人的資本・知的時代のマネジメント~人材を人財に育み、知恵を事業として結実させる方法
第1回
その人が居なくなって気づく、暗黙知・経験知の大切さ
株式会社ベーシック 田原祐子
今年、3月に出版した、拙著『55歳からのリアルな働き方』(かんき出版)では、長年仕事を続けていくうち、知らぬ間に人に蓄積されている、さまざまな暗黙知・経験知について多くの事例を説明しています。
※経験知とは、Business Wisdom(仕事の知恵)とも言われ、長年多くの仕事の経験を積んだ人が、無意識に使っている、蓄積した知識・スキル・コンピテンシーのことです。
今回は、その中の1つの事例、印刷会社で働く、太田さんの事例をご紹介します。
太田さんは、45歳で部長となり、55歳で役職定年を迎え、60歳で定年退職しました。
印刷会社では、DX化・システム化が進んでおり、生産性が向上すると必要人数も少なくなるため、リストラが進められています。
こうした状況下、定年退職した半年後、元の会社の社長から電話があり、太田さんに「戻って欲しい」というのです。一瞬耳を疑った太田さんですが、印刷技術や、客先との調整スキルを持った人材がいなくなり、困っているのだと。
このようなお話しは、最近、かなり多くの企業でお聞きします。
新卒の採用も難しく、中途採用をしても、すぐに即戦力になる人材の確保が難しいため、退職者にカムバックコールをするというわけです。
ただし、退職者すべてにカムバックコールをするわけではなく、「経験知を持っていること」が必要不可欠な条件となります。
持っている「経験知」をいかに、見える化・形式知化・言語化して活用できる形にしておくかが、さらなる飛躍のポイントとなります。
ご自身の経験知を自分の中にあたためているだけではもったいない!
見える化、言語化してこそ、自分のキャリアを客観的に見つめ、分析し、整理すれば、様々な形で活用することができます。
太田さんでいえば、太田さんの経験知をまとめたものは若手向けのコーチングにすぐに利用でき、現場にそった即戦力を育成するのに役立ちます。
経験知を見える化・言語化するために
拙著『55歳からのリアルな働き方』(かんき出版)では、経験知を、知識・スキル・コンピテンシーとして、見える化、整理する具体的な方法をアドバイスしています。
※田原祐子著『55歳からのリアルな働き方』(かんき出版)
(本の詳細は、上記リンクまたはプロフィール欄をご覧ください)
また、実は、今回ご紹介した内容は、つい先日、6月28日のYahoo!ニュースで、取り上げられました!
一瞬、耳を疑った…半年前に定年後退職した60歳の元部長、社長からかかってきた「まさかの電話」に歓喜【人材開発コンサルタントが解説】
今回のお話し、いかがでしたでしょうか?
弊社では、ご自身の経験知を見える化するプログラム、企業内で、上司の皆様の経験知を部下に教えるプログラム等、さまざまな研修・プロジェクト・eラーニングをご用意しております。
ご関心のある方は、こちらから、お問合せください。➡office@basic7.com
プロフィール
株式会社ベーシック
代表取締役 田原 祐子 (たはら ゆうこ)
社会構想大学院大学「実践知のプロフェッショナル」を養成する実務教育研究科教授、日本ナレッジ・マネジメント学会理事
仕事ができる人材は、なぜ、仕事ができるかという“暗黙知=ナレッジ”を20年前から研究し、これらをモデリング・標準化・形式知化(マニュアル、ノウハウリスト、システム等の社内人材を育成する仕組み)を構築。企業内に分散する暗黙知やノウハウを組織開発・人材育成に活用する、【実践知教育型製ナレッジ・マネジメント】を提唱し、社内インストラクターの育成にも寄与。約1500社、13万人を育成指導。
経営者・トップマネジメント・次世代を担うエキスパートの、行動特性分析・意思決定暗黙知の形式知化や、企業内の知財の可視化(人的資本・知的資本・無形資産含む)にも貢献し、上場企業3社の社外取締役も拝命している。
環境省委託事業、経産省新ビジネスモデル選定委員、特許庁では特許開発のワークショップ実施。2021~2023年度、厚生労働省「民間教育訓練機関における職業訓練サービスの質向上取組支援事業」に係る運営協議会および認証委員会委員。
暗黙知を形式知化するフレーム&ワークモジュールRという独自メソドロジーは、全国能率大会(経産省後援)で、3年連続表彰され、導入企業は、東証一部上場企業~中小企業、学校・幼稚園、病院・介護施設、研究開発機関、伝統工芸、弁護士、知財事務所等。DX・RPA・AIとも合致。営業部門は、Sales Force Automation、Marketing Automation、一般部門では、Teams・SNSツール・Excel等も活用可能。
【田原 祐子 著書】
本書では、ご自身に潜在するさまざまな仕事の経験を見える化し、「経験知や才能(強み)」で稼ぐ、スマートで知的な報酬を得る方法をご紹介します。
私は、これまで25年間、上場企業から小さな家族経営の会社に至るまで、さまざまなご依頼いただき、約13万人の人材を育成してきました。
そのノウハウを、すべて本書に詰め込みました。
その他、著書15冊、PRESIDENT on-line、ダイヤモンド・オンライン、人材関連・ビジネス誌等への記事掲載、多数。
Webサイト:株式会社ベーシック