第3回
輝く響き「迫力のトランペット」、
歴史の重みに隠された奏者の努力と苦労
■前回からの流れ
前回のコラムでは、「ヴァイオリン」に焦点をあて、その構造や楽器に纏わるピンとキリをテーマ別にお届けしました。
今回は、金管楽器の中でスター的な存在の「トランペット」を取り上げ、スターである理由の一つとされる楽器の歴史的雑学、そしてスター的存在であるために課せられる奏者の努力と苦労をお伝えします。
■トランペットは存在価値も歴史的価値もトップスター!
金管楽器と言えば、殆どの方がまずはトランペットを思い浮かばれることでしょう。
以前、知人から「金管楽器と言えば、サックスですよね!」と聞かれました。実はこれ、よくある誤解なのです。確かにサックスも同じ金色でピカピカしていますが、実は木管楽器です。
トランペット等の金管楽器は、演奏者自身の「唇」を振るわせ、その振動を楽器に伝えて音を出します。
一方、クラリネットやサックス等の木管楽器は、「リード」という道具を口にくわえ、そのリードを振動させて音を出します。 つまり、金管楽器は金属製、木管楽器は木製という区別ではなく、音の発信源が、演奏者の「唇」か、あるいは「道具」かの違いで分けられるのです。
さて、金管楽器の代表格であるトランペットの華やかで目立つ迫力の音色は、あのピカピカな金色のボディを一層輝かせ、奏者の多くが男性であることも含めると、まさに「楽器の中のトップスター」といえるでしょう。
このピカピカのトップスター、その歴史は古く、実に3000年も前に存在が確認されています。
古代エジプトの考古学的出土品の中に残されており、当時の特徴は次の通りです。
① 材質 → 金、銀、青銅が主に使われるばかりでなく、粘土、竹、樹皮にいたるまで、様々な材質で作られていた。
② 利用目的→ 主に宗教や治上の儀式、軍隊や競技等のファンファーレや信号として使用されていた。
③ 当時の音域 → 初期のトランペットの出せる音の数は、ごく限られていた。
後に中世に入ったヨーロッパでは、18世紀までは宮廷の儀礼用としてトランペットがとくに重視され、イギリスではヘンリー8世が15人、エリザベス女王が10人のトランペット奏者を抱えていたほど。宮廷に抱えられたトランペット奏者達には、特に高い地位が与えられていました。
華やかな世界の貴族だから、華やかな楽器を好んだのかもしれませんね。
その後、トランペットは騎兵隊の楽器として士気を高めるのに大活躍。また王の権威を象徴する儀式の場面や、神に対しての讃美の天使の響きとして、偉大なバッハの作品にも多く取り入れられました。
日本では、プロ野球の応援歌の演奏の前のファンファーレとして、また中央競馬のG1レース等の一部の競争でも生のトランペットファンファーレが鳴りますよね。
「士気を高め、場を盛り上げ、主役を讃える」、トランペットは立派な役目を果たす楽器なのです。
楽器の進化のポイントは「管の長さ」と「バルブ」
さて、このスター的存在のトランペット、3000年もの長い歴史の中での進化も見過ごせません。
まず、現在使用されている代表的なトランペットは、
① ピストントランペット ②ロータリートランペット の2種類です。(左下の写真)
①ピストントランペット(左下の写真の上部)
ピストンバルブを押して音源を変化させます。華やかで明るい音です。主に日本、アメリカ、フランスなどで、一般的に使用されています。
②ロータリートランペット(左下の写真下部)
ロータリー弁を回転させて息の流れを変え、音源を変化させます。楽器を横に寝かせ構えるといった形が特徴で、ピストントランペットに比べて音色は柔らかく、木管楽器や弦楽器にも溶け合う性質を持っています。主にドイツや東ヨーロッパで普及している楽器です。
大きな違いは、本体中央のバルブにあります。(右下の写真)
バルブは、息の通り道を切り換える装置のことです。管の途中に別の長さ管を増設し、その分かれ道にバルブを付けることで管の長さを選択し、息の通り道を変えることができ、音程調節を行います。
例に挙げるならば、水道の蛇口に付ける浄水器のレバーのような役割。レバーを変えることで、流れる水の方向が変わる現象と似ています。
このバルブの押すことで、演奏しながら管の長さを選択できるようになり、細かい半音階も演奏可能になりました。
