第2回
黎明期の不安と課題
ピーエムグローバル株式会社 執筆
次世代型サービスとして注目を集めるIoT(モノのインターネット)だが、理解度や実際の導入については不安を抱える人も依然として多いことが明らかになっている。競合他社よりも一歩でも早く商業化を実現したいが、実施には何をすべきが分かっていないという人も多いようだ。
IoTサービスを手掛ける米Longviewなどが行った最新調査「IoT Implementation Trends Survey」では、IoTを導入してみたものの事業における具体的なメリットについては今ひとつ図りかねている組織が一定数あることが分かった。IoTの技術を問題解決にどう生かすかに関しては、かならずしも満足のいく理解ができていない実態が浮かぶ。
IT技術系ウエブメディア「IoTNews」の6月19日付の記事「Study reveals majority of organisations finding it hard to understand business benefits of IoT」によると、IoTがもたらすメリットとして期待することについては、「コスト削減」「生産性アップ」「作業効率の改善」といった一般的なものも多い一方、「予見メンテナンスを実施する」「請求書に関する問題の解決」をはじめ「プロジェクトの予算超過を防ぐ」「貴重な機器の所在を把握する」など具体的な目標を挙げる例は目立たなかったという。
今後のIoT導入に関しては、「費用」と「セキュリティ」を課題になると見なす回答が各37%と最も多く、これに「専門知識のなさ」(36%)や「メリットに対する認識不足」(35%)が僅差で続いており、IoTのことが良く分からず不安に思っている人も少なくない現状も垣間見えた。
同調査は、企業はIoTを活用して事業で利益を上げたいものの、そうした成果がすぐに出せるようなサービスが少ないと認識していると指摘。特定の作業ですぐに使える総合的なサービスがあるパートナーと組む重要性を強調している。
日本は?
導入をめぐる課題に関しては、日本も状況は似ている。総務省の「情報通信白書平成30年版」によると、2018年の調査で回答した約200社の3割以上が、IoT導入の課題として「先導する人材・組織の不足」を挙げたという。人工知能(AI)についても、導入を主導する人材の不足を挙げる人は30%近くに達し、データ収集や分析に関する不安に次いで多かった。
また、財務局が昨年まとめた「先端技術(IoT、AI等)の活用状況」でも、日本の約千二百社を対象に行った調査でIoTやAIなどの先端技術を「導入したいができない」と回答した企業219社のうち、理由として「理解不足」を挙げたのは47社(21.5%)に上った。
黎明期
専門知識を持つ人材や理解力そのものが足りないという状況は、技術導入の黎明期において自然な現象とも言える。前述のLongviewの調査ではIoTを導入している企業のほぼ半数が組織内で対応していることも判明。実施に関してはシステムインテグレーター(40%)や複数のベンダー(35%)が担当し、IoTサービスプロバイダーが関与するという回答は全体の3分の1に過ぎなかったことも分かった。調査が指摘するように、これらの比率は今後IoTサービスプロバイダーが市場で支持を集めるのにしたがって、変化していきそうだ。
同調査では、IoT導入済みや3年以内にその計画がある企業は84%に上ったほか、財務局の同活用状況調査でも、IoTの検討を含めた活用状況は全体6割を超えるなど、IoTへの期待は大きい。
利用者の知識が比較的に少ない技術が導入される黎明期に強いのは、提案型の製品で導入へのハードルが低く、すぐに使える「オールインワン」の商品だ。一方で、提案型には必要性の低い機能も実装されていることがあり、結果として使い勝手が悪くなるリスクもある。知識に不安を覚える顧客が多いとされるIoT市場でサービス事業者に求められるのは、具体的なニーズを的確に吸い上げる能力と、オーバースペックになり過ぎず、要望に過不足なく応えられるサービスだろう。
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