員のウェブサイト作成に関する経歴及び立場に照らせば,本件掲載行為によって著作権等の侵害を惹起する可能性があることを十分認識しながら,あえて本件各写真を複製し,これを送信可能化し,その際,著作者の氏名を表示しなかったものと推認するのが相当であって,本件各写真の著作権等の侵害につき,単なる過失にとどまらず,少なくとも未必の故意があったと認めるのが相当というべきである。」
としました。

4.そして、(株)アマナイメージズらの著作者人格権(氏名表示権)侵害及び著作権(複
製権、公衆送信権)侵害に基づく損害賠償請求を認めました。
  

まとめ


裁判所は、「仮に,本件写真をフリーサイトから入手したものだとしても,識別情報や権利関係の不明な著作物の利用を控えるべきことは, 著作権等を侵害する可能性がある以上当然であるし,警告を受けて削除しただけで,直ちに責任を免れると解すべき理由もない。」とも言っています。また、この裁判では、上にも記載しましたように、氏名表示等の識別情報や権利関係の不明な著作物を不用意に利用した場合には、単なる過失にとどまらず、未必の故意も認めています。
知らなかったではすまされません。気を付けましょう。

令和3年度 日本弁理士会著作権委員会委員

弁理士 上田 精一

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

※ 著作権に関するご相談はお近くの弁理士まで(相談費用は事前にご確認ください)。
また、日本弁理士会各地域会の無料相談窓口でも相談を受け付けます。以下のHPからお申込みください。

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