人的資本・知的時代のマネジメント~人材を人財に育み、知恵を事業として結実させる方法

第3回

いま考えたい、50代ミドルシニアのリアルな働き方(1)

株式会社ベーシック  田原祐子

 

今回から5週にわたり(水曜日公開)、『いま考えたい、50代ミドルシニアのリアルな働き方』をテーマに、役職定年、定年退職後の雇用形態の変更など、50代後半にさしかかるミドルシニアの働き方を考えます。

企業とミドルシニアのこれからの在り方とは

65歳までの雇用確保措置(*1)が企業に義務化されているいま(2024年8月現在)、再雇用か勤務延長(定年退職せずに雇用される勤務)で、少なくとも65歳まで働き続ける人が増えています。そうしたなか、50代半ばで役職定年を迎え、仕事のモチベーションの低下とともに「失われていく10年(55~65歳)」に思い悩む人が多いようです。雇用する側の企業にとっては、定年退職を控えたミドルシニア世代にどう向き合っていくかが喫緊の課題となっています。 役職定年、定年退職後の雇用形態の変更など、50代後半にさしかかるミドルシニアの働き方を考えます。


一人ひとりの強みにフォーカスし、可視化する。企業が“人的資本経営”の意義を再確認するべき

「人的資本経営」の本質は、企業が従業員一人ひとりの能力を活かすことです。しかし、多かれ少なかれ「人的資本経営」には、義務的に“仕方なく取り組んでいる”様子が見え隠れします。ご存じのとおり日本では、上場企業に対して、2023年3月から人的資本の開示が義務化され、7分野19項目における情報の開示が求められています。しかし、政府が出した指針を、企業側はその本質を深く理解せぬまま、開示のための開示に終始しているようにも感じます。人的資本に取り組むならば、まずは、ミドルシニアに限らず、自社の従業員一人ひとりの強みにフォーカスして、しっかり把握し、可視化することが大切です。“一人ひとりの強み”とは、従業員のキャリアと、それぞれが持つ「知識」「スキル」「コンピテンシー」です。私は、これらをまとめて、「経験知」と呼んでいます。経験知は、Business Wisdom(仕事の知恵)とも言われ、私が長年研究している「暗黙知」のひとつです。本来は、それらを集約したものが、人的資本として開示されるべきなのです。


*1 高年齢者雇用安定法第9条第1項に基づき、定年を65歳未満に定めている事業主が、雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保する措置。

*2 田原祐子著『55歳からのリアルな働き方』(2024年3月、かんき出版刊)。

*本稿では50歳から60歳までを「ミドルシニア」とする。

転載元:HRONLINE(エイチアールオンライン)インタビュー記事

「たそがれ研修、役職定年……いま考えたい、50代ミドルシニアのリアルな働き方」

 

プロフィール

株式会社ベーシック
代表取締役 田原 祐子 (たはら ゆうこ)

社会構想大学院大学「実践知のプロフェッショナル」を養成する実務教育研究科教授、日本ナレッジ・マネジメント学会理事

仕事ができる人材は、なぜ、仕事ができるかという“暗黙知=ナレッジ”を20年前から研究し、これらをモデリング・標準化・形式知化(マニュアル、ノウハウリスト、システム等の社内人材を育成する仕組み)を構築。企業内に分散する暗黙知やノウハウを組織開発・人材育成に活用する、【実践知教育型製ナレッジ・マネジメント】を提唱し、社内インストラクターの育成にも寄与。約1500社、13万人を育成指導。

経営者・トップマネジメント・次世代を担うエキスパートの、行動特性分析・意思決定暗黙知の形式知化や、企業内の知財の可視化(人的資本・知的資本・無形資産含む)にも貢献し、上場企業3社の社外取締役も拝命している。

環境省委託事業、経産省新ビジネスモデル選定委員、特許庁では特許開発のワークショップ実施。2021~2023年度、厚生労働省「民間教育訓練機関における職業訓練サービスの質向上取組支援事業」に係る運営協議会および認証委員会委員。

暗黙知を形式知化するフレーム&ワークモジュールRという独自メソドロジーは、全国能率大会(経産省後援)で、3年連続表彰され、導入企業は、東証一部上場企業~中小企業、学校・幼稚園、病院・介護施設、研究開発機関、伝統工芸、弁護士、知財事務所等。DX・RPA・AIとも合致。営業部門は、Sales Force Automation、Marketing Automation、一般部門では、Teams・SNSツール・Excel等も活用可能。

【田原 祐子 著書】

『55歳からのリアルな働き方』

本書では、ご自身に潜在するさまざまな仕事の経験を見える化し、「経験知や才能(強み)」で稼ぐ、スマートで知的な報酬を得る方法をご紹介します。

私は、これまで25年間、上場企業から小さな家族経営の会社に至るまで、さまざまなご依頼いただき、約13万人の人材を育成してきました。

そのノウハウを、すべて本書に詰め込みました。

その他、著書15冊、PRESIDENT on-line、ダイヤモンド・オンライン、人材関連・ビジネス誌等への記事掲載、多数。



Webサイト:株式会社ベーシック

人的資本・知的時代のマネジメント~人材を人財に育み、知恵を事業として結実させる方法

同じカテゴリのコラム

おすすめコンテンツ

商品・サービスのビジネスデータベース

bizDB

あなたのビジネスを「円滑にする・強化する・飛躍させる」商品・サービスが見つかるコンテンツ

新聞社が教える

プレスリリースの書き方

記者はどのような視点でプレスリリースに目を通し、新聞に掲載するまでに至るのでしょうか? 新聞社の目線で、プレスリリースの書き方をお教えします。

広報機能を強化しませんか?

広報(Public Relations)とは?

広報は、企業と社会の良好な関係を築くための継続的なコミュニケーション活動です。広報の役割や位置づけ、広報部門の設置から強化まで、幅広く解説します。