第6回
自らが楽器"十人十色の歌声"がもたらす相乗効果
■ 今回の内容
楽器別に綴った本コラムの6回目は、人間であれば誰もが奏でることが出来る「歌声」という"楽器"がもたらす相乗効果や多方面での楽しみについてお伝えしたいと思います。
■ 文部省唱歌「ふるさと」が教えてくれたこと
昨年3月の東日本大震災では、日本中が物質面、心理面共に大きな悲しみと痛手を負いました。その中で、今一度原点に立ち返り、故郷を慈しみ、復興への願いをこめて国内の至るところで歌われた歌が、文部省唱歌の「ふるさと」でした。
実はこの曲、震災後に方々で歌われたことで曲の存在を知った小学生も多く、この曲が発表された1914年から97年もの月日を経て、復活したかのように親しまれるようになりました。
「うさぎおいし かのやま こぶなつりし かのかわ
ゆめはいまも めぐりて わすれがたき ふるさと」
書いてしまえば、1コーラスはたった2行の歌ですが、子供達にとっては震災前まではこの歌詞すらもよく知らず、「昔の歌」という括りで放置されていた曲と言っても過言ではありません。
「うさぎがおいしい」なんて、ひどい歌詞だよね。
なんて、大きな勘違いをする子供もいる程、小学生以下の子供達には縁の薄い曲になっていました。
ところが震災を機に、この「ふるさと」が至る所で歌われたことにより、
① 世代の違う祖父母と孫が、一緒に歌える曲として楽しみ、コミュニケーションを取るきっかけとなった。
② 歌詞を読み返し、故郷を懐かしみ慈しむ心を取り戻すきっかけとなった。
③ 一つの歌を複数の人々で歌うことにより、新しい出会いが生まれ、そこから友好関係に発展した。
といった、相乗効果を生みました。
そこにはあらかじめ用意されたマニュアルにはない、発見と感動が詰まっていたと言えます。
唱歌「ふるさと」が教えてくれたこと、それは人の歌声が「日本と世代と地域を繋ぐ活力」になるということだったのです。
■ 恒例行事、12月に「第九」を歌うのはなぜなのか?
今から5ヶ月後の12月には、例年通り多くのコンサートホールで有名なベートヴェンの第九交響曲"合唱付き"が、声高らかに歌われることでしょう。 しかし、この根強い人気の「第九」の合唱は、交響曲の中の第4楽章のうちの一部のパートでしかないことは余り知られていないようです。
例) 第九交響曲は全体が90分ほどの長い曲です。テレビなどのメディアで多くの皆さんが耳にするのはこの第四楽章のごく1部分のため、この部分だけを"第九"と思われる人がたくさんおられるもの無理はありませんね。
皆さんがよく耳にする合唱団、ソリストが演奏する第4楽章までに要する時間は約1時間です。それまでは、ずっとオーケストラのみが演奏します。実は、全体を通してずっと合唱が演奏されているのではないのです。
では、なぜ12月に第九が頻繁に演奏されるのでしょう?
まず、12月に頻繁に第九が演奏されるのは世界でも日本だけです。12月だけで日本全国で100?公演以上もの「第九」の演奏会が開かれています。外国人の演奏家は、日本で第九がよく演奏されることに驚くようです。ちなみに欧米では12月は第九よりヘンデルのメサイヤ(ハレルヤコーラスやアーメンコーラスで有名な曲。キリストの生涯を歌った曲)がよく演奏されています。
ではなぜ12月に第九なのか…。実はこの問いに対する明確な答えはありません。諸説によれば、その昔NHK交響楽団の音楽監督として来日し、楽団の基盤作りに貢献した、ポーランド生まれの指揮者、ローゼンストック氏が、「ドイツでは大晦日に第九を演奏するのが習慣」と紹介した事に加え、第九はクラシック曲の中でも特に日本人に人気が高く、演奏会での集客効果が高かった演目だったこともあり、「正月の餅代稼ぎ」として、定着したと言われています。
■ 人の声の結集、「合唱」の魅力
歌う事で大きな感動と達成感が得られる「合唱」は、「人の声の結集」の成せる技という意味で、とても価値があり、心身面での相乗効果が高いと言えます。
さて、皆さんは「合唱」と聞いたときに、どんなイメージを持ちますでしょうか?
