第52回
わが道を行く料理人 山下直樹さん(下)
株式会社ネオレックス 駒井 研司
■全ては「心」、大切なのは「気合」
全くくさみを感じさせないレバーの刺し身や、半熟うずら卵のくし焼き、濃厚な鳥のだしがきいたきしめん。そして、カリッとしてジューシーな焼き鳥。テレビ番組で野口五郎さんのおすすめの店として紹介されたこともある「もも屋」の山下直樹さん。前回は生活サイクルの維持と早めの対処で15年間病欠ゼロを維持している話を聞いた。
--メニューへのこだわりは
「開店当初は『焼き鳥屋といえばこんな感じ』という軽い気持ちでメニューを作っていました。でもだんだん、胸を張って出せないものは出したくないと思うようになった。それから、食材、塩、肉の切り方、くしへの刺し方、焼き方などに一つ一つこだわり、少しずつメニューを作り上げてきました。今は自信の持てないものは一つもありません」
--料理で考えることは
「1+1を2よりも大きくすること。例えば人気メニューとなった『匠つくね』は、キンカン(鶏の体内で成長中の卵黄)をつくねで包んで焼いたもの。かじると中から濃厚な卵黄が溢れてつくねを包み込みます。最初は半熟のうずらで考えたのですが、どうしても1+1が2にしかならない。きしめんも同じで、和食出身の人が鶏でつくると、単に魚のだしが鶏に変わっただけの酒、みりん、しょうゆを使ったスープになってしまう。もっと鶏の風味が引き立つものをと考え続け、どちらかといえばラーメンに近い今のスープにたどり着きました。本やTVを見るときも常に、新しい考え方や組み合わせはないか、意識してきました」
--自己管理のアドバイスは
「若い人には、全ては『心』であり、大切なのは『気合』だと伝えたい。楽な方、安全な方ばかり選ぶ人が多いのでは。自分は、強く思うことで独立できました。命をかけられないものに周りはついてきません。そして大人は、若い人に夢を見せてほしい。親の世代の人々の振る舞いから、夢を感じて育ちました。また父親との衝突があったからこそ、社会に出てから戦うことができた。ゆとり世代の問題は、その親の世代にも原因があるはず。高度成長やバブルを知る団塊世代に育てられた団塊ジュニアには、勢いのある元気な若者を育ててほしいですね」
【プロフィル】山下直樹 やました・なおき 焼き鳥居酒屋店主。ワシントンホテルを経て独立。名古屋・八事の店「もも屋」には、こだわりの味と店主の人柄に魅せられ他県から通う常連客もいる。
2013年9月16日「フジサンケイビジネスアイ」掲載
プロフィール
株式会社ネオレックス
CEO 駒井研司
こまい・けんじ PwCコンサルティング(現IBM)を経てネオレックス副社長。世界79カ国で利用されている自己管理のための無料iPhoneアプリ「MyStats」を発案。
Webサイト:株式会社ネオレックス