第3回
【ベイノア選手】第2代RISEウェルター級王者/挑戦することで成長できる
株式会社アゴラ 柏木 太郎
<ベイノア選手プロフィール>
アメリカ人の父、日本人の母の間に生まれる。空手をベースに、キックボクシング団体「RISE」で活躍中。第2代RISEウェルター級王者(2021年5月現在)
きっかけが全て
きっかけは、アメリカ人の父
ベイノア 自分はアメリカで生まれたんですけど、1歳の時に母と姉と自分の3人で日本(板橋区成増)に移り住みました。父は仕事の都合上、アメリカにいて時々日本に帰ってくる感じでした。今でこそ、こんな感じ(筋骨隆々)ですけど、小さい頃は女家庭で育っていたので外に出て遊ぶことよりも、家でお絵かきする方が好きでした。4年生の時に久しぶりに父が日本に戻ってきて、女々しい息子を男らしく鍛え直したいという想いで無理矢理に空手道場(極真会館東京城北支部:成増道場)にいれられたのがきっかけです。最初は嫌々だったかもしれません。
あと一歩が届かない
ベイノア 小学校、中学校の時は試合で全然勝てなかったですね。高校くらいから少しずつ勝てるようになったんですけど、あと一歩のところで準優勝が続きました。アマチュアの時は、勝ちに対して今よりも執着心が少なかった気がします。もちろん、試合に出るときは勝つつもりで挑んでいましたけど。
長く続けられたのは
ベイノア 空手を長く続けられたのは師範のお陰ですね。実の父と離れ離れの環境にあった自分にとって、父親みたいな存在で、空手の楽しさを教えてくれました。楽しいので学校から帰ってきたらすぐに道場に通っていました。
プロへのきっかけ
ベイノア 最初はプロになろうなんて、これっぽっちも考えていませんでした。たまたまプロ選手のスパーリングパートナーに選ばれ、流されるままにプロになっていた感じです。結果、選んでもらって本当に良かったと思います。きっかけって本当に大切だと思います。
プロフェッショナル
無敗でチャンピオン
ベイノア プロになってからは、アマチュア時代になかった勝利への執着心は強くなりました。一戦一戦、必死に戦いました。自分は「RISE」というキックボクシング団体で戦っているんですけど、まずはチャンピオンになることが一つの目標でした。その結果、勢いのまま無敗でチャンピオンになることが出来ました。
最高の達成感
ベイノア 今までにタイトルを3回獲得したんですけど、どれも最高の達成感を味わうことが出来ました。簡単に達成感と言っても、言葉では言い表せないですね。その3つは、全日本ウエイト制空手道選手権大会優勝、J-NETWORKウェルター級王者、RISEウェルター級王者。達成感や高揚感が入り混じって自然と涙が溢れました。もちろん、その中でも1番は、両国国技館という大きい舞台で勝利し、このRISEのベルトを手に入れたときの達成感です。一つの大きな目標を達成することが出来ました。
負けて学ぶ
ベイノア 実はチャンピオンになった後の最初の試合(ノンタイトル戦)で負けてしまいました。無敗でチャンピオンになったので、この敗戦で負けて失うものがどれほど大きなものなのか痛感しました。ベルトを獲ってちょっと安心感や慢心があったのかも。心のどこかにベルトを獲って満足した自分がいたのかもしれない。アグレッシブになれなかった。勝つための準備がどれだけ大事なのか改めて学べた気がします。
プロになって一番変わったこと
ベイノア お客様がお金を払って観に来てくれることを自覚したこと。お客様がいてイベントは成り立っているので、ただ勝つことも大事ですけど、楽しんでもらえるような、興奮してもらえるような戦いをリングで見せたいと思います。
格闘技の魅力
ベイノア 格闘技ってただの競技じゃないと思うんです。真剣勝負あり、ストーリーあり、エンタメ性あり、それらの要素が絡み合っているから他の競技にはない盛り上がりがあると思います。あれだけ試合前に煽り(煽りVTR)のあるイベントって他にないですよね。非日常的空間、熱狂や興奮を観ている方も選手も味わえる。それが格闘技の面白さ。子供たちにもそういった熱狂を与えたいです。
今後の挑戦
空手の強さの証明
ベイノア 今はチャンピオンですけど、RISEの中にも強い人は沢山いる。チャンピオンになることが一つの目標で達成できたけど、どう考えてもそこで終わりではない。防衛し続けて終わりでもない。階級を上げて2階級制覇も挑戦してみたいし、海外にいる強い人たちとも戦ってみたい。RIZINにも上がってみたいし、MMA(総合格闘技)にもいつか挑戦してみたいと思います。とにかく成増道場で培ってきた空手の強さを証明したいです。
それに向けた戦略
ベイノア 名前を広めたい、有名になりたい。より多くの人に自分を知ってもらいたい。強さも重要ですけど、ベイノアの試合を観たいと思ってくれるような応援してくれるファンをもっともっと増やしていきたいですね。勝ち続け、応援してくれるファンが増えれば、大舞台への切符を手にすることが出来ると思うんです。その為にはメディアにも出たいです。バラエティー番組とか。最近、YOUTUBEも始めました。自分を知ってもらうきっかけは、何も格闘技に限らなくても良いと思っています。何事も挑戦です。
強さの原動力
子供たちの応援が原動力
ベイノア 格闘家ってそれぞれの想いを胸に秘め戦っていると思うんですけど、自分の場合は道場で教えている子供たちの為にっていう気持ちが一番強いです。もちろんファンの声も大切ですけど、子供たちの応援が励みになるし、力になる。やっぱりがっかりさせたくない。成増道場で指導者もしているので、先生の負ける姿を見せたくないですね。あと、女の子の黄色い声援も正直欲しいです。
未来の空手家たちへ
ベイノア 空手をやっていない子供には空手を知って欲しいし、やって欲しい気持ちがあります。心身ともに成長できます。今空手をやっている子供たちには、まずは小さな目標を作ってそれに向かって欲しい。成増道場に通っている子供たちには空手を好きになってもらうことを一番に教えています。自分が道場に通うのが楽しかった時と同じ気持ちになって欲しいと思います。
負けないこと
ベイノア これだけは負けないことは、練習量だと思います。正確に他の選手の練習量と比較した訳ではありませんが、誰にも負けない練習をしているという自負があります。それが自然と自信になる。練習がメンタルに繋がる。肉体を鍛えながら精神も鍛える。もう一つはポジティブであること。不安や恐怖を感じることもありますが、すぐに忘れるようにしています。
メッセージ
ベイノア 挑戦することは、成功することもあり、失敗することもあります。でも挑戦することで人って成長できると思うんです。今いる環境がどうしても楽しくなければ、環境を変えてみることも挑戦だし、探し続ければいい。深刻に考えない。上手くいかなかったら次に進めばいい。自分がチャンピオンになれたのは、無理矢理空手を習わせた父、空手の楽しさを教えてくれた師範、成増道場の子供達、ファン、RISE関係者、戦ってくれた相手、多くの人のお陰だと思っている。決して自分一人の力ではない。世の中、大変な時期だと思いますが、応援してくれる人もいると思うし、挑戦することで道が開けることもあると思います。
協力
撮影:山さん
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