第5回
影の大物「魅惑のマリンバ」、使用前使用後の様変わり
■ これまでの流れ
本コラムも5回目を迎えたところで、前回までの認知度の高いメジャーな楽器から一転して、今回は大型楽器でありながら一般的には馴染みの薄い、打楽器の「マリンバ」を取り上げ、大型楽器ならではの特徴や、魅惑と言われる理由について、雑学を加えながらお伝えします。
■ そもそも、マリンバって何?
マリンバは太鼓等とは異なる音程のある打楽器の一つで、ピアノ同様の配列をした木製の板(①音板という)をバチ(②マレットという)でたたくと、下部のパイプに共鳴して音が鳴ります。木の温もりが感じられる、柔らかな響きが特徴です。
マリンバと木琴は同じものだと、誤解されやすいのですが、実際には以下のような違いがあります。
木琴:音域が狭い(標準:3オクターブ)
木琴:比較的音が高い |
マリンバ:音域が広い(標準:5オクターブ)
マリンバ:比較敵音が低い |
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木琴:音が硬い
木琴:共鳴筒が無いか短い |
マリンバ:音がやわらかい
マリンバ:長い共鳴筒が付いている |
マリンバはメキシコ等の南米の国で古くから演奏されていた楽器ですが、現在の形が生まれたのは、中米のグアテマラ共和国とされています。
その後、アメリカに持ち込まれ、1910年頃にはアメリカでの製作が始まり、広く普及するようになりました。
今回はこのマリンバの主要な部位の中から、わかりやすい2つのパーツを取り上げて雑学をお伝えします。
またこの音板は、南米ホンジュラス産のローズウッドというとても丈夫な木材で出来ており、楽器をはじめ、ビリヤードのキューやチェスの駒にも使われています。
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バチなんて先が丸くて叩ければ何でもいいと思われがちですが、実はこのマレット選びは、演奏する場所の残響や湿度等も踏まえ、音質や音量の調整に大きな役目を果たします。
それだけに、プロのマリンバ奏者のマレットの所持数は想像以上です。
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ここでマレットにまつわるエピソードを1つ。
諸事情でコンサート前のリハーサルの時間が十分にとれない時、マリンバ奏者は会場の残響と湿度を考慮しながら、秒単位で様々なマレットを試し打ちし、奏者によっては、使わないマレットは瞬時にどんどん放り投げます。
そして、その放り投げられたマレットを側近が拾ってケースにしまうのです。
演奏者の瞬時の判断力は、まさに職人技です。
■ 魅惑のマリンバ、使用前使用後の様変わり
続いて、マリンバが“魅惑の楽器”といわれる理由と、使用前と使用後の様変わりについてお伝えします。
マリンバは、ピアノやヴァイオリンとは異なり一般的にはあまり馴染みがなく、生の演奏を聴く機会も少ないのが現状です。
その理由として、
① マリンバ自体が大型楽器なので、この楽器を専門にして活動している演奏者の
絶対数が少ない。
② 楽器の設置が容易ではない上、移動には人手が必要等の条件があり、他の楽器に
比べると演奏の機会が少ない。
③ マリンバを常設で借りられる演奏会場が殆どなく、本人の自前楽器となると、
そもそも所持している演奏者が少ない。
以上のような点が挙げられます。
しかし、何かのきっかけでこのマリンバの音色を聴くと、多くの方が「マリンバの響きは心が和む」、「演奏のパフォーマンス力の優れた楽器である」、「楽器自体の存在感が際立っている」、「ソフトな音色が耳に残って、また聞きたくなる」といった、楽器の認知度以上の好印象を持ちます。
マリンバは、実際に聴くことで聴衆を魅了する「魅惑の楽器」なのです。
マリンバを会場に持ち込む場合、この分解された状態で車に詰め込み移動/搬入し、30~40 分かけて楽器を組み立て、演奏後はまた、同じ時間をかけて分解するという手間がかかります。
この備品の搬入搬出の繰り返しで足腰を痛める奏者も少なくありません。マリンバ奏者は、演奏スキル以外に、 ①体力 ②スタミナの維持 ③フットワークの軽さ ④根気強さ も必須条件になるのかもしれませんね。
そんな事も思い出しながら、是非、生のマリンバの音色を聞いてみては如何でしょうか。
参考までに、マリンバで演奏される曲で、よく知られているものをいくつか挙げます。
① 運動会でよく聞かれる曲として:
カバレフスキー作曲「道化師のギャロップ」、ハチャトリアン作曲「剣の舞」
② 大人に好まれる曲として:
ラテン音楽「ティコティコ」、フェルナンデス作曲「エルクンバンチェロ」
③ ポップス曲として:
ケルティック・ウーマンが歌った「ユー・レイズ・ミー・アップ」等。
生の音色を聴くことで、想像の世界の“魅惑のマリンバ”が、現実の世界の“身近なマリンバ”になるかもしれません。
次回のコラムでは、「自らが楽器、“十人十色の人の声”」と題し、人の声による心の相乗効果について、雑学を交えながらお伝えします。お楽しみに!
プロフィール
株式会社 ブランディングメッセージ
代表取締役 宮川 則子
東京都新宿区生まれ。音大卒業後、商船会社の総務部に勤務。
退職後、音楽講師、音楽事務所経営を経て、2015年、箔押し印刷、彫刻加工販売の「BRANDING MESSAGE(ブランディング メッセージ)を立ち上げる。
2017年 企業・団体様のベルティ製作会社として法人化。
企業宣伝ツール、セルフイメージアップツールに有効な箔押し印刷、並びに彫刻加工をメインに、企業・店舗・団体のブランディング活動のサポート事業を行っている。
小ロット対応。デザイン提案から納品まで、親切丁寧に対応いたします。
<事業内容>
1.ブランディング事業
・箔押し印刷、彫刻加工、シルク印刷によるノベルティ製作、販売
2.ライフサポート事業
・音楽イベント、コンサート企画運営
・ビジネスセミナー企画運営
・ウェブ、デジタルブック制作
Webサイト:株式会社ブランディングメッセージ