第5回
【太田忍選手】総合格闘家・リオデジャネイロオリンピック銀メダリスト/世界一の負けず嫌い
株式会社アゴラ 柏木 太郎
<太田忍選手プロフィール>
2016年リオデジャネイロオリンピック(レスリング・グレコローマンスタイル)銀メダル、2019年世界選手権金メダル、2020年12月に総合格闘技デビュー。
今後の逆転劇を目に焼き付けて欲しい
1番と2番の差
太田 単純に1番になるまで、やるかやらないか。途中で諦めるから1番になれない。1番になるためのことをしていたら1番になれると思います。絶対になれる。途中で無理なのかなとか、妥協しちゃったり甘えがでちゃったり、あとは1番になるためのことをしていない。それじゃ、なれないと思います。
リオデジャネイロオリンピック
太田 自分は世界で1番になるための練習をしていたつもりだったけど、結果、世界で2番目でしかなかった。それに尽きます。オリンピック後のインタビューでもそうコメントを残しています。100%自信があったかって言うとそうじゃなかったし、練習ではその時にできることを準備はしていたけど、世界で完璧に自分が1番だっていう準備ができていなかった。それが原因だったんだと思います。
オリンピックと世界選手権は全く別物
太田 リオデジャネイロオリンピックの後、2019年に世界選手権で金メダルを獲りましたが、自分の中では東京オリンピックに出るまでのつなぎでした。もちろん嬉しかったですけど、大きな達成感はなかったと思います。アマチュア競技は世界チャンピオンになるチャンスが1年に1回ある。だからチャンピオンはゴロゴロいる。オリンピックは4年に1回。これに合わせなければいけないんです。世界チャンピオンになってもオリンピックに出られない人もいるし、タイミングがあって代表に選ばれても、オリンピックの日に照準を合わせなきゃいけない。だからオリンピックは価値があるし、特別かなって思いますね。オリンピックチャンピオンと世界チャンピオンは全くの別物です。
プレッシャー
太田 プレッシャーを感じたのは1回だけです。それ以外はプレッシャーを感じたことないです。ただ自分が戦って、優勝を目指す。国のためとか、誰かのためとか、負けちゃいけないっていうのではなかった。リオデジャネイロオリンピックの時もそう。自分の目標を達成するだけ。小さいころから想い続けてきた目標を達成するために戦いました。だからレスリングをやってきてプレッシャーというものは感じたこはないです。唯一感じたプレッシャーは2018年のアジア大会の時。日本はベストメンバーで挑んだんですけど、大会終了間際までレスリング競技で1個も金メダルがなかった。これ、自分が勝たないと金メダル「0」だと思った時、初めてプレッシャーを感じました。
自分の為に
太田 いろんな人に支えてもらい、応援してもらって戦うことが出来るんですけど、頂点を目指してやっているので、誰かのために戦っているっていうのは自分はないです。自分の為。人生かけてやっている。それで世界の頂点になる。結果を出すことによって、勝つことによってのみ、恩返しができると思っています。ただ自分が勝ちたい、輝きたい、注目されたい、有名になりたい。
新たなステージへ
太田 東京オリンピックに出られなくなった時、RIZINの榊原代表からMMA(総合格闘技)をやってみないかって誘いがありました。実はリオが終わってからRIZINのゲスト解説に呼んでもらったり、先輩や知り合いがMMAをやっていたので興味はありました。MMAに転向するには今しかない。体を使って勝負する世界は年齢の限界がある。MMAの世界でトップを目指すには、今じゃないと遅いかなと決断しました。
まだまだ挑戦できる
太田 レスリングでは自分より強い人はいなかった。MMAは自分より強い人がいっぱいいるし、まだまだ挑戦できるじゃんっていう気持ちが強いです。新しいことに挑戦する怖いとか不安っていう気持ちはないです。自分の可能性がどれだけあるか。MMAは何でもありというルールが魅力的であり刺激的。レスリングを活かしつつ、まだ違うことが出来る。まだまだ自分の体で勝負したいって気持ちです。
チャンスを掴む準備
太田 MMAで1番に成るために必要なことは、とにかく毎日の積み重ね。しっかりやるべきことを、日々こなしていく。そうすれば結果は必ずついてくる。経験を積み、実績を積むことが大事だと思います。RIZINだったら、いきなりチャンピオンと戦うチャンスが巡ってくるかもしれない。そのチャンスをものにするためにしっかり準備をしておくこと。UFCに行けるかどうかも、チャンスが来たときに掴める準備をしておくこと。その為には、レスリングの時と同様に世界で1番に成るための練習をする。一つ一つの練習をただこなすのではなく、テーマをもってやっています。
ブランディング&セルフプロデュース
太田 自分のことを知ってもらうのは大事なことだと思います。SNSの活用は絶対に必要。練習の合間の時間を有効に使って、自分が何をしていて何を目指しているのかSNSで発信しています。それで人と会う機会ができたり、応援してくれる人と巡り合うことが出来ます。RIZINは地上波ゴールデンタイムに放送されたり、年末にビッグイベントがあったり魅力的です。そこでチャンピオンになれば自然と知名度も上がるし、有名になれる。その結果チャンスが広がる。今SNSで自分をブランディングしたりセルフプロデュースするのは、来るべき「その時」の準備でもあります。
デュアルキャリア
太田 「T3.」という活動に参加しています。全員がオリンピック選手であり、メダリストという世界的に活躍しているグループです。その活動の中で「RZEUS(ゼウス)」というブランドのプロデュースをしています。アスリートのデュアルキャリアや引退後のセカンドキャリアの道も、自分は考えています。競技一本の格闘家ではなく、それ以外でも輝いている姿を見せて、次に続く子供達にああなりたいって思ってもらいたいです。自分は基本NGなしでやっていますので、何にでも挑戦していきたいです。
これだけは負けないこと
太田 世界一の負けず嫌いです。じゃんけんで負けるのも嫌。世界トップレベルの負けず嫌いだと自他共に認めています。太田忍=負けず嫌い。
メッセージ
太田 緊急事態宣言とかあって、全体的に見ると元気ない感じがします。飲食店とか、売上が下がっている会社も沢山あるのかなって。自分もMMAの中では1番下の位置。落ち込んだら上がるだけ。自分も今から上がっていくだけ。自分の挑戦を、そして上がっていく姿を観てもらって、少しでも良い影響が与えられたらと思います。今の戦績は0勝1敗。こっから始まる逆転劇を楽しみに観て欲しいです。
情報
協力
撮影:山さん
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