では、このバルブが発明される以前の、古いトランペットはどのような形状でしょうか。
右の写真を参照ください。
巨大化した事務用クリップにも見える、とてもシンプルでバルブのないナチュラルトランペットというものです。読んで字のごとく「ナチュラル」で、一本の円筒形の長い管で出来た楽器ですが、この形状でどうやって音程の違いを出すのでしょう。
正解は、音程の違いを出すことができない!です。
唇の動きや息の速さを変えても、バルブがないため、ごく限られた音しか奏でられません。なぜなら、管の長さ調節をする「バルブ」がないからです。
つまり、トランペットの音色における重要なポイントは「管の長さ調節」と「バルブの存在」ということになります。
■ 歴史の重みに隠された、トランペット奏者の努力と苦労
先述の音程調節のきかない、ナチュラルトランペットは演奏できる音が限られていたので、当時のトランペット奏者は、実に、音域の異なる4種類程のナチュラルトランペットをいつもそばに置いておき、曲の音域と調に合わせ、それらを巧みに持ち替えながら演奏していました。
イメージとしては、ハンドベルを音程が変わるごとに持ち変える姿と似た状況です。
ナチュラルトランペットは唇の振動や息の掛け方を調節しながらの演奏になるので、ハンドベルを持ち変える技よりも切り換えが難しく、より一層の集中力と機敏性が求められます。
現在も、このナチュラルトランペットが演奏されるコンサートがありますが、奏者が音を出すことに苦慮する場面が見受けられるのは、何度も繰り返すようですが、バルブがないのが最大の原因でしょう。
さて最後に、現在、一般的に使用されているトランペットを演奏か見聞きする光景で垣間みられる、奏者の努力と苦労をお伝えします。
<コンサートで見聞きする光景>
① 高音を出すときに真っ赤な顔をして吹いている
→(苦労話)トランペットは、吸うのは容易ですが、楽器に息を吹き込むのが難しい特性があるので、血圧が上がる程のハイテンションで吹く余り、「赤ら顔」になるのです。血圧が上がる奏者は頭痛や心拍 数上昇に悩まされるようです。
② 音がかすれることがある
→(努力話)トランペット奏者は「唇が命」です。唇が腫れてしまったり、ただれていては良い音色も出しにくくなります。練習不足を除く理由としては、この唇のコンディションの是非、またはそれに伴う息の出し方の不完全さで、音がかすれてしまうといえるでしょう。また練習を長時間すると唇が鬱血してしまうので、「1時間吹いたら休憩を挟む」を繰り返しているのです。地道な努力です。
③この曲のトランペット奏者はシンドそうだ、と感じる曲がある
→(苦労話)その曲は、チャイコフスキーの交響曲か、ラヴェルの「ボレロ」ではないでしょうか。特に「ボレロ」は、前半はほとんどトランペットの出番がないのに、いきなりサビの部分でハイテンションのまま、エネルギー全開で最後までの何十小節かを吹かなくてはなりません。奏者によっては、血圧は上昇し、血管は切れそうな状況になると聞いています。
輝く響き「迫力のトランペット」、その存在はスターでいるために課せられる、「奏者の努力と苦労の賜物」なのです。
次回は、金管楽器に間違えられやすい木管楽器の、「7人兄弟のサックス」を取り上げ、なるほど雑学をお伝えします。お楽しみに!
プロフィール
株式会社 ブランディングメッセージ
代表取締役 宮川 則子
東京都新宿区生まれ。音大卒業後、商船会社の総務部に勤務。
退職後、音楽講師、音楽事務所経営を経て、2015年、箔押し印刷、彫刻加工販売の「BRANDING MESSAGE(ブランディング メッセージ)を立ち上げる。
2017年 企業・団体様のベルティ製作会社として法人化。
企業宣伝ツール、セルフイメージアップツールに有効な箔押し印刷、並びに彫刻加工をメインに、企業・店舗・団体のブランディング活動のサポート事業を行っている。
小ロット対応。デザイン提案から納品まで、親切丁寧に対応いたします。
<事業内容>
1.ブランディング事業
・箔押し印刷、彫刻加工、シルク印刷によるノベルティ製作、販売
2.ライフサポート事業
・音楽イベント、コンサート企画運営
・ビジネスセミナー企画運営
・ウェブ、デジタルブック制作
Webサイト:株式会社ブランディングメッセージ