合唱にあまり良い印象を持たない方の主な意見は以下の通りです。
① 地味そう
② 馬鹿真面目に直立不動で歌うからつまらなそう
③自分の声の分別がつかず物足りない
④運動神経の悪そうな人が集まっていそう
⑤単純に想像だけでは合唱の良さがわからない
一方で、合唱に良い印象を持っている方の意見は、以下の通り。
① 本気で歌うと結構いい運動になる
②一人で歌うよりもボリューム感があり、達成感も大きい
③仲間との出会いが貴重
④もっと長く歌いたいと思う
⑤リフレッシュ効果が想像以上
比べて見るとお分かりの通り、合唱というのは、実体験(経験)の有無が、イメージを大きく決めてしまうということになります。
例えば、テニスであれば、自分がプレーをしたことがなくても「健康的で面白そう!」とか、「女性ににモテそう!」などの好印象を持ちます。
合唱は、今までの学校教育で植え付けられた先入観に問題があるのかもしれませんが、実際に体験してみると歌のジャンルに関係なく合唱は歌う楽しさだけではなく、人が集まるコミュニティとしての付加価値を持つ音楽活動であると言えます。何より自分自身が楽器になるので、わざわざ楽器を購入したり、持ち運ぶ手間ひまも不要なのが最大の利点です。
さて、それではこの合唱を通じて、ライフスタイルが大きく変わった人の例を2つご紹介します。
【ケース1】40代の男性の例
(歌を始める前)
1)趣味なし 2)仕事多忙でストレス多し 3)音楽経験なし、興味もなし 4)人との交流が苦手 5)子供との交流なし |
(始めた後)
1)趣味が歌だけでなく、多方面に広がった 2)仕事多忙でも、手間ひまかけずに気分転換する 機会になった 3)音楽経験が新天地開拓になった 4)歌を通しての仲間との交流が円滑になった 5)音楽をたしなむ子供との音楽交流が できるようになった |
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【ケース2】30代の女性の例
(歌を始める前)
1)趣味が多く定着しない 2)内向的で身なりにお構いなし 3)ストレス解消できない 4)プライド高く協調性がない 5)自己表現する機会がない 6)持病に悩み何も出来なかった |
(始めた後)
1)継続は力の音楽に定着しはじめた 2)社交的になりお洒落になった 3)歌を通してストレス発散できるコツを知った 4)仲間と一つの音楽を作る楽しさを知った 5)自己表現する機会を得て、舞台での演奏が 楽しみになった 6)持病を克服する気力がわいてきた |
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■ 十人十色の歌声がもたらす相乗効果
「歌」はクラシック調、ジャズ調、ポップス調等、発信するジャンルによって演奏スタイルも様々です。どんなジャンルであれ、生の息づかいが感じられる個々の「歌声」から生まれる感動や癒しは、他の楽器とはまた違った醍醐味や達成感があります。
そして、その継続の先の、
「自らが楽器"十人十色の歌声"」は、十人十色の相乗効果を生む"心の財産"として深く刻まれるのです。
今回も最後までお読みいただき、有難うございました。
次回は、「楽器の結集"壮大なオーケストラ"のセンターは誰だ!」と題して、雑学をお届けします。お楽しみに!
プロフィール
株式会社 ブランディングメッセージ
代表取締役 宮川 則子
東京都新宿区生まれ。音大卒業後、商船会社の総務部に勤務。
退職後、音楽講師、音楽事務所経営を経て、2015年、箔押し印刷、彫刻加工販売の「BRANDING MESSAGE(ブランディング メッセージ)を立ち上げる。
2017年 企業・団体様のベルティ製作会社として法人化。
企業宣伝ツール、セルフイメージアップツールに有効な箔押し印刷、並びに彫刻加工をメインに、企業・店舗・団体のブランディング活動のサポート事業を行っている。
小ロット対応。デザイン提案から納品まで、親切丁寧に対応いたします。
<事業内容>
1.ブランディング事業
・箔押し印刷、彫刻加工、シルク印刷によるノベルティ製作、販売
2.ライフサポート事業
・音楽イベント、コンサート企画運営
・ビジネスセミナー企画運営
・ウェブ、デジタルブック制作
Webサイト:株式会社ブランディングメッセージ